ブルームバーグでは7月28日、初のバーチャルハッカソンとして、「第3回BQuantハッカソン」を開催しました。コロナ対策のため、これまで対面で行って参りましたトレーニング、アプリ開発個別サポートから4時間近くにわたるイベント本番まで、すべてがオンラインという初めての試みとなりました。保険会社3社様に加えて今年初参加のアセットマネジメント会社3社様合わせて6社6チーム13名の参加者の皆様に、各社多くの同僚の方々にリモートで見守られるなか、数カ月かけて独自に開発したプログラムをプレゼンテーションしていただきました。
機械学習を駆使した、美しいユーザー目線のアプリ
本番では、今回初めてのBQuantに触れたという方から前回のMVP賞受賞者まで、素晴らしいアイデアが次々と披露されました。機械学習の課題であるブラックボックス化の問題解決をはかったアプリやクラスタリングをふんだんに使ったオリジナリティのあるアプリまで、ビジュアルも美しいばかりでなく、難しいコードを組んでいながら、ユーザーに使いやすいような工夫で仕上げられたものが目立ちました。参加者からも「高度な機械学習を用いたアプリは特に印象に残りました」「皆様の力の入れように驚きましたし、悔しい思いです。大変良い機会でした」としたコメントが寄せられました。
また、アプリ開発サポートにおいては、「オンラインで済ませられて移動時間がない分、開発サポートセッションの回数が多くとれた」「終業後でも、ロンドン時間のサポート担当者とやりとりしながら取り組めた」等、コロナ禍ではありますが、視点が変わったからこそ見えてきたポジティブな側面を評価していただけたようです。今回のハッカソンはスタート地点。今後アップグレードされる場合においても、チーム全力で喜んでサポートさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。
注目を集める機械学習のこれから
終了後の懇親会セッションでは、参加者間での質疑応答やディスカッションの時間を設けさせていただきました。話題の中心となったのはアプリの多くに「散りばめられていた」機械学習およびデータセットです。特に前者については、「機械学習が実務で使い始められているということを改めて感じました」「ブラックボックス化や短期的にしか使えないといった課題があり、具体的に何が問題になるのか研究もかねてやっています」「中長期的に役立つようなアプリでもあると感じられたのですが、中長期的な予想についてのご意見を伺えますか?」「たくさんのモデルでいろいろな局面で加重平均だしてどのモデルがいいのか出していらっしゃいましたが、コロナの前後など、局面、局面でモデルの加重が変わっていくと思うのですが、コードが気になりました」等、皆さま初対面ながら開発者ならではの突っ込んだやりとりが続きました。
続編は、最近立ち上がったハッカソン参加者で作るコミュニティ(下記参照)において今後も引き継がれていくものと思われます。
ハッカソンコミュニティの誕生
BQuantハッカソンは、BQuantで各社独自のアプリケーションを作成し、アイデアや開発力を競い合うもので、「資産運用の課題解決に向けイノベーションを起こす」ことを目指しています。この取り組みの延長として、このたび、Bloomberg APIユーザーの皆さまが意見交換できるコミュニティBloomberg API Geeksが誕生しました。クローズドではありますが、ブルームバーグのExcel API(BDP/BDH/BQL formula)などAPIシステムや、BQLデータを活用するBQNTプラットフォームをご利用の方ならどなたでもご参加いただけます。メンバー様限定のイベントや新しいテンプレートなどをご紹介するほか、ネットワーキングの場としてもご活用いただけます。複雑なEXCELファイルやPythonコードを駆使して、ワクワク感を共有したいAPIGeeksの皆さまを歓迎いたします。参加ご希望の方は担当:稲葉(rinaba2@bloomberg.net)までお知らせください。
APAC BQuant Hackathon
日本発のBQuantハッカソンは、次の試みとして、アジア大会を企画中です。アジア太平洋地域(APAC)にもイノベーションを起こすことができるのではないかと、BQuantチーム一同、たいへん楽しみしております。ぜひ奮ってご参加ください。
今回も皆さまのご尽力とご協力のもと、創意工夫に満ち、使い勝手も考慮した一目でわかるような素晴らしいアプリ開発の成果を共有できた貴重なイベントとなりました。運営一同深く感謝申し上げます。各賞受賞者、BQuantチームコメント、アンケートに寄せられたご感想等につきましては以下をご覧ください。
Most Popular App賞:
日興アセットマネジメントチーム
インベストメント・テクノロジー運用部 油木 正徳様
アプリタイトル 「銘柄別ファクター分析・売買推奨モデル」
日興アセットマネジメント・パッシブ運用チームが、初参加ながら、参加者全員の投票で選ぶMost Popular Appを受賞の快挙に輝きました。油木氏は「ESG要素とコモンファクターを混ぜ、学習・情報の視認性に対する工夫しました。BQNT/Python初心者ですが、面白いと思っていただけるアプリを目指して取り組みました」とコメント。
<BQuantチームより>かなり時間をかけて、機械学習でアプリを作る際の「ファクターモデルの内部の計算や情報の詳細がわかりにくい」という重要な課題をみごとにクリア、可視化されているので、モデルが使えるか否かという判断をユーザー側が下せるようにしていることが素晴らしいです。BQLやBQuant、ブルームバーグのデータのそれぞれの長所をフルに活用して複雑なコードが組まれていますが、わかりやすい表現かつユーザー目線で作られた完成度の高いアプリです。
BQuant Mastermind賞:
三井住友トラスト・アセットマネジメントチーム
アクティブ運用部 柿島 啓暢様
アプリタイトル「個別銘柄クラスタリング」
いかにBQuantの特性を活かして作られているか、またポートフォリオ機能や、カスタムデータとさまざまなブルームバーグの機能を使いこなされているかという観点で選出されるBQuant Mastermindを受賞したのは、三井住友トラストチーム・アセットマネジメントチーム アクティブ運用部 柿島氏です。「様々なデータの比較ができること、データの見やすさ」に留意したアプリを開発されました。
<BQuantチームより>機械学習などを使っていく際に最も重要な「学習させるときにデータのセットにバイアスがないように整理する」、「正しいパラメータの設定」の2つがきちんと行われていること、さらにビジュアルがわかりやすく美しいだけでなく、各銘柄を見たり、ポートフォリオ機能とも連携、実際に各社が差別化をはかっているところでユニークなファクターで業務につなげていくところが素晴らしく感動しました。
Key Quantributer賞:
日本生命チーム
金融投資部 大城 慎太郎様
アプリタイトル「企業業績予想推移」
本イベントをさまざまな角度から盛り上げていただいた方に送られるKey Quantributerに選ばれたのは、日本生命 金融投資部チーム 大城氏です。イベント中にもたくさんの質問を寄せていただいたこと、プレゼンのビデオ録画のご提出もいちばん早く、初めてのご参加ながら、非常に検討していただいたということで受賞されました。「初歩的な構成ですが、実務での使い勝手を重視し、コンセンサスEPSの推移を一目で確認・銘柄レベルまですぐ確認できるように工夫を施しました」とのコメントです。
<BQuantチームより>Pythonに慣れていらっしゃる方で、BQLとBQuantの良さをふんだんに使用し、BQLのオプションの設定を上手に使っていただきました。ビジュアルも本当に美しく、BQuantのデモに使わせていただきたいくらいです。
今回も大変甲乙つけがたい接戦となりました。惜しくも受賞とはなりませんでしたが、アプリ開発に尽力いただいた他チーム各社(五十音順)のアプリ名とBQuantチームコメントの講評は以下をご覧ください。
- 住友生命チーム 『Climate Change Risk Monitor』
<BQuantチームより>ファクターが増えたときにプログラム自体は触らなくても機能が拡張していくという柔軟性を実現。また今春バージョンアップしたばかりの機能をすぐに取り入れられて、データグリッドがカラフルになっていました。 - 大和アセットマネジメントチーム 『Correlation App』
<BQuantチームより>クラスタリングといったエクセルでは難しい手法を、効率的なパイソンのコードを使って上手に書かれていて、さらにエラーが起こらないような計算を工夫されていたところがす ばらしいです。 - 明治安田生命チーム 『機械学習による株価予測』
<BQuantチームより>BQuantを使ってさまざまなモデルの有効性などを何度も何度も繰り返し計算し、最終的にいくつかのモデルのなかから最適なものを見つけ出すいう、アイデアジェネレーションにBQuantを活用していただいた非常に良い例です。
最後に、参加の皆さまからのご感想をいくつかご紹介します。
- 「Bloombergデータの画期的な取得方法が理解できて、今後のアイデアの幅が広がったのと、Pythonの使い方が身につきました」
- 「色々とサポートいただいたおかげで、参加前よりもBQuantやPythonへの理解が深まりました。また、他の参加者の方の作成されたアプリも創意工夫に富んでおり、非常に参考になりました」
- 「BQuant、Python、Jupyter notebookの知見を深めることができ、非常に有用なものでした」
- 「機械学習によるモデル分析などは、今回私たちのアプリケーションでは組み込めなかった部分ですので、今後知見を深めていきたいと考えております」
- 「クラスタリングがいろいろなアプリで使われていることがわかったので、自分でも試してみたいです」