2020.07.02

ブルームバーグのAbilities Communityでは慶応義塾大学総合政策学部の塩田琴美准教授のゼミ生の皆さんをお迎えして、健常者と障がいを持つ人々がともに働きやすい職場環境についての研究発表会をオンラインにて開催しました。本プログラムは、大学生の皆さんと共にブルームバーグでのダイバーシティ&インクルージョンおよび障がい者採用に関する取り組みを考えるプログラムの一環として行われたもので、5月に続き2回目の開催となります。

ゼミ生の皆さんにはチームに分かれて4つの課題別に取り組んでいただきました。それぞれの発表の内容については以下のとおりです。

  1. 日本と海外の障がい者採用に関わる取り組みについて
    日本とアメリカ、フランス、デンマーク、スウェーデンをとりあげ、各国の障がい者への定義から、社会全体の枠組みまで、特長を比較。特に北欧では障がい者を「スペシャル・アビリティの持ち主」としてとらえたり、「障がい者雇用に法的な義務はなく健常者と変わらない給与形態」など、先進的な体制や取り組みが多く報告されました。なかでもスウェーデンの国営企業サムハル(全従業員2万人のうち、1.9万人が障がい者)では、障がい者をコーチングし、年間1000人以上の民間企業への就職を達成しているとのことです。「障がい者を積極的に採用し、その成長の可能性とチャンスをもたらす魅力的な職場を創出していく」というビジョンに出席者からは感嘆の声が上がっていました。また、「日本より海外のほうがより健常者と同等に扱われている傾向。国全体として日本が、障がい者をより特別視する傾向がある」との分析でした。 
  2. 障がい者スポーツについて
    スポーツを通じた障がい者理解の促進や、健常者と障がい者の壁をなくす、コミュニティの活性化を目標としてあげ、電動サッカーやボッチャなどが健常者と一緒に取り組めるスポーツとしてとりあげられました。特に電動サッカー等、健常者でも難しい障がい者スポーツを一緒に楽しむことは、同じ土俵に立てることでいろいろな発見につながるようです。また当事者の家族から具体的なお話が直接聴ける、理解が深まるという利点があげられました。弊社でも2019年12月に国際障がい者デーにちなんだパラリンピック種目の体験アクティビティを実施、障がいを乗り越え活躍するパラアスリートの偉大さを体感するとともに様々な障がいについて学ぶ機会がありました。後日、「パラリンピックを実際に観に行きたくなった」という声や、「普段話したことのない社員同士で会話が生まれた」としてチームビルディングにも有効だったとする声があり、弊社としてもコロナの状況が落ち着いたら今後また企画したいと考えています。

  3. 重度障がい者の就労について
    現状の問題点は重度障がい者(当事者)と企業で働く人との相互理解の欠如であるとの分析がありました。そのうえで、従来の「理解を深める」ための単発的なイベントから一歩進み、継続的な手段で取り組むためのプラットフォームを構築してはどうか」という提案という提案がありました。そのプラットフォームに関しては、「信頼を醸成しやすい強いつながりx異質な情報を集めやすい弱いつながり」の掛け合わせが有効とされ、具体的には、社員食堂や休憩スペースにカフェバーをつくり、障がい者がスタッフとして、誰でも気軽に立ち寄れる場をつくるというアイデアが寄せられました。また、「行ってあげようかな」ではなく、イベントなどを通じて、魅力的で誰しもが「行きたくなる場所」にすることが大切と強調しました。

    出席者からも、「カフェスペースは面白い発想。ブルームバーグでも何かできないか検討してみたい」との声や、「そういえば、障がい者が遠隔のロボット操作でカフェで注文を届けるサービスがある」など、実現可能性も踏まえたうえで、前向きに取り組みたいとする声が上がりました。

  4. 障がい者が働きやすい職場のアセスメントツール・指標について
    定着率の低さという課題にスポットをあて、離職になってしまう理由の分析と本来あるべき合理的配慮について考察しました。定着を妨げる原因となる、「業務負荷が大きくなるのではという不安」、「コミュニケーションの取り方がわからず人間関係が悪化」、「賃金や労働条件に対する不満」、「やりがいを感じられない」等の課題に対し、対応策を様々な角度から検証しました。まず賃金や労働条件に対する不満については、「企業と障がい者の間に納得や合意のないことが主な要因」とし、双方が納得できるように労働効率の可視化の必要性を訴えました。また、人間関係やコミュニケーションの問題については、「必要な基本的合理的な配慮はひとりひとりの社員や特徴や困りごとによってちがうので、本人と継続的に歩み寄りながら進めることが重要」であるとし、サポートも入社直後だけではなく、定期的な検証が必要であると付け加えました。また、日々の困りごとの解決からキャリア開発まで、話しやすい環境づくりのためのソリューションとして社内コールセンターのようなものの立ち上げてはどうか、という提案に、出席者からは「目的を明確にすれば」「2段階制にしたら」「現場のことに詳しいシニア層が適任では」「社内にこだわらず公的機関との連携も」などさまざまな意見が寄せられました。また、どうしたら声がひろえるかという問いに対しては、「フィードバックの大切さは、健常者にとっても同じ。健常者も発言しやすい社内環境が整うことで、障がい者も安心して発言しやすくなるのではないか」「報・連・相をきちんと行う、相手の個性を尊重するといった健常者同士でも大切なことが、障がい者雇用をきっかけに実現・徹底できるのでは」など、健常者と障がい者の枠組みを超えた観点からの発言も聞かれました。

出席者のひとりで長年障がい者雇用に携わってきた社員は、「近年、障がい者雇用は、『福祉』としてとらえる考え方から『誰もが働ける社会の実現』へと目的が変わってきている」と述べ、「働く人も本気で活躍したいと思っているし、雇う側もどうしたらそれが実現できるだろうかという視点を持つようになってきている」と続けました。今回のプレゼンテーションは、こうしたダイバーシティ&インクルージョンの在り方に再考を促す時代の変化を随所に感じさせられるものとなり、障がい者雇用の担当も「視野を広げてくれる」内容だったと感謝の意を表しました。

「自分を理解してくれる人がいることが、会社での働きやすさにつながる」という視点で、Abilities Communityでもメンバーで引き続きディスカッションを続けてまいります。また、ゼミ生の皆さんも今回のフィードバックをベースにさらに研究を進めるご予定ということで、後日の成果発表をCommunityメンバー一同心待ちにしております。