ブルームバーグでは6月20日、『 加速する金融DXとクラウド活用の最前線|次世代データ戦略徹底解説 』と題し、セミナーを開催しました。
当日は業界を代表するゲストスピーカーの皆さまが登壇し、data lake の構築など、金融業界DX実現に向け活発化している次世代データ分析の最新動向についてお話しいただいたほか、ブルームバーグからは業務効率化および収益向上をサポートするためのデータ活用の最適なソリューションについてご紹介しました。
金融業界では、業務効率化と収益改善のためデータを戦略的に活用しようとする動きが活発化しています。
本イベント冒頭では、日本マイクロソフト株式会社シニア クラウド ソリューション アーキテクトの畠山大有氏が登壇し、高い安全性を誇る クラウド・コンピューティングサービスであるAzureについて解説するとともに、デジタル化されていないデータ活用のポテンシャルについてお話しいただきました。
マイクロソフトクラウドとAIの信頼性について畠山氏は、同社の「お客さまのデータはお客さまのもの」「お客さまのデータはAIモデルのトレーニングに利用しない」「データは高度なエンタープライズコンプライアンス、セキュリティ制御によって保護される」という3原則が厳守されている述べ、企業が安心して使えるクラウド環境であることを強調しました。
また同社は100%カーボンフリーエネルギーのデータセンターの稼働や水を使わない新たな冷却方法の導入など、環境サステナビリティに特に力をいれており、イノベーションで排出量削減を加速させることを目指しています。
畠山氏は、セキュリティやサステナビリティ、データ分析への投資の背景には、データを収集して分析することで理解した「データの重要性」にあるといいます。「日本においてはまだまだデジタル化、共有化されていないデータが膨大にあり、実態としては業務記録が大半を占める」と問題意識を掲げ、「ソフトウェアとデータを自在に扱えるようになれば、データがビジネスを動かす新しい原動力になる」と述べました。
ブルームバーグは強力かつ質の高いエンタープライズ・データフィードなど、さまざまなサービスを提供し、各企業が独自のデータやクラウド環境を構築するのを支援しています。ブルームバーグの担当者からは、ブルームバーグデータ・ライセンスとAzureとの連携、DATA <GO> ポータル、さらにブルームバーグのクラウドベースの分析プラットフォームであるBQuantエンタープライズについて概要を説明させていただきました。2018年以降、ブルームバーグはクラウドでデータにアクセスできるようにするために継続的に投資を行っており、現在では主要なパブリッククラウドプロバイダー3社をご利用のユーザーにデータライセンスとリアルタイムデータを提供しています。
まず、外部のマーケットデータを取り込みたい場合に、ブルームバーグがどのようにお役に立てるか、ブルームバーグデータ・ライセンスおよびクラウドとの連携について、エンタープライズデータ日本営業責任者より解説しました。
ブルームバーグでは、クラウドネットワークを活用して、高品質のデータフィードへのアクセスを提供しています。またデータ活用の最適なソリューションとして、このたび、Microsoft Azureの「Azure Virtual Network(VNet)」などで強固な通信の保護をプライベート接続にて行い、リアルタイムの取引データ、レファレンスデータ、価格データ、規制関連データ、ヒストリカルデータといったデータセットにシームレスにかつ安全にアクセスできるサービスを実装いたしました。これにより、クラウド上で優先度の高いアプリケーションへの、安全で信頼性のある接続を可能にします。(本件に関するプレスリリースはこちらから、以下抜粋)
本サービスは、Azureを利用するブルームバーグのエンタープライズ・データのお客さまに、高パフォーマンスなデータを提供するもので、ブルームバーグのリアルタイムのマーケット・データフィード「B-PIPE」のコンテンツが含まれます。B-PIPEとデータ・ライセンス・コンテンツを併せて、Azureで提供開始することにより、お客さまはインターネット接続を使用する際のパフォーマンスの制限、遅延、信頼性の低さを回避しながら、データへのシームレスで簡易なアクセスを体験することができます。
次に、クオンツ・ソリューション アジア・日本統括責任者より、当社初のクラウドベースのアナリティクス・プラットフォームである「BQuantエンタープライズ」についてご紹介しました。
パイソン言語、オープンソースのコーディングプラットフォームであるJupyterに、ブルームバーグの高品質で市場をリードするマルチアセットクラスの包括的な金融データセットと組み合わせることで、高度な分析が可能になります。クラウドリソースを活用しつつ、ブルームバーグのデータとお客さまのデータをクラウド上で接続し、ビッグデータ分析をサポート。自動化、効率化が実現します。
実際に世界各地でイールドカーブ分析や、ファクターローテーション分析などで活用されています。また日本でもBQuantを使ったESG分析アプリを開発するBQuqntハッカソンを過去数回にわたって開催、多くの金融機関の皆さまにご参加いただいており、画像とともに活用例が紹介されました。
大容量データを高速で処理できるテクノロジー
高度なデータ分析には、テクノロジーが必要です。データサイエンスプロジェクトやパイソンを始める方が増加している背景には、ニュースやテキスト分析、オルタナティブデータ分析などを行う必要が高まっていることがあります。また、日中データを使用した分析、最適化や機械学習など、大容量データを扱う場合、エクセルやローカルPCに依存した環境では実現が困難です。こうした問題を解決するためにブルームバーグではビッグデータ分析のための豊富な資源を生かすとともに、Pandas, Dask, PySpark といった大容量データを取り扱えるツールを取り入れています。
続いて、このたび世界最大級のヘッジファンドであるMan Group とのパートナーシップによりBQuantへの実装が可能となった、数十億行にわたるデータもほんの数秒でプロセス可能なArcticDBという新しいオープンソースのデータベースについてもご紹介し、「トレーダー、ポートフォリオマネジャーやアナリストといったデータの専門家でなくてもパイソンを使って、データを高速で処理できる画期的なデータベース」と述べました。さらに、最先端のテクノロジーに関してご興味・ご関心のある方向けに、ブルームバーグでは、7月下旬にデータサイエンス・カンファレンス2023開催をご案内しました。
【B-PIPEケーススタディー:SMBC日興証券株式会社様】
ブルームバーグ・マーケット・データフィード(B-PIPE)は、世界中のマーケットデータを標準化し、リアルタイムに配信する統合データフィードサービスです。
SMBC日興証券では、データ分析の高度化を目指して、2023年4月よりマーケットデータと社内ビックデータの融合に本格的に取り組まれ、ブルームバーグのB-PIPEを使ったAIデータ分析基盤を構築されました。
本イベントでは、SMBC日興証券グローバルテクノロジー部副部長市川 宜氏より、導入するまでのデータ分析における課題と対応状況、ロードマップの説明、データ分析実施のため構築したB-PIPEの構成についてご説明いただきました。
AIデータ分析基盤導入前の主な課題としては、「データが蓄積されているが、探索、利活用余地がある」「データ分析ツールを使った開発難易度の高さ」「AI・機械学習のコストが高止まりしているため量産化が困難」「マーケットデータと社内データの統合管理に課題」といったことがあげられました。
「AI民主化」を進める対応策として打ち出されたのが、AIデータ分析基盤とデータ分析案件量産体制の構築でした。
同社のAIデータ分析基盤はマイクロソフト社Azureをベースに構成されています。マーケットデータが重要かつレイテンシーの考慮が必要のないデータの利用ニーズも高い同社にとって、クラウドセキュリティ面で重要な閉域網環境下で、どのようにマーケットデータが利用できるかという点は重要なポイントでした。市川氏は、「Azure環境下でプライベート接続という、クラウドセキュリティ条件を満たす唯一のツールがブルームバーグのB-PIPEだった」と述べています。
市川氏は、「機械学習を導入することで業務負荷を最小限に抑え、人材と分析の内製化によって量産化を実現できる」とし、「低レイテンシーリアルタイムデータを利用した分析のニーズは強いため、さらなるレベルアップが必要になるが、今後もベンダーの皆さまと協業して対応していきたい」と結びました。
続いて一般社団法人金融データ活用推進協会代表理事 岡田 拓郎 氏が登壇し、「金融データで人と組織の可能性をアップデート」をミッションとして掲げる金融データ活用推進協会の活動について紹介しました。「横のつながりを作る」ことで、業界横断のデータ活用推進を目指すという同協会の会員数は、2023年6月時点で金融機関を中心に150社を超えており、地方銀行が多いのも特徴だといいます。
岡田氏は、金融機関のAI・データ活用が進まない理由として、各社で解決すべき課題が不明確、デジタル人材のミスマッチによる開発コスト、データ活用が組織に根付いてないことなどをあげました。
対応には成功パターンの類型化が有効であるとして、各社による金融AI成功パターンについて同協会がまとめた書籍を紹介しました。またデジタル人材育成については、テクノロジーの進化によって、データストラテジストの育成の必要性が高まっているというトレンドを指摘し、金融業界データコンペなどへの参加を奨励しました。
また、昨今巷で急速に活用が広がっている生成系AIについて、金融業界におけるChatGPT等の生成系AIのユースケースや各国政府の対応を紹介。金融機関が今からできることとして、「社内で生成系AIを利用できる環境を構築するほか、AI活用の下地を作る、新サービスの実証検証などが有効」などと述べました。