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世界的なESG(環境、社会、企業統治)投資の拡大を背景に、ブルームバーグでは、2021年3月5日、「ESG投資に、クオンツを」をテーマにBQuant ESGハッカソンを開催。今回、最も参加者の票を集めたチームに贈られるMost Popular APP賞は、日興アセットマネジメントチームが見事獲得されました。
日興AM「Carbon Pricing Impact on Portfolio App」
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受賞アプリ「Carbon Pricing Impact on Portfolio App」は、運用担当者、アナリスト、ESG担当者にとって使いやすく、企業価値の評価につながるカーボン影響の分析を目指したものです。開発をリードした運用企画部 笠岡 恒平氏ならびにESGスペシャリストである斎藤 梢氏、そして最高投資責任者としてハッカソンをご覧いただいた辻村 裕樹氏に、ハッカソン参加で見えたこと、ESG分析の課題や開発したいアプリ、今後のESG投資やテクノロジーの進展などについて、お話をうかがいました。フルバージョン(日本語)版を読むにはこちらから。
■ ひとつのプラットフォームで 作りたいものが形になっていく
― BQuantハッカソン4をどのように楽しまれましたか?
BQuantは、実際に触ってみるとBQuant独自のコードはほとんどなく、Python基礎知識+αでアプリ作成までできるため、実は学習コストがとても低い。また、一度覚えてしまうと、手厚いサポートや実務的なコードサンプルで、自分の作りたいものがどんどん形になっていくのでとても楽しく開発できました。ブルームバーグには豊富なESGデータがあり、BQuantからデータが画一的に取得でき、財務情報やマーケットのデータとの結合も容易です。分析からビジュアライゼーションまでひとつのプラットフォームでできる点で非常に使いやすかったです。
■ 運用担当が使うシステムと連携するインタラクティブなアプリ
― ユーザーが使いやすいアプリを目指されたということですが。
開発したプログラムや分析結果をどのように共有するかは悩みの種でした。BQuantはこれに対するソリューションのひとつだと思います。共有にあたってサーバーやPC環境を意識する必要がなく、Pythonで作成したアウトプットをインタラクティブなアプリとしてIT部門以外のユーザーにも簡単に共有できることは大変魅力です。今後もBQuantを大いに使っていきたいです。
BQuantは証券レベルのデータ取得だけではなく、AIM(注文管理ツール)やPORT(ポートフォリオ管理ツール)の口座情報との連携も可能なので、運用者が自身で管理するポートフォリオを選択し、ESGデータとひも付けて分析できるようにしました。例えば、カーボンコストのインパクトを自身のポートフォリオ情報とひも付けて、視覚的に確認できるようになっています。
■ 協働が良い刺激に
― 今後の機能拡張と、想定される効果については?
ESGデータが公表値か/アプリ生成の推計値かをより視覚的にわかるようにしたり、データ公表企業割合の可視化、個別銘柄のピア比較など、やりたいことは多いです。また、今回はESG担当者とチームで参加しましたが、普段業務であまり接点のないメンバーと協働することが刺激になりました。今後も、新しい機能のアイデアを社内のいろんなメンバーからもらいながらコラボレーションしてBQuantアプリを開発していきたいと考えています。
■ 比較可能なESGデータを量的に確保し、企業価値評価へつなげる
― ESG分析における課題と、今回のテーマを選んだ理由について教えてください。
第一歩として、統一された基準による比較可能なデータの量的な確保が課題です。企業のESGデータの開示は進んではいるものの、開示フォーマットが各社各様であることもデータ収集における課題のひとつ。ブルームバーグでは、豊富なデータ項目を任意のフォーマットで取得可能なため、今後も積極的に活用していきたいと考えています。また、ESG分析を銘柄選択のサポートにいかにつなげていけるかも重要な課題と考えています。
ハッカソンの題材としてカーボンを選んだのは、カーボンプライシング導入に向けた議論が進む中、財務インパクトを最も意識しやすいテーマのひとつだと考えたためです。今後も、ESGに関連するリスク・機会をどうしたら企業価値評価につなげていけるのか、試行錯誤を続けてまいります。
■ ESGデータの種類が豊富、MLのセミナーにも期待
― 弊社のESGデータセットを使用してみてのご感想をお聞かせください。
ハッカソンを通じて、ブルームバーグのESG関連のデータ種類の豊富さを認識することができました。今後もデータの質向上・量的な拡大に継続的に努めていかれるとのことで、大いに期待しております。また、データ量の確保には推計値を利用することもひとつの有効な手段と考えており、機械学習に関するセミナー開催など、ユーザーの勉強機会を提供してくださることにも期待しております。
■ BQuantの魅力はデータソースとの連携性、処理能力の高さ、豊かな表現性
― BQuantの可能性と今後作りたいアプリについて教えてください。
ESG情報だけでなく、財務データ、株価指標等、ブルームバーグターミナル内のさまざまなデータソースとの連携性、データ処理能力の高さ、グラフ化における豊かな表現性がBQuantの魅力だと思っています。今後は、個別企業ごとのカーボン分析、S(Social=社会)領域のアプリケーション開発などを行ってみたいです。
■ BQuantのさらなる展開を期待
― 今回のESGハッカソンをライブでご視聴いただきました。ぜひご感想を教えてください。
他社様の発表も拝見し、さまざまな切り口での取り組みに大変刺激を受けました。ブルームバーグ社の持つ豊富なデータをベースに、アイデア次第で新たな価値を創出できる可能性を見ました。社内でも、今回発表させていただいたESG分析アプリを改良し、運用の現場で生かしていく取り組みが始まっており、他の業務エリアにも展開されることを期待しています。
■ 今後、統計的裏付けを伴ったポジション管理や投資意思決定が進む
― ESG投資は今後、どのように変化していくでしょうか。
ESG領域における企業側の開示も進み、取り組みの数値化・可視化が進んでいます。データとして扱えるものが増えたことで、現状分析や将来予測の精度が向上しつつあり、BQuantやPythonなどを活用し、統計的裏付けを伴ったポジションの管理や投資意思決定が進んでいくものと見ています。
■ 多様性を取り込み、専門領域の違う者たちが相互に高めあう環境を
― 投資と今後のテクノロジーの発展やDXについてのビジョンを教えてください。
テクノロジーの発展に対してアンテナを高く張り、これを取り込み、運用管理や投資の意思決定にまで展開できる高いITスキルを持った人材が求められていくと考えています。そのためには、運用に直接携わる者がITスキルを高めることはもちろんですが、ITスキルの高い者に運用の現場を理解してもらうといった、相互コミュニケーションが必要だと考えています。多様性を取り込み、専門領域の違う者たちが相互に高めあう環境を大事にしていきたいと思います。
日興アセットマネジメントは、日本そしてアジアを代表する資産運用会社です。株式、債券、オルタナティブ、マルチアセットなど多様な資産クラスを対象とするアクティブ運用やETF(上場投資信託)を含むパッシブ運用など、革新的な投資ソリューションを提供しています。
60年に及ぶ実績を誇り、約30の国・地域から集まる人材を世界11カ国・地域に擁して、約200名*の運用プロフェッショナルが約29.4兆円の資産を**運用しています。グローバルな視点を活かし、お客様のニーズにお応えする様々な商品の開発を推進するとともに、優れた運用パフォーマンスの実現を常に追求しています。銀行などの金融機関、証券会社、生命保険・損害保険、ファイナンシャルアドバイザーなど、国内外の計400社超の販売ネットワークを通じ、個人投資家の皆様や年金基金や金融機関など世界中の機関投資家のお客様に対して幅広いサービスを提供しています。
詳しくは、日興アセットマネジメントのHPをご覧ください。
BQuantはPythonベースの定量分析プラットフォームで、ブルームバーグの豊富なデータを利用したスクリーニングや集計などの計算を高速で実行でき、プログラミング処理をかけることでより複雑な定量分析を可能にするツールです。また、独自のライブラリーを兼ね備えており、データのビジュアライゼーションや分析期間の変更を行う機能等を簡易なコーディングで実装することができ、従来WordやExcelをベースとしたリポートでは表現が難しかったインタラクティブな分析を可能とすることで、投資戦略に携わる資産運用者に、より適切な投資判断材料を提供できるプロダクトです。
BQuant ハッカソンについて
ブルームバーグでは、データとテクノロジーについて意見交換ができるコミュニティーを醸成し、資産運用を担う人材の育成に貢献するために、BQuantハッカソンシリーズを開催しております。今後の開催予定についての詳細は担当営業までお問い合わせください。