バイサイドの共通課題と今後の展望について多角的に議論
ブルームバーグでは、バイサイドのコミュニティーに有用な情報を提供するとともに、ビジネスの発展を支援するため「ブルームバーグ・バイサイド・フォーラム」を世界各地で開催しています。バイサイド・フォーラム東京2023のテーマは「日本のトランスフォーメーションとバイサイドの創る未来」です。今年も産官学金から著名なゲストをお迎えし、新しい資本主義の加速、AIを含めたテクノロジーの活用、グリーン戦略などを柱に、バイサイドの共通課題と今後の展望について多角的な観点から議論を深めました。
1日目の午前の部では、GPIF理事長の宮園雅敬氏による基調講演、ブルームバーグ チーフ・テクノロジー・オフィサーのショーン・エドワーズによる講演のほか、ネットゼロ達成に向けた日本の役割や、日本企業の変革を推進するリーダーシップをテーマにパネルディスカッションが行われました。続いてブルームバーグESG投資コンテストのファイナリスト2チームによる決勝大会を実施し、優勝チームが決定しました。
また、午後の部では、恒例のBQuantハッカソンが開催され、バイサイドの金融機関7社による投資アプリが披露され、白熱したプレゼン大会となりました。
翌2日目はブルームバーグのバイサイドのプロダクトマネジャーが、マーケットのトレンドや今後の見通し、それらを踏まえた最新の投資テクノロジーや製品開発のロードマップについて紹介しました。
当日の様子は以下からオンデマンドビデオでご覧いただけます。
バイサイドフォーラム東京2023 Day 1 午前の部オンデマンド: bloomberglp.com/BSFTokyo23Day1
バイサイドフォーラム東京2023 Day 1 ハッカソンオンデマンド: bloomberglp.com/BSFTokyo23Hackathon
バイサイドフォーラム東京2023 Day 2 午後の部オンデマンド: bloomberglp.com/BSFTokyo23Day2
Day 1 午前の部 基調講演:
宮園 雅敬 氏 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 理事長 「GPIFの現在~運用高度化やESG投資・スチュワードシップ活動の観点から~」
基調講演では、GPIF理事長の宮園氏が、日本の公的年金運用について基本ポートフォリオの頑健性を評価したうえで、長期安定的な運用を実現するために、さらなる運用の高度化に取り組む必要があると強調しました。
能動的なポートフォリオ管理に向けて、GPIFでは運用を委託するファンドの選定力強化を図っており、株式のアクティブ運用においては2022年度から最新のデータサイエンスに基づく定量評価を実施しています。企業価値の向上が、ひいては長期的な投資収益の拡大につながるという観点から、投資先企業との間でESGを考慮したエンゲージメントの促進にも注力していくと語りました。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 理事長 宮園 雅敬 氏
Day 1 午前の部 パネルディスカッション1
日本は地理的な制約などから再生エネルギーの普及が諸外国に比べて遅れており、脱炭素には企業のトランジションが不可欠です。トランジション・ファイナンスの重要性を世界に広く認識してもらうために、金融機関の脱炭素への貢献度を示す指標の開示方法を模索するなど、官民をあげてさまざまな施策が進められています。
パネルディスカッション1では、2050年のネットゼロ達成に向けて期待される日本の金融機関の役割と課題を中心に議論いただきました。パネリストは、第一生命保険株式会社 取締役会長の稲垣精二氏、金融庁 総合政策局 総合政策課長の高田英樹氏、モデレーターは三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 フェロー(サステナビリティ)の吉高まり氏です。
冒頭、吉高氏は、23年9月に米国財務省が発表した「ネットゼロ金融と投資のための原則」において、金融機関のすべての投融資とアドバイザー・サービスに、ネットゼロへ向けたKPIを設定するよう求めたことを紹介。 稲垣氏は、「日本企業にとって不可欠なトランジションへのファイナンスこそが金融機関のミッション」と語り、その過程で一時的にファイナンスド・エミッションが増加しても直ちに問題視されるべきではないと述べました。さらに、トランジションの実施が最終的にカーボン・ニュートラルに至る道筋をクレディブルに示すことの重要性を強調しました。
一方、高田氏は、官民が連携して取り組む日本の強みを指摘したうえで、「ファイナンスド・エミッション以外にも複数の指標を組み合わせることで、より包括的に金融機関の取り組みをアピールできる」と、今後のアプローチに期待を寄せました。
Day 1 午前の部
講演:ショーン・エドワーズ ブルームバーグCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)~BQLをデータ・アナリティクスに活用するサービスをリリース予定~
弊社CTOのエドワーズがニューヨークから駆け付け、コンピューターの演算処理能力が飛躍的に高まったことにより、ChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)が、汎用性や使いやすさなどの点で、AIモデルの新しい地平を切り拓いていくと語りました。
これはブルームバーグにとって、ソフト開発やシステム開発のあり方がこれまでとは一変することを意味します。数年前から開発中のBloombergGPTについて機械学習の評価を行ったところ、金融分野におけるパフォーマンスは他の一般モデルを大幅に上回り、同時に汎用的なタスクでも十分なパフォーマンスを確保できることが分かりました。
今後は自然言語処理にてAPIのデータ取得の関数を作成するサービスを英語版と日本語版のリリースを予定しており、リサーチ・アナリスト用に決算発表のトランスクリプトをバイサイドアナリストにとって重要な要点を絞って要約・分析するツールも開発中です。
ブルームバーグCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)ショーン・エドワーズ
Day 1 午前の部 パネルディスカッション2
パネルディスカッション2では、バイサイドおよび日本企業の変革に向けた課題と、そこで求められるリーダーシップについて討論いただきました。パネリストは、一般社団法人 日本投資顧問業協会 会長の大場昭義氏、そして日本経済団体連合会 審議員会副議長 ダイバーシティ推進委員長を務める株式会社資生堂 代表取締役 会長CEOの魚谷雅彦氏、モデレーターはベイビュー・アセット・マネジメント株式会社 代表取締役副社長 兼COOの下城理重子氏です。
バイサイドおよび日本企業の変革に向け、変革プロセスを形骸化させることなく、異なる意見を尊重できる組織風土の醸成がリーダーに求められています。大場氏は、変革への意識を組織に根付かせるには、自らのミッションを改めて明確化し、社会に向けて宣言することが必要として、「資産運用業宣言2020」を改めて紹介しました。
ブルームバーグ・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク(BWBN)の創立エグゼクティブメンバーを務める下城氏が「バイサイドの多様性をもう一歩進めるために必要なこと」について見解を求めたところ、大場氏は、「Respect for people with different opinion」という英語を紹介し、「異なる意見を尊重できる組織風土をつくり、自らのミッションに向かっていくのがリーダーシップ」と述べ、日本は教育を含めて、社会全体がそうした取り組みを地道に続けていくことが大切と語りました。
資生堂は2014年、社外取締役の議論を通じて、外部から第16代社長として魚谷氏を招聘しました。現在は会長CEOを務める魚谷氏は、「多様なアイデアを引き出せる環境こそが日本の変革を左右する重要な要素である」と指摘しました。資生堂は、社員約4万人のうち日本人と外国人がおおよそ半々で、米欧の現地法人トップには現地の人材を充てているということです。
※当セッションにつきましてはオンデマンド動画のご用意はございません。
Day 1 午前の部
学生ESG投資コンテストファイナル大会
ブルームバーグでは、経済・金融の最前線における学びや実体験を、未来を担う学生の皆様に幅広く提供したいという思いから、2017年に投資コンテストを初開催し、本年で7回目を迎えました。厳正な審査と会場投票の結果、優勝チームはWell-beingに基づきイノベーション創出企業へ投資するファンドを構築した同志社大学のチーム「まな柴」、準優勝は人的資本にフォーカスしたファンドを構築した東京工業大学「Inoue Lab」チームと決定しました。セミファイナルの様子および学生によるリポート集はこちらのリンクからご覧いただけます。
優勝した同志社大学のチーム「まな柴」
Day 1 午後の部
第7回BQuant ハッカソン
アルファの追求がますます求められる時代、開発ができる専門人材の育成や持続可能な投資環境の構築は、バイサイド企業にとっての最優先の課題となっています。今回は、ハッカソン初登壇の企業から表彰経験を持つ企業まで、国内バイサイド7社が約3ヶ月かけて開発した自社の投資運用アプリを披露。各社が開発に使用したクラウドベースのBQuant エンタープライズには、自然言語処理や分散コンピューティング環境等の最新テクノロジーを搭載しており、データ分析の精度や処理スピードを格段に向上させることができます。発表に先立ち、 来日中のCTO室開発メンバーが、BQuantエンタープライズのデモンストレーションを行い、日中データとテキストデータを組み合わせた新しい分析ツールを紹介しました。
審査にあたったのは、東京都立大学院 経営学研究科教授 内山 朋規 氏、東京海上ホールディングス株式会社 常務執行役員 グループ資産運用総括 遠藤 良成 氏、ブルームバーグ チーフ テクノロジー オフィサー ショーン・ エドワーズです。
BQuantでより身近になった金融アプリ開発の最前線、全プレゼンテーションはこちらから本編をご覧ください。
第7回 BQuantハッカソン (参加企業 発表順)
- 三菱UFJアセットマネジメント株式会社 チーム
- 第一生命保険株式会社 チーム
- ニッセイアセットマネジメント株式会社 チーム
- 三菱UFJ信託銀行株式会社 チーム
- 大和アセットマネジメント株式会社 チーム
- 明治安田生命保険相互会社 チーム
- 株式会社みずほ銀行 チーム
Day 2 午後の部
「イノベーションとテクノロジー最前線」
Bloomberg Buy-Side Forum東京2023:「日本のトランスフォーメーションとバイサイドの創る未来」2日目は「イノベーションとテクノロジー最前線」をテーマに、ブルームバーグのバイサイドのプロダクトマネジャーが講演を行い、マーケットのトレンドや今後の見通し、それらを踏まえた最新の投資テクノロジーや製品開発のロードマップについて語りました。
詳細はこちらから本編をご覧ください。
講演1:「ブルームバーグ バイサイド・ソリューションの目指す姿」
~自動化によるオーダートレード・ポートフォリオの構築にも注力~
新NISAによる個人の投資インセンティブ向上、機関投資家の責任投資ニーズ拡大など、日本のバイサイドにおける変化を踏まえて、お客様に提供するソリューションの現状と将来展望をお伝えしました。今後は引き続きアセットのカバレッジに投資を行うとともに、お客様のテクノロジーとの接続・統合を進め、自動化によるオーダートレード・ポートフォリオの構築にも注力し、そこに最新のAIやデータサイエンスを組み込んでいく予定です。
講演2:「BQuant エンタープライズ:NLPとイントラデイ・データ」
~イントラデイとテキストのアナリティクスを組み合わせたNLP分析ツール~
最新のBQuantプロダクトや2024年以降の計画についてご紹介しました。あるニュースがマーケットに及ぼす影響の広がり具合を見極めたいというニーズに対応するため、イントラデイ・アナリティクスとテキスト・アナリティクスを組み合わせたNLP分析ツールを開発。24年以降はArcticDBを BQuant エンタープライズに格納することや、Add-On パッケージとして新しいEquity Signal Labのリリースなどを予定しています。
講演3:「IBチャットとオートメーション」
~コミュニケーションから重要な情報を抽出するIB API~
LLMの具体的な活用分野として、とくに「コミュニケーション」に注目。ビジネスプロセスを自動化するとともに情報を濃縮して、ブローカーなどとのコミュニケーションから重要な情報を抽出する方法について説明しました。IB APIというブルームバーグ・チャット・インフラストラクチャーを活用すれば、APIがチャットやニュース、リサーチなどを自動的に捕捉することにより、ワークフローの効率化が実現します。
講演4:「ポートフォリオ管理高度化のロードマップ」
~効率性・拡張性の向上、カスタム化を実現するワークスペースとリスクモデル~
オペレーションの効率性向上や、拡張性の高いイノベーション創出といったバイサイドのニーズに対するソリューションを提示しました。インタラクティブで拡張性が高く、カスタム化ができるDecision Supportのワークスペースや、マルチアセットクラス・リスク・ファクターモデル(MAC3)、ハイブリッド・パフォーマンス・アトリビューション(MAC HPA)などの紹介がありました。
講演5:「クラウド環境で実現するデータ管理・活用の高度化」
~ブルームバーグ独自のクラウド環境を提供するホスティング・サービス~
近年では日本のバイサイドにおいて、データ管理のクラウドへの移行を検討するケースが増えています。ブルームバーグ独自のクラウド環境を提供する「データライセンス・プラス(DL+)」というクラウドベースのホスティング・サービスを紹介しました。ブルームバーグのデータとMSCIなど他社のESGデータを合わせてSFTPやAPI経由で配信したり、Snowflake環境へ配信することも可能になっています。
講演6:「ETF市場から見る最新テーマとインデックスプロダクト」
~利益率の安定性に着目した新しいタイプの株価指数を開発~
バイサイドの投資ニーズが多様化するなかで、ETFや各種インデックスも急速に進化を遂げています。ETFとインデックスの最新トレンドを紹介しました。ブルームバーグでは独自リサーチやデータに基づき従来にない種類の株価指数を開発しており、最近では企業の利益率の安定性に着目した「ブルームバーグ米国プライシングパワー指数」が米国ETFのベンチマークとして採用されました。また、リアルタイムで更新する社債インデックスの算出も始めています。
当日の様子は以下からオンデマンドでご覧いただけます。
バイサイドフォーラム東京2023 Day 1 午前の部オンデマンド: bloomberglp.com/BSFTokyo23Day1
バイサイドフォーラム東京2023 Day 1 ハッカソンオンデマンド: bloomberglp.com/BSFTokyo23Hackathon
バイサイドフォーラム東京2023 Day 2 午後の部オンデマンド: bloomberglp.com/BSFTokyo23Day2