ESG資産、2025年には53兆ドルに達する可能性ー世界全体の運用資産の3分の1

Read the English version published on February, 23, 2021.

この分析は、ブルームバーグ・インテリジェンスのESGおよびテーマ投資EMEA部門統括 Adeline DiabとBIの主任株式ストラテジスト Gina Martin Adamsが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されたものです。

世界のESG(環境、社会、ガバナンス)資産の増加基調が続いています。2025年に想定される世界の運用資産残高140.5兆ドルのうち、ESG資産は53兆ドルとその3分の1を超えると予想されます。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)とその打撃を受けた経済の回復を環境重視で進めようとする米国、欧州連合(EU)および中国によるグリーン・リカバリーが相まって、ESGが今後、いかに新たな金融リスクの評価と資本市場の活用に役立つかが明らかになると思われます。

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もはやニッチとはいえない – ESG市場は50兆ドル規模へ

成長率を過去5年間のペースの半分の15%と想定すると、ESG運用資産残高は、2025年までに予想される合計運用資産残高140.5兆ドルの3分の1以上を占めることになるとみられます。BIでは、ESG運用資産残高は25年末までに足元の37.8兆ドルから53兆ドルに達すると予想しています。ESG運用資産残高は16年の22.8兆ドルから18年には30.6兆ドルに急増しました。

世界のESG資産の半分は欧州が占めていますが、20年でみると米国のESG資産が最も増えており、22年以降は米国が最大となるかもしれません。次の波は、特に日本を中心としたアジアから来るものとみられます。マッキンゼー・アンド・カンパニーおよびGlobal Sustainable Investment Alliance(GSIA、世界のESG投資額の統計を集計している国際団体)によれば、宗教的価値観やその他の基準に基づくネガティブ・スクリーニングは18年に世界全体で約20兆ドルと、ESG投資の中で最大比率を占めています。

世界のESG運用資産残高予想

出所:GSIA、ブルームバーグ・インテリジェンス

ETFによるESGの有機的成長は1兆ドルの可能性

ESG上場投資信託(ETF)の累積資金流入額は21年までに1350億ドルを超えると推定されます。今後もETFへの資金流入は加速し、向こう5年間の流入額は世界全体でみると1兆ドルになる可能性があります。20年第1四半期から第3四半期にESGファンドに2030億ドルが流入しましたが、その24%に相当する約490億ドルはETFへの流入でした。このペースは衰えておらず、ESG ETFへの資金流入は27週連続で増加し、20年11月の流入額は月間ベースで最高の130億ドルを記録しました。

ESGのETF資産は20年末までに1900億ドルを上回り、世界全体のETF資産増加分の13%近くを占めると予想されます。これまでは欧州がESG関連ETFの大半を占めてきましたが、次の有機的成長は米国商品によってけん引される可能性があります。米国のESG ETF市場は20年9月時点で318%以上拡大し、スマートベータ戦略での投資による資金流入の90%を占めました。

ESGの拡大トレンド

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

ESG債券市場は11兆ドルに成長する可能性

ESG債券市場は足元2.2兆ドルですが、今後、過去5年間の半分程度の成長ペースで拡大すると想定すると25年までに11兆ドルに膨らむ可能性があります。グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドの累積資産残高は、今年ソーシャルボンドが急増した結果、20年末までに2兆ドルの大台を超えるとみられます。

企業や開発プロジェクト、中央銀行が牽引するESG債の有機的成長のペースに鈍化の兆しはなく、目先はパンデミックやグリーン・リカバリーの取り組みによって市場拡大がさらに進むと思われます。EUは雇用支援に1000億ユーロ、パンデミック後の経済回復に2250億ユーロを投じることを確約しています。また、米国のバイデン大統領が2兆ドルのエネルギー戦略を掲げる一方で、中国では23年にグリーンボンドが償還期限を迎えるなど、すべてが債券市場で新発債発行に十分な余地があることを示しています。

2020〜2025年のESG債予想発行額

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

欧州のESGゴールドラッシュは世界的に拡大する見通し

欧州におけるESGファンドの成長は、世界的な動向を知るためのバロメーターとなるかもしれません。米投資情報会社モーニングスターによれば、欧州のESGミューチュアルファンドとETFは20年に1.1兆ドルに達しました。これは欧州全体のファンド資産額の10%に相当する規模です。こうした成長をけん引したのはクライアントからの需要に加え、前例のないペースで商品開発が進んだことで、20年は第3四半期までに330本のESGファンドが設定されました。1四半期当たり100本以上の新規ファンドが生まれたことになります。

様々な資産クラスやテーマでESG投資が拡大するにつれ、成長は加速するでしょう。開発商品の大半は株式ですが、債券も新規ESGファンドの20%を占めます。株式の中ではテーマ商品への多様化がみられます。気候変動関連商品が引き続き最大比率を占め、20年に立ち上げられたESGファンドの約25%を占めています。

第3四半期に立ち上げられた欧州のサステナビリティ・テーマ別新規ファンド

出所 :Morningstar Research、2020年9月時点のデータ

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