10月27日、ブルームバーグでは、APAC バイサイドフォーラム第2日目のイベントとして、第5回BQuantハッカソンを開催しました。BQuantハッカソンとは、バイサイド各企業でチームを結成し、ブルームバーグのPython開発ツールであるBQuantを使ってデータ分析機能を開発、発表していただくものです。拡大するESG投資を背景に、今回のテーマも「ESG」です。アセットマネジメント会社4社および生命保険会社4社で総勢28名の皆さまにご参加いただきました。パイソンもプログラミングも初めてという参加者も多い中、各社のESG担当者と開発担当者がタッグを組み、独自のアプリケーションを2ヶ月かけて開発。新しいESG投資のありかたや今後のインテグレーションやエンゲージメント、データ活用の可能性についてあらためて考えるイベントとなりました。
厳正な審査の結果、BQuant Mastermind賞は日興アセットマネジメント株式会社チーム、BQuant Most Popular App およびBQuant Quantributor 賞は東京海上日動火災保険株式会社チーム、BQuant Quantributor 賞は三菱UFJ 国際投信株式会社チームがそれぞれ受賞されました。
ダイバーシティ、チームビルディング、IT人材
ハッカソンには、チームビルディングやIT人材の育成という側面もあります。参加者からは「自分だけでは思いつかなかったアイデアや知見、工夫を持ち寄ってアプリが完成し、ダイバーシティがなぜ重要かという本質的なものを感じた」とのコメントが寄せられています。また、「4名のうち3名が女性かつコーディング初心者」というメンバー構成で参加された東京海上日動火災保険チームは、ダイバーシティやIT人材の育成という面からも注目を集めました。
なお、本イベントはAPACバイサイドフォーラム2021Day2プログラムとして、以下のリンクより2021年12月31日までご視聴いただけます。
ESG !dea Craft:ユーザーの自由なアイデアを可視化
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アプリ上で統計や機械学習を動かし高度な分析結果を可視化できる自由度の高い分析ツール
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サプライチェーンデータも分析に盛り込み、スコープ3を見据えたGHG排出量の分析を実現
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ESG要因のバリュエーションで信頼度に注目、ベイズモデルを採用
自由度が高くインタラクティブ:
ESG情報の一元管理および株価との相関の把握を目指した日興アセットマネジメント株式会社チーム。最終的には(1)選択の自由度が高く(2)データカバレッジを可視化でき(3)企業ごと、ESG要因ごとに、株価に対するプレミアム/ディスカウント状況を可視化し、企業の開示状況をベースとした「信頼度」をモデル価格とともに提示し(4)ファクタースコアの時系列推移を可視化し(5)企業同士の比較ができるインタラクティブなアプリとして完成しました。
ブルームバーグGHG排出量データを活用、サプライチェーン全体で排出量を分析:
特に注目を集めたのが、サプライチェーンまで踏み込んだGHG排出量の測定です。潜在的GHG排出量の推定および可視化に、ブルームバーグのサプライチェーンデータを活用。サプライチェーンは非常に膨大ですが、上位何%までを対象にするかを選ぶことができ、ボタン1つでネットワーク図を作図します。
MARINE: MAchine learning and ReportINg of ESG
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機械学習を駆使して、個社のESG分析を掘り下げた包括的なエンゲージメント支援ツール
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BQuant Enterpriseを日本で初めて導入、今後もさらなる拡張をご検討
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コーディング初心者とは信じがたいハイレベルなアプリ
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チャートデザインや掲示板機能などが新鮮さが魅力
包括的なエンゲージメント支援ツール
エンゲージメントによる投資先企業の脱炭素化・サステナビリティの推進のため、機械学習を利用して、ブルームバーグにある大量の情報を活用したアプリを考案。重点的に分析すべき指標の把握と情報収集に過大なロードがかかることから、アプリの機能を①MLによる重要度の分析と②ESGレポーティングの2つに絞り、包括的なエンゲージメント支援ツールを作成されました。エンゲージメントに関する情報が網羅的に出力できるアプリとなっています。
機械学習を駆使して重要項目を選定
企業の将来業績に影響の大きい指標を抽出できるのが重要度分析機能です。MDIに基づき指標の重要度をスコアリングし☆の数で表します。また、各指標が業績悪化・改善のどちら向きに影響するかをSharpley値によりチャート化して表示します。
ESG Intelligence Engine: 社債ESG分析の総合プラットフォーム
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社債ESGの総合的な分析ができるプラットフォーム
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ブルームバーグ債券指数を使用、高度なコーディング
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PORTと連動、自社ファンドのデータを分析に組み込み、今後は自動でリポート出力まで検討
社債ESG総合分析プラットフォーム: PORT、企業、市場の分析をワンストップで
クレジットアナリストやファンド・マネジャー向けのアプリケーションとして、社債についてESGの総合的な分析ができるプラットフォームを作成。ねらいは、アナリストのESG分析の負荷の削減とファンド・マネジャーのPORTにおけるESGリスクへの理解の促進です。アプリの特徴は、「膨大なESGフィールド項目への高い探索性能」「開示のばらつきに対応するためのフィールド項目への分析ツールキット」「非財務データの多様なデータタイプに応じた分析と可視化」の3点をあげています。
Portfolio/Company/ESG Bonds/Fieldsの4つのタブで構成
PORT、企業、市場の分析をワンストップで実現し、土台にESGデータフィールドの分析を据えたユーザーフレンドリーな仕様。パイソン自体を今年から本格的に始めたメンバーが中心とは思えない高度なコーディングが行われている点が評価されました。今回作成された非常に複雑なアプリの構成を支えるため、大変細やかに対応されています。
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あいおいニッセイ同和損害保険株式会社チーム:Selection of Investment Targets through ESG Analysis and Portfolio Optimization
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インベスコ・アセット・マネジメント株式会社チーム:ESGスコアダッシュボード
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住友生命保険相互会社チーム:ポートフォリオのGHG排出量を将来にわたって分析
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第一生命保険株式会社チーム:ESG要素を加味した社債フェアバリュー推計モデル
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明治安田アセットマネジメント株式会社チーム:ESGファクターの社債スプレッドへの影響を分析
大量のESGデータ分析から見えてくるもの
今回初めて参加させていただきましたが、どの会社のアプリも大変興味深く面白く拝見いたしました。特に、ESG の要素を大量なデータとして分析をしていくことで今まで見えていなかったことが見えてくるというのは非常に重要な示唆を与えたと思います。例えばフェアバリューに対してESG の要素が一定程度に影響していることが分かったというのは実は理論上も興味深い結果であり、ここから新しい運用の理論の可能性も見えてくるのではないでしょうか。
一方で、このようなアプリを投資という範疇にとどめず、ESGそのものの改善あるいは社会のサステナビリティをより高めていくところに活用していただければと願っております。ここで得られたアプリおよびデータを、常に現場の運用の皆さまと共有していただき、よりサステナブルな社会が実現できるように、これからもご尽力いただくことを期待いたします。(高崎経済大学学長 水口 剛 氏・談)
金融における生産性を格段に向上させるプラットフォーム
どのチームも実務に直結した実用的なアプリを開発され、大変素晴らしい発表になりました。AIを使って何かやろうするときに「とりあえずディープラーニングに入れてしまう」というような、やみくもに複雑なモデルを使うのではなく、特徴量の重要度分析などを取り入れつつ、説明可能なAI、ブラックボックスにならない機械学習モデルを試行されていました。今後AIは、資産運用実務にますます取り入れられて行くことが期待される中、金融知識をベースとしたAI活用としてお手本になるアプローチを見せていただきました。
また今回は、PythonおよびPythonベースのBQuantプラットフォームの可能性を感じました。プログラミング言語の中でもラーニングカーブが立ち上がりやすいPython をベースとし、 ESG 含む金融データを取り扱いやすいBQuantは、金融におけるデータ活用のアプリ開発の生産性を格段に向上させるプラットフォームだと思います。参加チームの皆さまの中には、Pythonが初めてという方も多かったようですが、本業の傍ら短い期間で技術を習得され、このような素晴らしい成果物を完成されたことがそれを物語っていると思います。(ニッセイアセットマネジメント株式会社 ソリューション・リサーチ・ヘッド 鹿子木 亨紀 氏・談)
データ分析にスピードと拡張性を
BQuantとは、洗練されたデータ分析を手早く行い、簡単に社内共有できるバイサイドのお客さま向けのアプリです。コンピュータ言語であるPythonを使用したデータ分析ツールで、ポートフォリオ分析機能PORT<GO>、オーダーマネジメントシステムAIM<GO>、自社リサーチ管理システムRMS<GO>等さまざまなブルームバーグの端末機能と連携、組み合わせて利用することが可能となっています。
BQuantエンタープライズは金融市場のクオンツアナリストやデータサイエンティスト向けにデザインされた、パブリッククラウドおよびプライベートクラウドベースの分析プラットフォームです。カスタマイズ可能なターンキーソリューションであるBQuant エンタープライズを活用することで、金融サービス企業は、投資プロセスのあらゆる側面にクオンツアプローチを取り入れ、より積極的に競争力を高めることが可能となります。本プラットフォームはブルームバーグが金融市場に特化して設計した初のデータサイエンスソリューションであり、当社の高品質で市場をリードするマルチアセットクラスの包括的な金融データやオルタナティブデータへのアクセスを直ちに運用可能な状態で提供します。
これまで金融業界は数理モデルや膨大なデータ、高度な計算能力を駆使して投資戦略を評価し新しいアイデアを生み出すクオンツアナリストをサポートするためのシステム構築に多額の投資を行ってきました。今後は、BQuant エンタープライズを活用することにより、フロントオフィスは高度なデータサイエンスがもたらす利点を即座に享受できます。同時にIT部門は、このソリューションと既存のインフラ、データベース、ワークフローを連携することで、技術投資による効果を最大化できます。
BQuant エンタープライズは、アナリストが意思決定のためにモデルを作成・検証し、本番環境に投入するためのより効率的なワークフローを提供します。本プラットフォームは、金融に特化したツール、サービス、ライブラリで構成されており、アセットクラスを問わず、ファクターモデルの評価、バックテスト戦略、ポートフォリオの分析など、広範な定量分析をサポートします。