2019.03.08

3月8日、「日本における洋上風力拡大にむけて」と題し、世界風力エネルギー会議(GWEC自然エネルギー財団、ブルームバーグの共催によるワークショップが弊社東京オフィスにて開催されました。昨年、30年間の海域占用が可能となる洋上風力促進法の成立したことを受け、有望な再生可能エネルギーと評されながらもこれまで進まなかった日本の洋上風力開発の本格的な発展が期待されています。同分野で先行する欧州では、補助金なしの入札が開始されるなど、高コストと敬遠されていた洋上風力発電の本格稼働へ向けた取り組みを探りました。

本イベントでは、導入拡大の課題について、GWECの事務局長ベン・バックウェル氏、ブルームバーグNEFのデビッド・カンによる基調講演に続き、監督省庁である経済産業省、誘致に積極的な新潟県などの地方自治体関係者のほか、プロジェクトファイナンスや法務分野の専門家を交えたパネルディスカッションが行われ、転換点を迎えた洋上風力発電を日本で展開するにあたっての課題と対策を話し合いました。消費電力の4割以上を風力発電で調達するデンマークの専門家によるデータと事例に基づいた展望と具体的なアドバイスに、集まった参加者が大きくうなずく姿も見られました。

 
転換点を見据えて:欧州の知見をアジア市場へ

台頭する新エネルギー技術に関する独自のリサーチを展開するブルームバーグNEFのデビッド・カンは、欧州でのコスト低下の大きな要因は「補助金から入札への移行」とし、入札システムでバリューチェーン内の競争が促され、洋上風力技術のコスト競争力が高まったと分析。BNEFではまた、この欧州の経験曲線がアジア市場へ展開できると想定しており、洋上風力発電の長期コストはグローバルレベルでは低下していくとみています。発電量が3-4GW (BNEF推計)の転換点を迎えれば、高コスト曲線が低コスト曲線へ移行し、市場への道筋がクリアになる、しかし日本がこのコスト曲線に乗るためにはまず投資が必要だと述べました。

図:新規から成熟市場への移行(From new to established market)
出典:BNEF

 
求められる長期の視野と戦略の確立

続いてGWECのベン・バックウェル事務局長が各国の事例を挙げながら解説、高度の技術が要求される風力発電設備は、良質で安定した雇用が長期にわたって期待できると指摘しました。しかし、長期の展望が必要なことから、5年先、10年先ではなく、今動くことが非常に重要であると締めくくりました。

 
洋上風力発電は始まってまだ20年足らず

後半のパネルディスカッションでは、洋上風力の投資・開発・事業育成を進めていくにあたっての課題について、プロジェクトファイナンスや環境アセスメント等を含む実務面からのディスカッションが展開されました。また、GWEC風力大使ヘンリク・スティーズダル氏やデンマーク外務省のピーダー・ボー・ソーレンセン氏ら欧州の専門家が登壇し、1991年に始まった洋上風力発電は、まだ20年未満の比較的若い産業であることとともに、コストが大きく低下し、補助金なしの入札システムが可能となったことを指摘しました。後発とされるイギリスも目覚ましい躍進を遂げた例をあげ、日本を含む他国でも、市場からの引き合いが強ければ大きな成功を導くことが可能であるとする一方で、「そのためには合理的で予見可能な許認可制度が必須」と強調しました。

 
規模の経済からメリットを受けられる産業

参加者の多くが言及したように、長期で安定的な投資収益とキャッシュ・フローが期待でき、予見可能性が確立できれば、洋上風力は多くの投資家にとって魅力的な投資先となります。また、すでに成熟し自動化が進んでいる太陽光発電等と比べて高度の技術が要求される風力発電設備は、専門性の高い技術者を始めとする良質の雇用が期待できる、規模の経済からメリットを受けられる産業と言えます。経済産業省からの「しっかりと推進していきたい」とするコメントのように政府のバックアップ体制もあることで、今後さまざまなステークホルダーの参入が見込まれます。

ブルームバーグターミナルをご契約のお客さまは、BNEF<GO>と入力することで、BNEFの電力市場に関するプレミアムリサーチと分析にアクセスいただけます。このリサーチと分析では、政策やテクノロジー開発、サプライチェーン、国と企業のデータ、長期予測など、幅広いテーマを網羅しています。