ブルームバーグでは、経済・金融の最前線における学びや実体験を学生の皆さんに幅広く提供する機会として、今年もESG投資コンテストを開催しました。今年のテーマは、「ESG課題に立ち向かうZ世代ファンド」です。2017年の初回から数えて、第7回を迎えた今年は、全国24の大学より47チーム、これまでで最多となる約300名余の大学生が参加しました。
参加した学生の皆さんは約3ヶ月間にわたって投資のプロが活用するブルームバーグターミナルを実際に使い、仮想投資資金100億円をもとにESG(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)への投資に取り組み、リポートを提出。今年も協賛企業・団体様によるポートフォリオ組成に関する夏期講習会を開催、より専門性を高めた上で取り組みました。
厳正な事前審査により、同志社大学 「ユニコーン」チーム 、東京工業大学 「井上ラボ」チーム 、同志社大学 「まな柴」チーム 、同志社大学 Churros & Churros、立教大学 Ishida-sʌn の5チームがプレゼンテーションファイナルに進出。最終的に決勝大会に進んだ2チームが、日本のバイサイドのトップエグゼクティブが集結するバイサイドフォーラム2023(2023年10月18日)にて、プレゼンテーションを披露しました。会場投票によって優勝は同志社大学「まな柴」チーム、準優勝は東京工業大学 「井上ラボ」チーム という結果となりました。
2023年ファイナリスト5チームによるプレゼンテーションを、ぜひこちらからオンデマンド動画でご覧ください。また、学生レポート集はこちらからご覧いただけます。
今回の投資コンテストにご協力いただきました協賛企業・団体は、下記の通りです。
一般社団法人 オルタナティブデータ 推進協議会様、大和アセットマネジメント株式会社様、三井住友DSアセットマネジメント株式会社様、三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社様(五十音順)
同志社大学「 ユニコーン 」チーム:有事にレジリエンスを発揮できる企業に注目
最初に登壇したのは、同志社大学「 ユニコーン 」チーム。「不確実性の高い今の時代において、有事の際に適切なESG経営が出来る企業は企業価値が高い」と仮説をたて、ESGで企業のレジリエンス力を評価するというアプローチ。スクリーニングにはブルームバーグターミナルのスプレッドシートビルダ、EQS機能を使いました。
審査員講評:
非常に良くできている。レポートで表現できなかった部分をカバーするようなプレゼンの完成度も高い、気候変動に目が向きがちだが、「レジリエンス」に注目したアイデアも良かった。(川鍋)
課題の見つけ方が面白い。感染症以外のレピュテーションリスクや気候変動の影響などのリスクに対してのレジリエンスも今後考察を深めていけるとなおよい。(白重)
東京工業大学「井上ラボ」チーム:日本企業は人的資本の夢を見るか?ー独自の人的資本スコアで日本企業に投資
東京工業大学 「井上ラボ」チーム は、ソーシャルの中で、「人的資本」に着目してポートフォリオを作成。「データにまつわる課題に対処しながら、αを追い求めるファンド」をテーマとし、データの不足、利益の追求、社会変革という3つの課題を解決できるようなファンドの構築に取り組みました。
審査員講評:非常に良かった。金融商品なのでパフォーマンスも重要だが、なぜここに投資するか、アセットオーナーがわかりやすい形になっている。HRスコアもオリジナリティがあって面白い。日本は人的資本の開示が非常に悪いので、開示データを元にスコアを作ったということだが、HRスコアだけで外の投資会社に売れるかもしれない。銘柄ウェートについては、単純な時価総額加重ではなく、リスクを最小化するなども考慮にいれるといい。また、規模を切るのはいいが、中央値だけでなく、流動性も考慮にいれるとより現実的だろう。(寺島)
Sの分野も注目度が高いが、人的スコアは定義づけが難しい。定量化できるのが前提だが、今回の項目ががほんとうにその企業を表しているか、一貫した評価になっているか。業種の中だけで絞るとこれらの指標が、定性的に、スコアリングに活用できるのではないか。(川鍋)
同志社大学「まな柴」チーム:ウェルビーイングとデジタルの融合
同志社大学「まな柴」チームは、「従業員のウェルビーイングとデジタル技術の融合」がテーマです。「Well-beingによって向上した人間の能力・創造性とデジタル技術の融合を持ってイノベーションを創出できる企業は企業価値が高い」と仮説を立て、「Well-beingによるイノベーション創出を通じて持続可能な社会の実現に貢献できると同時に、経済的利益も追求できる魅力的なファンド」を構築しました。
審査員講評:
ウェルビーイングとデジタルを結びつける発想力。デジタルは定量化が難しい中、うまく数値化した。その数値化も3要素、XYZ世代、持続性、企業価値融合に結びつけ、多数の項目をたてて定量化し、項目が多すぎて焦点がぼやけかねないところを、仮説をたて、ストーリー仕立てにして、多くのデータで示したことで理解しやすくした。ポートフォリオ構築も分析も、リターンだけでなく、リスクなども含め分析が多面的になされている。(向畑)
スクリーニングコミュニティも含めて外部のステークホルダーへの関心の高まり、従業員自身のモチベーションにもつながるロジックが背景にあると思うが、自分以外のステークホルダーへの関心のかかわりが、自分の仕事のやりがいに通じるというような、先行研究があれば紹介してほしい。(浅野)
同志社大学「Churros & Churros」チーム:Z世代を取り込む上で必要不可欠で、イノベーションにつながる『多様性』に着目
同志社大学「Churros & Churros」チームは、労働力の中心となってくるZ世代を取り込むためにはD&Iの実現が必要だとし、「アンコンシャス・バイアスを打破することで真のD&Iを実現し、イノベーションを創出できる企業は企業価値が高い」と仮説をたてファンドを構築しました。
審査員講評:
テーマの選定が皆さんの世代だからこそでてくるもので、ユニーク。レポートも読んでいて面白かったし、プレゼンも素晴らしかった。スクリーニングの選定基準も非常に工夫されている。(白重)
最終的にできあがったポートフォリオでは、アジアのウェートが非常に低かった。バイアスのかかり方に地域的な特徴はあったと思うが、それに対する考慮はどのようにされていたのかが気になった。(寺島)
立教大学「Ishida-sʌn」チーム:Z世代として、労働人口減少と経済の停滞にチャレンジ
立教大学「Ishida-sʌn」チームは、日本における労働人口の減少に着目。「効率的な人材投資により持続的な価値を創造する企業への投資を通じて、労働人口減少と、それに伴う経済の停滞に立ち向かう」Human Capital Fundを構築しました。
審査員講評:
いわゆる人的資本における重要な因子を高い解像度で説明しようとした。違和感もなく、全体の分析のストーリーもロジカルな論理展開。人的資本を俯瞰してみたときに、効率性がよくなるパターンと、ボリュームをどう稼ぐか、の2つの側面に分けられると思うが、因子としては質的な部分に重点が置かれているようだ。ボリュームについて、各企業で従業員数を減らしているのか、減っているのか、増やそうとしても増えてないのか、純粋に増えているのか、そのような部分を入れると、もう少し広範な見方ができたのではないか。また、「人が減ったらキャッシュフローが良くなる」ような業種やケースもあると思うので、効率性もDXや特許を持った企業の買収などいろいろな方法で高めることもできる。若い皆さんの柔軟な考え方で広範な視点で考えていって欲しい。(浅野)
今回も、甲乙つけがたく、何を審査で一番重視するかというところで、結果が変わるほど、各チームが非常に拮抗しており、審査は難航しました。最終的には、分析力と独創性が特に優れていた、同志社大学「まな柴」チーム、東京工業大学 「井上ラボ」チーム の2チームが日本のバイサイドのエグゼクティブが集まる「バイサイドフォーラム2023 東京」での決勝戦へのチケットを手にすることになりました。
決勝選出チーム代表者コメント:
同志社大学「まな柴」チーム:3ヶ月間にわたって、ESGについて知見を高めることができて、仲間と一緒に切磋琢磨したよい機会となった。価値観を定量的に表現するのが難しかったが、今後定量的に評価できるように頑張っていきたい。
東京工業大学 「井上ラボ」チーム :自信を持って挑んだ大会だったが、他の人の素晴らしさに圧倒された。メンバーと頑張って分析をやってきて、指導教官の助けもあってここまでこれた。関わって下さった皆さんに感謝する。
審査員総括:
川鍋氏:今年で3年目だが、過去で一番審査が難しかった。どういった視点を主軸におくか。レポート審査とプレゼンで順位が変わったように思う。レポートへのフィードバックを活かして最後まで頑張ったチームが多かったのが印象的だった。
寺島氏:審査員として一番疲れた回だった。それぞれ良いところも悪いところもあり、さらにブラッシュアップできるはずなので、次のプレゼンテーションに活かして欲しい。去年よりさらにプレゼン能力が向上し、アプローチも新しくなっていた。Sは一番開示が悪く難しいところだが、若い皆さんがそこにチャレンジしたところに感動した。今後もESGに取り組んで欲しい。
向畑氏:2回目だが、去年よりさらに素晴らしかった。今年は47チームから勝ち抜いた5チームなので、自信を持ってほしい。自分が作ったポートフォリオが長期的な毎年時価でアップデートして、要因分析をして、ポートフォリオを高め、理論力を高めて欲しい。投資もESGも面白いので、運用の世界に飛び込んで欲しい。
浅野氏:かなりレベルの高い闘いとなった。この分野で関心を持てる人が増える人が自由な発想で取り組んでほしい。資料のクオリティや、データの使い方非常にレベルが高かった。今後とも一緒に切磋琢磨していけたらと思う。
白重:今年初めて参加したが、皆さんからの視点からみたESGというのは、私たち普段ESGに接している見方とは異なっているのが面白い。選抜2チームは、バイサイド・フォーラムでの決勝戦に向けて、フィードバックを活かして頑張って欲しい。
倉品:今回の投資コンテストも、これからの未来を担う学生さんたちに経済の最前線に触れてもらいたいということで開催した。レジリエンス、人的資本、ウェルビーイング、多様性といったさまざまな独自のアイデアを提示していただいた。学業もお忙しい中、多くの時間を使っていただいた。これが将来の糧になることを願う。
ファイナリストプレゼンテーションの様子は、以下よりオンデマンドでご視聴いただけます。
ブルームバーグESG投資コンテスト2023 プレゼンテーション オンデマンド
ファイナリスト8チームおよびレポート特別賞7チームによるレポート集は以下のリンクからダウンロードいただけます。
ブルームバーグESG投資コンテスト2023 レポート集
入賞チーム・参加校
ファイナリスト (チーム50音順)
- 立教大学「Ishida sʌn」チーム
- 東京工業大学「井上ラボ」チーム
- 同志社大学「Churros & Churros」チーム
- 同志社大学「まな柴」チーム
- 同志社大学「ユニコーン」チーム
レポート特別賞(チーム50音順)
- 神奈川大学「ウォーターリスクボーイズ」チーム
- 同志社大学「ざる蕎麦」チーム
- 青山学院大学「白須ゼミナール」チーム
- 立命館アジア太平洋大学「ブルームバーガーズ」チーム
- 立教大学「八咫烏」チーム
- 上智大学「ユニバーサルセット」チーム
- 上智大学「ユリーカ」チーム
参加校一覧(24校47チーム)(50音順)
- 青山学院大学
- エクセター大学
- 大阪大学
- 神奈川大学
- 関西学院大学
- 京都大学
- 慶應義塾大学
- 国際基督教大学
- 上智大学
- 昭和女子大学
- 成蹊大学
- 中央大学
- 東京工業大学
- 東京理科大学
- 同志社大学
- 東北大学
- 名古屋大学
- 広島経済大学
- 広島大学
- 二松学舎大学
- 法政大学
- 明治大学
- 立教大学
- 立命館アジア太平洋大学