世界のESG(環境、社会、ガバナンス)資産は増加基調が続いており、ブルームバーグ・インテリジェンスでは、2025年の世界総運用資産残高を140.5兆ドルと予想したうえで、その3分の1以上となる50兆ドル規模をESG資産が占めると見ています。
初のアセットマネジメント会社様のみで開催のハッカソンイベント
3月5日、ブルームバーグでは、「ESG投資に、クオンツを」をテーマにBQuantハッカソンを開催しました。BQuant Hackathonとは、各社でチームを結成し、ブルームバーグのPython開発ツールであるBQuantを使って分析機能を開発、発表していただくものです。初のアセットマネジメント会社様のみイベントとなった本ハッカソンシリーズは、2019年の初開催から4回目を数えます。昨年はAPACワイドで開催したほか、国内だけでもこれまでに19社32チームからご参加をいただいております。
今回のハッカソンには、以下4チームのアプリがエントリーし、最も参加者の票を集めたチームに贈られるMost Popular APP賞は、日興アセットマネジメントチーム「Carbon Pricing Impact on Portfolio App」が獲得しました。おめでとうございます。
- 野村アセットマネジメントチーム「ESG Dashboard (JP Equity) 」
- 三井住友DSアセットマネジメントチーム 「日米欧の社債ファクター分析支援ツール」
- 日興アセットマネジメントチーム 「Carbon Pricing Impact on Portfolio App」
- 三井住友トラスト・アセットマネジメントチーム「カーボンリスク観測ツール : シルク」
ESG要素をポートフォリオに反映させることは、いまやアセットマネジメント業界で最大のテーマの1つであり、同時に信頼できる標準化されたESGデータへのアクセスおよびデータ解析スキルと処理スピードの向上が喫緊の課題となっています。金融から世界のESGに関する意識を変えていこうとする業界の大きな潮流のなか、今回の試みは、ESG分析に関してプログラミング言語であるPythonを用いてどのようなことができるかを、業界として試し、語り、高め合うことを目指すものです。
ご参加の4社の皆さまには、BQuantやPythonが初めてあるいは不慣れな方も多いなかで、約2ヶ月間、通常の業務とは別にアプリケーション開発に取り組んでいただきました。発表されたアプリでは4社中2社がGHG(温室効果ガス)の排出量削減に向け国内でも議論が活発化するカーボンプライシング(温暖化ガスの排出量に価格を付ける仕組み)に取り組んだほか、一つ一つが非常に個性的で「Pythonでここまでできるのか」「早速社内で共有したい」「すごい」「次は絶対に参加したい」「もっとPythonを学びたい」との感想が寄せられました。
インテグレーション
特別ゲスト:
- 株式会社日本政策投資銀行 執行役員 産業調査本部 副本部長兼経営企画部 サステナビリティ経営室長 竹ケ原 啓介氏
- 株式会社日本取引所グループ 総合企画部 企画統括役 松尾 琢己氏
特別ゲストとして上記竹ケ原様および松尾様のお二方をお招きし、ESGの観点からコメントを寄せていただきました。ハッカソン全体について竹ケ原氏は、「BQuantを用いたESG分析というチャレンジングなテーマに取り組まれた皆さまに敬意を表します。定性情報も少なくないESG情報をクオンツがどう扱うのか、大変興味深く拝見しました。いずれも短期間で発展可能性の高いツールを開発されており、ESGインテグレーションの最先端の好例だったと思います」と述べています。
各社アプリ概要(発表順)およびお二方から寄せられたコメントは以下をご覧ください。
マネジメントチーム
野村アセットマネジメント「ESG Dashboard (JP Equity) 」
【概要】ユーザーフレンドリーなGUIおよび直感的な理解を目指す。さまざまな形式のチャートを活用し、ポートフォリオレベル、個別銘柄レベルで直感的にESG項目のレベルがわかるアプリを構築。課題は、スプレッドシートベースで管理されているデータの加工と処理の自動化です。
ベンチマークを指定することで、各ESGのエクスポージャーがポートフォリオベースと銘柄ベースでわかるアプリ:ポートフォリオ内でも、どの銘柄が寄与しているか、いつどのような要因で変化したかも読み取ることが可能。
三井住友DSアセットマネジメント 「日米欧の社債ファクター分析支援ツール」
【概要】非財務データを含めたクレジット運用戦略の構築、信用力分析に役立つアプリを構築。ブルームバーグのPORTとの連携など、API機能をフル活用し、債券の銘柄に対するESGデータを効果的に紐付けて分析することに成功しています。
連続変数間の関係についてはコリレーションマトリックスが作成できる。伝統的ファクターとESGファクターの関係性を見たり、多変量を一度にプロットで見ることも可能。
マネジメントチーム
日興アセットマネジメント 「Carbon Pricing Impact on Portfolio App」
【概要】運用担当者、アナリスト、ESG担当者にとって使いやすいアプリを目指し、企業価値評価への影響があり、多くの人の関心事であるカーボン影響の分析に取り組む。ブルームバーグのオーダーマネジメントシステムのAIMと管理ポートフォリオとESG関連のデータを紐付けて分析するユースケースになっています。GHG総排出量の予想までこなせるアプリです。
選択したベンチマークの選択した業種の散布図が表示され、直近値がない場合は10期まで遡れる。エクセルでは長い関数が必要だが、パイソンなら比較的短いコードで取得が可能。X軸Y軸。の業種平均が点線で示され、選んだ企業群の過去の推移も確認できる。
三井住友トラスト・アセットマネジメント「カーボンリスク観測ツール : シルク」
【概要】世界的なカーボンニュートラルの流れのなか、ファンド組成の前と後でカーボンリスクを把握し、それを最小に抑えることを課題とし、ポートフォリオのカーボンリスクを計測、管理するツールを構築。クオンツという観点からESGを見たときにどのような分析になるのか、非常に興味深いアプリの1つです。
BGS(ブラウングリーンスコア)とBMG(ブラウンマイナスグリーン)ファクターリターンを活用し、各セクターのカーボンβを計測。
スキルアップを
発表終了後は、開発者の皆さんがオンラインルームに集合するブレイクアウトセッションも開催しました。開発者の立場でお互いのアプリについて率直に意見を交換する時間は、イノベーションのヒントが見つかりそうなハッカソンならではの醍醐味が感じられるものでした。ご興味、ご関心をお持ちの方は、これまでのハッカソン参加者も集う、ブルームバーグの開発者向けLinkedIn コミュニティAPI Geeksにもぜひご参加ください。ブルームバーグのExcel API(BDP/BDH/BQL formula)などAPIシステムや、BQLデータを活用するBQNTプラットフォームをご利用の方ならどなたでもご参加いただけます。参加ご希望の方は担当:稲葉(rinaba2@bloomberg.net)までお知らせください。
ブルームバーグでは、ハッカソンを業界全体のスキルアップのための場として今後も継続的に開催していく予定です。今回の開発期間中は、ブルームバーグNEF部門アナリストによる特別ESGウェビナーやリポートへのアクセス、BQuantスペシャリストによる特別サポートをご提供させていただきました。
本プログラムが、皆さまにとって、普段の業務を改めて考えたり、新しいアイデアをブレーンストーミングしたり、チームでプログラミングに取り組むなどのきっかけになれば幸いです。BQuant ハッカソンについてはこちらをご覧ください。
最後に参加チームの皆さまの声を抜粋してご紹介します。
- これを機にBQNTを社内に普及するきっかけになりそうな予感がしておりワクワクしています。
- 他社のアプリも含めESGデータからどのようにポートフォリオにアプローチできるか色々知ることができて大変勉強になりました。また普段ジャッジメントを担当しておりクオンツ的な知識も触れることができて大変いい経験になりました。
- 敷居が高そうだと敬遠していたBQNTのポテンシャルの高さを知ることができた。普段、業務での関わりが薄いメンバーとの協働は、勉強になる面が非常に大きかった。
- BQNTを使って様々な分析が実現できることが分かり、とても有益でした。もう少し時間があれば、完成度が高く、より詳細な仕様で作成できたのではないかと思いました。
- ひとまずはESGデータの取得を行いたいが、今後はBQNTを分析に利用できるようにしていきたい。
BQuant
エンタープライズ
BQuantとBQuant エンタープライズ(クラウド)について
BQuantとは、洗練されたデータ分析を手早く行い、簡単に社内共有できるバイサイドのお客さま向けのアプリです。コンピュータ言語であるPythonを使用したデータ分析ツールで、ポートフォリオ分析機能PORT<GO>、オーダーマネジメントシステムAIM<GO>、自社リサーチ管理システムRMS<GO>等さまざまなブルームバーグの端末機能と連携、組み合わせて利用することが可能となっています。
ターミナルで用意された分析だけでなく、独自の分析を求めるお客さまのニーズに答え、エクセルAPIを提供してきたことがさらに進化し、より速い計算が可能で、社内共有も容易なBQuantが誕生しました。次のステップは、クラウドの提供です。作業の自動化に優れたデータサイエンスプラットフォームであるBQuantエンタープライズを、定額、無制限のデータアクセス、社内システムとの連携、ボタン1つでモデルを共有など、利便性をさらに高めてご提供いたします。詳細は営業担当までお問い合わせ下さい。