第2次金融商品市場指令(MiFID II)、影響は広範囲に及ぶ見通し

本記事は Mark Croxon (ブルームバーグL.P. 欧州・中東・アフリカ地域規制・市場構造戦略責任者)と Gary Stone ( ブルームバーグL.P. 市場構造ストラテジスト)が執筆し、ブルームバーグ プロフェッショナルサービスのニュースセクションに初出掲載されたものです。

MiFID IIの影響を受ける欧州企業と取引を行う、全世界のセルサイド、バイサイドの企業は、自らもその指令の影響を受けること、そして場合によってはその影響が極めて大きくなることを認識し始めた。

欧州の規制当局は、EU域外に所在する企業に直接的な影響を及ぼさないが、新規制はこうした企業にも間接的な圧力を与えることになる。

欧州企業は、MiFID IIに準拠するため、EU域外の取引相手に新たな開示や報告を求める可能性がある。場合によっては、域外の企業にビジネスのやり方を変えるよう求めることがあるかもしれない。要するに、EU規制によって、域内の企業は域外の企業に影響力を行使することを求められる。

EU域内の企業は、透明性報告や最良執行、コミュニケーションの保管など、およそ11の分野での変更に対応しなければならない。一部の責務の範囲はEU域外にまで及ぶ可能性がある。例えば、リサーチ費用と執行手数料の分離、株式およびデリバティブの取引に関する規制上の要請、取引報告、最良執行、サーベイランスなどがこれに当てはまる。

米国を例に挙げると、アセットマネジャーは、EUに拠点を置くアセットマネジャーの資金であるいは共同で投資を行う、またはEUに拠点を置くブローカーに発注を行うのが一般的だ。反対に、米国のブローカーは、EUのアセットマネジャーに代わって取引を行う。米国の企業にとって、EUの取引相手の視点を理解することは、MiFID IIが施行されたときに確実に顧客の要求に応え、ビジネスを継続できるようにする上で重要になる。

一方で、EU域外のブローカーは2つの特に複雑なケースに直面するとみられる。1つはリサーチ費用と執行手数料の分離、もう1つは取引に関する規制上の要請である。

リサーチ要件の最終的な形は依然として流動的だが、その影響は極めて大きくなる可能性がある。英国の金融行動監視機構(FCA)が提案するリサーチ費用支払い口座メカニズムの導入は、米規制の対象企業にとってコンプライアンス上の問題をもたらすかもしれない。

例えば、米国のブローカーは、取引執行に関連したサービスとしてのみリサーチを提供することができる。投資助言会社として登録すれば、リサーチ費用支払い口座の規定を順守しつつ、リサーチ費用を直接受けることが可能だ。しかし、それは簡単なことではない。投資助言会社として登録すれば、取引行為のほとんどが不可能になり、ビジネスモデルが変わってしまう。従って、米アセットマネジャーがリサーチ費用と執行手数料を分離することは可能ではない。英国のアセットマネジャーにリサーチを提供するブローカーも影響を受ける。一方で、フランス金融市場庁(AMF)は、株式市場向けガイダンスでより寛大なアプローチを取り、手数料負担合意制度を強化することでMiFID IIの順守が可能であることを示した。これは現在の慣行に似ており、米規制の順守も同時に可能になるように思われる。

EU域外のブローカーがEU域内の顧客から、EU市場に上場している、またはそこで取引されている国際証券識別番号(ISIN)付きの株式に対する注文を受ける場合、事態は少し複雑になる。

金融商品市場規則(MiFIR)第23条は、EUの顧客はEUの取引場所、組織的内部執行業者(SI)、域外の同等の取引場所のいずれかで取引を執行しなければならないと規定している。

EUの規制当局が、米国をMiFID II同等の規制が施行されている市場と認めない限り、EUの顧客はEUの取引場所でしか、こうした株式の取引を行うことができない。EUの顧客は、米国のブローカーにこうした注文の執行を依頼することができなくなる。いずれにせよ、EU市場での流動性が低ければ、この取引はEUの最良執行と投資家保護の要件を満たさず、執行は不可能になる。

米国でのみ取引が可能な株式については、EUのバイサイドのワークフローに変更はない。しかしながら、MiFID IIに基づいて、取引報告で識別できるように、EUのアセットマネジャーが米ブローカーに対して取引主体識別コード(LEI)の取得を求めるかもしれない。

EU域外のアセットマネジャーは、他にも数々の問題に直面すると見られている。例えば、EU企業が米アセットマネジャーに投資する場合、MiFID IIの投資家保護と最良執行の規定に従い、EU企業は米アセットマネジャーの取引執行の質を監視しなければならなくなる可能性が高い。その結果、EU企業は米アセットマネジャーに対して、顧客にとって最良の結果を出すことを目的とした、欧州証券市場監視局(ESMA)が呼ぶところの「あらゆる十分な措置」をどのようにして取るのかを明記した、注文執行方針を策定するよう求めるようになるかもしれない。ブローカーは報告書を作成し、取引が注文執行方針に準拠して行われたことを証明する必要もある。我々は「あらゆる十分な措置」には体系的、自動的な取引コストの分析が含まれると解釈している。

他にも、EU域外の企業がEU域内の顧客とビジネスをする場合に、慣行を変えなければならないシナリオが多くある。我々はそれをMiFID IIの遠くまで及ぶ影響と呼んでいる。