ブルームバーグでは、経済・金融の最前線における学びや実体験を学生の皆さんに幅広く提供する機会として、今年もESG投資コンテストを開催しました。2022年のテーマは、 Z世代が作成する『選ばれる』ESGファンドです。
エントリー後は、担当教授ご指導のもと、1チーム100億円の仮想投資資金を使って、ブルームバーグターミナルを活用し、企業の環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)への取り組みを軸に銘柄を選定、3カ月間運用するESG投資のシミュレーションに取り組んでいただきました。
審査では、まず、各チームが作成したポートフォリオおよびレポート内容からファイナリスト4チームを選出、そのうち上位2チームが、国内の機関投資家が集結するBuy-Side Forum Tokyo 2022(2022年10月25日)にて行われた決勝大会に進みました。厳正な投票審査の結果、優勝は同志社大学「Gabenomikusu」チーム、準優勝は東京工業大学「Inoue Lab」チームに決定しました。
持続可能性や気候変動と否応なく向き合い、今後の社会を担っていくZ世代。斬新な発想と独創性にあふれたさまざまな投資アイデアやポートフォリオの数々で、今年も審査担当をうならせてくれました。
2022年ファイナリスト4チームによるプレゼンテーションを、ぜひこちらからオンデマンド動画でご覧ください。
今回の投資コンテストにご協力いただきました協賛企業・団体は、下記の通りです。一般社団法人 オルタナティブデータ 推進協議会様、大和アセットマネジメント株式会社様、三井住友DSアセットマネジメント株式会社様、三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社様(五十音順)
審査員(順不同):
一般社団法人 オルタナティブデータ 推進協議会 齋藤 淳吾 氏
大和アセットマネジメント株式会社アクティブ運用第二部 兼 責任投資部 チーフ・アナリスト 寺島 正 氏
三井住友DSアセットマネジメント株式会社 責任投資推進室長 川鍋 秀樹 氏
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社 スチュワードシップ推進部 ESG推進室 審議役向畑 康志 氏
ブルームバーグ 日本バイサイド営業統括責任者 富永 有紀
ブルームバーグ ポートエンタープライズスペシャリスト 営業小原 直也(審査委員長)
東京工業大学「Inoue Lab」チーム「地政学リスクに強い持続可能エネルギーへの転換を促進したい」
トップバッターは東京工業大学「Inoue Lab」チーム「地政学リスクを考慮したESG」です。地政学的、エネルギーリスクに注目し、それを定量化に落とし込んだ独創的なプレゼンテーションとなりました。ポートフォリオの欧州企業への偏りやプレゼンの不慣れさなどはあったものの、地政学リスクという着眼点の独自性や分析が評価されました。
審査員講評:
審査員からは「最近のウクライナ情勢を受けての内容となっており、投資家としてもテーマは興味深かった。地政学リスクを鑑み、調達元を細分化し計算しており、データをかなり研究されている」と高い評価を受けました。また、「多様なポートフォリオと比較しており、説得性もある。今回だけでなく、リーマンショック時あるいはその他過去の地政学リスクが高まったときにおいても、このモデルが通用するか検証できればさらによくなったと思う」とのコメントも。
同志社大学「クロワッサン」チーム「食とデジタル技術の融合により人間の健康と地球の健康を同時に解決する企業に投資」
次に登壇したのは、同志社大学「Croissant」チーム「Food Technology Health」です。食とテクノロジーを組み合わせた、訴求力の高い内容となりました。広範な分野をカバーしようとしたことから若干焦点がぼやけてしまった感はあったものの、意欲的なテーマ設定について高い評価を受けました。
審査員講評:
審査員からの「第3次および第4次スクリーニングで実に多様な指標を集めており、まさにここが肝となっている、これはどのように調査したのか」との質問に、「影響力スクリーニングを通過した企業数が約1700社を『6人で分担して、力作業で』調べた」と回答、学生ならではの頑張りを彷彿とさせるものとなりました。
また、「まずプレゼン資料のページ数の多さに驚く。めくっていっても追いつかないほどで、かなりの時間をかけられたのだろうと思う。それ自体は悪いことではないが、ポイントを絞り、そこを強調してアピールすることも大切かと思う。調査した企業の数だけでなく、長崎大学の先生のもとへ行ったり、オムロン社に取材を申し込んだり、手足を動かして非常に良く調べているのには感心した」「ストーリー展開も面白く、なぜここに注目したのかも含め参考になった」とのコメントが聞かれました。
名古屋大学「The Fourth Harmony」チーム「企業とサプライヤーのESGスコアを統合」
名古屋大学「The Fourth Harmony」チーム「サプライチェーンの視点によるESG分析」は、ファイナンスを駆使したESGの表現が大変再現性の高いものとなりました。一社へのポートフォリオの集中リスクは懸念点として指摘されたものの、「必ずしもESGスコアの高い企業のサプライヤーが必ずしもスコアが高いわけではない」という発見については鋭い洞察であると評価されました。
審査員講評:
審査員からの「世の中が注目しているサプライヤーのESGは、着眼点としては非常に優れている。サプライヤーのデータはどうやってとっているのか?という問いに対し、「サプライヤー情報に関しては、ブルームバーグターミナルとSPLC機能を活用。この機能を使うことによってサプライヤーのESGデータを調べることができる」と回答。ブルームバーグターミナルを使いこなしている様子を伝えてくれました。また、「よくまとまっており分かりやすかった」との評価もありました。
同志社大学「Gabenomikusu」チーム「エシカル消費におけるZ世代の意識と行動のジレンマに着目」
同志社大学「Gabenomikusu」「ジレンマ・マスターズ」は、時代を反映させたSNSに着目、訴求力を持ったプレゼンテーションとなりました。エシカル消費やESGといった、Z世代への説得力に満ちた分析が大変説得力のある内容になりました。また実際にどこのファンドに投資したいかとなると、同チームのポートフォリオは魅力的だという声もあがりました。
審査員講評:
審査員からは「株式投資にとっては変化が大事。着眼点、ストーリー展開、データによるバックアップも素晴らしい。個人的には納得できる内容であり、このファンドを買いたくなった」との高い評価でした。また、第3次、第4次スクリーニングの方法等について質問に対しては、「抽出した『味の素社』のような企業は、Z世代の参加を促すような発信をSNSで行っている。一方でここで落とされた企業群は、「CO2をXX%削減といったようなシンプルな内容で、Z世代の参加を促すような内容ではなかった」と回答し、この世代ならではの着眼点が印象的でした。
さらに、1200社程度を手作業で調査したことが明かされると、審査員からは「そのデータはメーカーさんに売れるのでは?」というコメントも。「Z世代から示されるポイントには説得力があった」と好評を博しました。
川鍋氏:4チームとも非常に良く準備している。ESGが投資としてのメインストリームになっていくことが期待できる内容だった。レポート審査後に伝えた改善点についても、対処できており大変良くなっている。
齋藤氏: 2チームが大量の調査をマンパワーで乗り切ったというエピソードに示されるように、学生時代は時間をたっぷり、自由に使える最後のチャンス。ESG投資に限らず、好きなことに思いきり時間を使ってほしい。また、選ばれた2チームとも「選ばれるとは思っていなかった」とコメントしたが、今後グローバルで活躍していく皆さんは、むしろ「これだけ努力したのだから選ばれて当然だ」というレベルの準備をしたうえで、気概と勇気を持って色んなことに挑戦してほしい。
寺島氏:かなりの時間を使い、真面目に正面から取り組んでいただいた。2チームを選んだが、4チームとも間違いなくすばらしい内容だった。昨年であれば、どのチームがでても優勝しただろうというくらい、毎年レベルアップしていると感じる。これからもESGに興味を持ち、携わっていただきたい。
向畑氏:どのチームも非常に熱心であり、チームワークがすばらしい。学生時代の経験としてもいい経験となったのではないか。審査員としては、パフォーマンスとESGの取り組みをうまく結びつけるストーリー性とデータの裏付けを重視した。上位2チームは、自信をもって、「これを買わなければ損です」というくらいの勢いでやっていただけたらと思う。企業へのESGエンゲージメントに関しては、企業各社もまだ道半ばである。自分の会社のESGの取り組みがどれだけ企業価値向上へ結びつくかという点において、アイデアをだしていってほしい。また、今後も引き続き、長期にわたって今のポジションを大切にし、計測していってほしい。
富永:Z世代の存在感を強く感じさせる内容となった。皆さんがこれからの時代を作っていく。これからの世界をよりよくしていく。そういった気概をもってやってきている。世の中を良くしていきたい、こうしていきたいという気概、心の中にある火種を大切に育てていってほしい。
小原:レベルの高さに驚き、とても喜ばしく思っている。今後何らかの形で今回のコンテストの経験や感じたことを大事に、皆さんの活動で社会が良くなる、良くしていけるという信念をもって取り組んでいただきたいと思う。ブルームバーグとしてもデータの観点からサポートしていきたい。
ファイナリストプレゼンテーションの様子は、以下よりオンデマンドでご視聴いただけます。
ブルームバーグESG投資コンテスト2022 プレゼンテーション オンデマンド
ファイナリスト8チームおよびレポート特別賞7チームによるレポート集は以下のリンクからダウンロードいただけます。
ブルームバーグESG投資コンテスト2022 レポート集
入賞チーム・参加校
ファイナリスト (チーム50音順)
- 東京工業大学「Inoue Lab」チーム
- 同志社大学「Gabenomikusu」チーム
- 同志社大学「Croissant」チーム
- 名古屋大学「The Fourth Harmony 」チーム
レポート特別賞(チーム50音順)
- 関西学院大学「Kameda Lab」チーム
- 立教大学「Souhei five」チーム
- 青山学院大学「Shirasu Seminar」チーム
- 同志社大学「Suzuchans」チーム
- 成蹊大学「TeamA」チーム
- 同志社大学「nuruiGohan」チーム
- 東京大学「HAMATAMAGO」チーム
参加校一覧(23校61チーム)(50音順)
- 青山学院大学
- 追手門学院大学
- 神奈川大学
- 関西学院大学
- 慶應義塾大学
- 国際基督教大学
- 昭和女子大学
- 成蹊大学
- 高崎経済大学
- 中央大学
- 東京大学
- 東京工業大学
- 東京都立大学
- 同志社大学
- 東洋大学
- 名古屋大学
- 広島大学
- 広島経済大学
- 法政大学
- 明治大学
- 立教大学
- 立命館アジア太平洋大学
- 早稲田大学