ブルームバーグでは8月26日、日本取引所グループ(JPX)と共催で、コモディティ取引を網羅する総合イベント「コモディティフォーラム2020」を開催いたしました。8月初旬、金先物が史上最高値を更新するなど、世界的にコモディティ投資への関心が高まっています。主として機関投資家の皆さまを対象とした本イベントですが、総勢700名近くのお申し込みがあり、日本初の総合取引所への注目度をうかがわせるものとなりました。
なお、ブレークアウトセッションとして、ブルームバーグのペシャリストによるコモディティ関連解説セッションも5本ご用意いたしました。基調講演、パネルディスカッションを含むすべてのセッションをオンデマンドにて、資料とともご提供しております。ご視聴希望のかたは、こちらのリンクよりお申し込みください。
ワンストップで
7月27日、「幅広いデリバティブ商品をワンストップで提供」を目指し、東京商品取引所(JPX)から大阪取引所(OSE)に貴金属やゴム、農産物の取引が移管されたほか、清算機関も日本証券クリアリング機構(JSCC)に統合され、日本初の総合取引所が誕生しました。これにより、金融とコモディティのデリバティブ商品を証券会社が一元的に取り扱い、同じ口座から注文できるようになり、投資家の利便性と清算機関への信頼性が格段に向上することが見込まれています。
基調講演「コモディティ市場統合後の可能性」において、JPX取締役兼代表執行役グループ Co-COO兼OSE代表取締役社長 山道 裕己氏は、「新たな投資家の市場参入が促進され、流動性が向上するというポジティブなスパイラルが期待できる」と強調しました。
同氏はまた、「今後は総合取引所としてマーケット・メーカー制度や各種インセンティブの導入などを通じて、海外投資家を中心とした金融系フローの流入促進による市場流動性の抜本的な改善に取り組む」と述べたほか、2021年に予定されているインフラ刷新の際の新商品の拡充、新制度の導入にも意欲を示し、「世界に開かれた透明性の高い日本のコモディティ市場を確立させ、海外の成長市場とのシナジーを目指していく」と決意を表明しました。
と今後の展望
世界的な量的緩和策の影響で、低金利と株高が同時進行している昨今の特殊な市場環境において、リスクヘッジのための投資先として、ゴールドやコモディティ全般に市場参加者の注目が集まっています。続くパネルディスカッションでは業界有識者の皆さまに、「日本の商品市場と総合取引所のあり方」および「新型コロナ影響下における商品市場と今後の展望」について、率直に意見交換をしていただきました。
パネリスト:(社)日本貴金属マーケット協会代表理事 池水 雄一氏;アストマックス(株)代表取締役会長、アストマックス・トレーディング(株)代表取締役社長 牛嶋 英揚氏;(株)大阪取引所執行役員 多賀谷 彰氏;ブルームバーグ L.P. 先物トレーディング担当スペシャリスト西岡 智紀
通貨価値の低下とリスクヘッジとしてのコモディティ
「ゴールドやコモディティは、株式や債券との相関関係がほとんどない」と指摘するのは、ゴールド市場においてヘッジャー、投資家、流動性プロバイダーとして関わりが深い牛嶋氏です。牛嶋氏は、「相関関係が小さいものを組み合わせることでリスクは小さく、より安定したリターンを維持できる質の良いポートフォリオができる」と述べ、「経営者としても、ヘッジできるリスクをヘッジしないということは株主には受け入れられない」と続けました。
また、貴金属スペシャリストである池水氏は、ゴールドがドル建てベースでは9年ぶりの高値更新、そして円建てベースでは実に40年ぶりの史上最高値を更新したことに触れ、「金融緩和により、通貨を持っているだけでは価値が目減りしていく」とし、リスクの観点が全く違う商品に投資することの重要性を強調しました。
さらにコロナ後の傾向として、欧米投資資金の大量の流入により、金ETF残高が増加する一方で、これまで現物保有の中心だった中国やアジア、インドを抜き、米国への現物輸入が増大している」とし、短期マネーではない実需面での変化にも言及しました。
裁定取引機会の拡大
4月、ニューヨーク原油先物で一時マイナス40ドルという歴史的急落が起こり、市場関係者を驚かせました。こうしたコロナ禍で物流が滞ったために起きた通常では考えられないひずみは、ゴールドの世界でも起こっています。
池水氏は、先のロックダウンでスイスの金の精錬所での業務が2週間止まった結果、一時期Loco Londonスポット価格とCME COMEX(コメックス)の先物との乖離幅が70ドルまで拡大したことを上げ、「市場間の裁定取引の機会が増大しており、トレーダーだったらできるだけ裁定取引を組みたい」局面が続いたと指摘しました。さらに本来は一物一価である金のこうした価格差を利用した市場間の取引は、「Loco London vs CMEだけでなく、Loco London vs OSEや COMEX vs OSEにも今後、プロのトレーダーが参入してくる」と続けました。
今後の取り組み:課題は流動性の向上
今後の総合取引所へのあり方についてのディスカッションにおいて、牛嶋氏は「ヘッジャーも考慮に入れたルール作りをお願いしたい」と要請。OSE執行役員である多賀谷氏は、「流動性の抜本的な改善にあたり、さまざまな投資主体や、利用主体の存在が価格形成の健全性や流動性を向上させる」として、プライマリーマーケットメーカー(PPM)やリキディティープロバイダー(LP)へのインセンティブプログラムを紹介しました。(詳細につきましては、イベント配布資料または大阪証券取引所へご照会ください)
また、「現物取引とデリバティブの損益通算といった税制面での制度改革についても行政とともに取り組んでいく」と意欲を示しました。さらに国内では市場化が始まったばかりの電力の取引についても、今後同様に整えていきたいと述べ、「日本における総合取引所が今後、アジア市場全体の発展につながっていけるようにしたい」と抱負を語りました。
トレードブック
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弊社先物トレーディング担当スペシャリストの西岡からは、透明性の確保やリスクテイカーの投資家の利便性アップにつながるブルームバーグターミナルの先物・オプション・トレードブック取引機能をご紹介させていただきました。
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西岡は「レバレッジを設定しながら投資家を保護し、シカゴの姉妹都市でもある大阪が、アジアのデリバティブならOSEと呼ばれるように願っています」と結びました。