3人のリーダーが語る成功へのキャリアストーリーとマインドセット
ブルームバーグ・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク(BWBN)日本チャプターでは6月9日、「バイサイドリーダーが語る業界の今後と女性のキャリア開発」と題し、グローバルに展開する大手バイサイド企業でトップとして活躍されている2名のCEOをゲストに、3名のリーダーによるパネルディスカッションを開催しました。
パネリストは、日興アセットマネジメント株式会社代表取締役社長ステファニー・ドゥルーズ氏、アライアンス・バーンスタイン株式会社代表取締役社長 阪口 和子氏、およびブルームバーグL.P.日本統括責任者ノーマン・トゥエイボーム、そしてモデレーターはブルームバーグ・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク日本チャプターの鈴村 紀子です。
ディスカッションでは、業界をリードするトップとしての役割から、成功へのキャリアストーリー、ワークライフバランスにいたるまで、率直なお話をうかがうことができました。また各社で推進するD&Iイニシアチブも事例を交えて紹介されました。
※ブルームバーグ・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク(BWBN)については、記事の最後をご参照下さい。
説明責任を果たし、目に見える大きな課題から取り組む
女性活躍推進法施行後、バイサイドでも多くの企業が数値目標を掲げ、ジェンダー・ダイバーシティに計画的に取り組んでいます。女性活躍推進のためにリーダーとしてできることは何か、それぞれの考えをお聞きしました。
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に関して、トゥエイボームは、ジェンダーに限定するのではなく、すべてをインクルーシブに考えるべきだとした上で、トップが責任説明を果たし、コミットする姿勢が大切だと言います。また子育て中の社員が多数在籍し、情報交換できる社内コミュニティ「ブルームバーグ・ワーキング・ファミリー・コミュニティ(BWFC)」の取り組みを例にあげ、女性が戻ってきやすい職場環境づくりの重要性を指摘しました。
ドゥルーズ氏は、女性管理職を増やすにあたって課題となるのは、ミドル層が出産・育児でキャリアを中断してしまうことだと認識しています。女性管理職を増やすためには、出産・育児休暇明け後の女性が休暇前と同じかそれ以上のポジションで働けるようにしたり、より柔軟に勤務時間を選べる制度を導入するなど、目に見える大きな事から取り組んでいくことが重要だと述べました。
一方、阪口氏は、国内では数としてはまだ圧倒的に取得者の少ない男性の育児休暇に関して、「それが素晴らしいことだと全社員にわかるような形で認知する」のがCEOの役目ではないか、と問いかけました。「これは誰にでもできることだと思います」との主張に、会場でもうなずく姿が多く見られました。
投資する先は人材、そして信頼関係を築くこと
「コロナ禍でさまざまなチャレンジはあったものの、最大のアセットは人材」とトゥエイボームは言います。投資する先は人材であり、キャリア形成のために教育、チャンスを与えることが組織を成長させる鍵であるとし、「特にローカル・リーダーシップ育成は重要。事業を展開する地域でローカルの要望をとりいれていく」と述べました。
「CEOの仕事の7割はトラブルシューティング、残りの3割で才能を発掘することを楽しんでいる」というのは阪口氏です。機会があれば、なるべく多くのチャレンジを全員に与えるようにしており、「『何が得意なのかわからない』とか、『この人には無理だ』などと言われるかもしれませんが、では、未経験者であっても、恐れず信頼してチャンスを与えたことがあるか、ということを問いたいですね」
ドゥルーズ氏は、「現在の会社では7年半になりますが、長い時間をかけて、自分の努力をさまざまな部署につないで、丁寧にコネクションを作ってきました」と教えてくれました。「培ってきた信頼があるからこそ、入社当初に比べてとてもスムーズにビジネスできるようになっている、それがうれしいです」
ライフステージとキャリアにおける優先順位とは
つい先ごろ内閣府が発表した「男女共同参画白書」では、結婚や家族の在り方が多様化していることが改めて浮き彫りになりました。子供を育てながら、グローバル企業のトップとして活躍するパネリストの皆さんにはどのような葛藤や道のりがあったのでしょうか。「キャリアアップのためには何かを犠牲にしなければならないのではないか」という参加者からの質問に答えていただきました。
パネリストの3名は異口同音に「何ら『犠牲』にはしていない、『選択』の問題」だといいます。ドゥルーズ氏は、「キャリアや家族のために何かを諦めることがあったとしても、それは私の自主的な選択です。キャリアも子どもも、私にとっては絶対に必要であり、そこに迷いはありませんでした」自分で好きなことを選んでいるので、できないことがあっても気にしない、とも。「完璧な家事は目指さない、休暇は必ず子どもと一緒に時間を過ごせるときに取るーそれが私の選択であり、優先順位です」と非常に明快です。
仕事で帰りが遅くなっても、朝食は必ず家族と一緒に取るというトゥエイボームは、コミュニケーションを特に大切にしており、「コロナ前は学校やスポーツの行事があれば出席し、子どもたちとは常につながっている」といいます。「今は妻のディフェンスとしての力も大きい。ただ役割は必要に応じて交代するもので、うまく機能するにはコミュニケーションが重要。決して自然にそうなるわけではありません」
阪口氏は、優先順位は人生のステージにおいて変わってくるものだ指摘しました。「学校に行っている間は子どもが優先、しかし(キャリアを)犠牲にしたと思ったことはない」とし、「家族か、チームか、ビジネスか。人生は変化していくもので、子どもは永遠に子どものままではないし、今の状態が残りの人生を決定づけるわけではありません」と述べ、短期的な視野でマイナスに捉えるのではなく、5年、10年という長期のスパンで考えることの重要性を強調しました。
決して諦めず、チャレンジし続ける
最後に、今まさにキャリアを構築中の皆さんに向けてのアドバイスを聞きました。
何社かの資産運用会社でキャリアを築いてきた阪口氏は、「自分の場合は、幸運なことに新しいチャレンジが次々に見つかった。ただこれは誰にでも勧められる方法でもなく、まずは自分の上司にニーズを聞いたり、どのような経験が自分に必要なのかを尋ねてみるのがいいと思う」とアドバイス。一方、ドゥルーズ氏は、「自分にとっては、もうこれ以上先にいけない、というところまでは踏ん張るのが重要だった」とこれまでのキャリアパスを振り返りました。
トゥエイボームは、「ネットワーキングを大切に、アドバイスしてくれるメンターを見つけてください。時間をかけて人生の旅を楽しむこと。目的地と同じくらいプロセスも大事だからです」と述べ、また部署異動や変化に対してもオープンであってほしい、と付け加えました。
ドゥルーズ氏は、「語学はあなたを差別化する武器になる」と外国語を学ぶことを勧めるとともに、続けることの重要性を強調しました。「諦めないことです。私はどんなに大変でも決して止めませんでした」
また阪口氏も、「ハングリーであれ、そして学び続けること。小さくても大きくてもいい、失敗を恐れずチャレンジし続けること」と、キャリアを構築中の視聴者の皆さんに向けてエールを送りました。
ブルームバーグ・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク(BWBN)は、アセットマネジメント業界における女性の活躍支援と次世代リーダーの育成を目的とするコミュニティです。2018年にシンガポールで創立され、その後インド、日本、香港、オーストラリア/ニュージーランド、ブラジル、カリフォルニアへと拡大し、地域で最も影響力のあるバイサイドのリーダーの皆さまによって支えられています。
BWBNでは、世界の投資トレンドを分析するとともに、業界におけるインクルージョンを推進し、さらに活発なメンタリングを通して若い世代を育成し、バイサイドのキャリアにおける多様性を向上させるべく活動を続けています。
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BWBN日本チャプターでも、2020年9月の発足以来さまざまな機会を通じて啓発活動を続けています。皆さまのご意見やご希望にお応えできるようなイベントを今後も企画して参りますので、ぜひ下記リンクよりBWBNネットワークへご参加ください。バイサイドに所属する方であれば、性別、役職を問わずどなたでもご参加いただけます。ご質問やご要望はBWBN日本チャプター運営事務局(bwbnjp@bloomberg.net)までお気軽にお問い合わせください。