Read the English version published on June 25, 2021.
本稿は、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリストCaroline StewartおよびMarie-Christine Yoko Hussが執筆し、ブルームバーグターミナルに掲載されたものです。
国産ワクチン、追加投与で可能性広がるか
新型コロナウイルスワクチンを開発する国内企業にとっては、追加接種が好機となるかもしれません。最近発表されたデータによると、南アフリカで最初に発見されたベータ株向けのアストラゼネカのワクチンは、3回目の接種の有効性が低い可能性が示唆されています。メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの方が効果が高いようですが、世界の未接種人口はまだ多く、今後も新たな亜種が発生するでしょう。しかし国産ワクチンの場合、発売までの期間が長くなるほど、その有効性を示すのが難しくなりそうです。
田辺三菱はメディカゴを通じて、まずは海外で「MT-2766」を開発しています。第一三共、塩野義製薬、アンジェスは独自のワクチンを開発しており、既存ワクチンの安全性が問題となった場合には、国内で売り上げを伸ばすことができるかもしれません。
- アストラゼネカのワクチンは若年層では血栓リスクがあり、60歳以上に限定される可能性がある
- 多くの地域で、ようやく65歳未満へのワクチン接種開始
- 12歳以上の子どもへのワクチン接種が夏の終わりまでに完了し、新学期の開始に間に合うかは不明
追加接種における問題点
日本では、2回目の新型コロナワクチン接種時には初回と同じものを使用することが義務付けられていますが、9-12カ月後には再度の追加接種が行われる可能性があり、その場合には混乱が生じかねません。これまでのデータには、異なるワクチンの接種は安全で効果的であることが示されています。何千もの企業が従業員とその家族のためにワクチンを調達できるようになり接種は急加速しましたが、一部では自治体での予約開始を待つ人向けのモデルナ製ワクチン供給が不足し、地域によっては数週間を要する場合もあるようです。
加えて、改良ワクチンが利用可能になった場合の方針はまだ不明瞭です。ファイザーは、既存ワクチンの3回目の接種の有効性と、変異株の最新データを7月上旬に入手できるとしています。
- 菅義偉首相は、7月末までに高齢者、11月末までに全成人への接種を目指す
- 日本での新型コロナワクチン接種は、オンライン予約の難しさ、実施までの手続きの複雑さ、接種担当者の制限がネックに
- 3500社を超える企業が新型コロナワクチンの調達を申請したが、ワクチン供給の問題から現在は新規申請の受け付けを停止
- ワクチン供給問題により、都道府県からのモデルナ製ワクチン接種会場の申請受け付けも停止
追加接種では安全性がより重視される
新型コロナワクチンの安全性が徐々に明らかになり、これが日本のワクチン戦略にもたらす影響が注目されます。これまで政府は、製薬企業に日本での臨床試験を義務付けるなど、慎重な姿勢で臨んできました。アストラゼネカのワクチンではまれに血栓症が見られ、その是非についてはまだ議論が続いています。このような慎重姿勢が、日本で反ワクチン感情の高まりを抑えることにつながったとも言えるでしょう。しかし、メルクの子宮頸がんワクチン「サーバリックス」の例が示すように、安全性への懸念がワクチン接種の減速につながる可能性は残ります。追加接種が必要になった場合には、安全性の問題がより重視されるでしょう。
6月23日に米国疾病管理センターが発表した新型コロナワクチンの安全性に関する最新情報によると、mRNAワクチンでは、特に若い男性において心筋や心臓を取り巻く組織に炎症が起こる可能性が懸念されています。
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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。