ブルームバーグでは、バイサイドのコミュニティーに有用な情報を提供するとともに、ビジネスの発展を支援するため、2007年より毎年「ブルームバーグ・バイサイド・フォーラム」を世界各地で開催しております。3年目を迎えた東京プログラムは、小泉進次郎環境大臣を特別ゲストに、資産運用業界を代表するビジョナリーである方々のご講演とパネルディスカッションを交えながら、バイサイドが直面する課題と未来について、多角的な視点から考察を深めました。本イベントはオンラインにて日本およびアジア太平洋地域を中心に、世界11カ国に日英2カ国語で配信。約700名のバイサイドフェッショナルの皆さまにご登録いただき、ライブやオンデマンドにてご視聴いただきました。
「ポスト/ウイズ・コロナ」の時代における資産運用のあり方、ESG投資、テクノロジーやデータ活用など、講演とディスカッション内容の詳細をまとめたイベントリポートは下記リンクからダウンロードしてご覧いただけます。
Day 1-1 基調講演:小泉進次郎環境大臣
「ポストコロナ時代の『3つの移行』による経済社会の再設計・リデザイン」
初日の基調講演には小泉進次郎環境大臣をお迎えし、ポストコロナ時代における経済社会の再設計・リデザインをテーマに、金融が担う役割についてお話しいただきました。小泉大臣は、「時代の転換点に立っている私たちは、コロナ前の経済社会に戻るのではなく、持続可能で粘り強い社会経済システムへの変革を実現できるかどうかが問われている」と述べ、そのために重要なこととして、「脱炭素社会への移行」、「循環経済への移行」、「分散型社会への移行」という「3つの移行」を進める経済社会の「再設計・リデザイン」の必要性を訴えました。(もっと読む)
Day 1-2 :TCFD議長アドバイザー メアリー・シャピーロ
「日本のバイサイドの皆さまへ」
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)議長アドバイザー兼ブルームバーグL.P.グローバル公共政策副会長創業者・会長付特別顧問のメアリー・シャピーロが、日本のバイサイドの皆さまに向けてのメッセージを伝えました。冒頭、シャピーロは昨今の世界的なESG投資の拡大の背景について、長期的なESG戦略を持つ企業がよりよいリターンを上げる可能性があることを投資家が認識しており、またそうした企業は回復力も強いのを理解していると分析しました。(もっと読む)
Day 1-3 パネルディスカッション「ポストコロナにおけるESG投資の潮流と課題」
脱炭素社会に向けて
Day 1パネルディスカッションでは、コロナ禍がESG投資に与える影響を中心に、脱炭素社会に向けての行動が世界で加速しているなか、グローバルな視点からの長期的な取り組みについてご討論いただきました。パネリストは、ニッセイアセットマネジメント株式会社代表取締役社長、大関洋氏、第一生命ホールディングス株式会社経営企画ユニットフェロー、第一生命保険株式会社運用企画部フェロー、エグゼクティブ・サステナブルファイナンス・スペシャリスト、銭谷美幸氏、青山学院大学名誉教授、東京都立大学特任教授、北川哲雄氏、モデレーターはPRIシグナトリー・リレーションジャパンヘッド森澤充世氏です。
ディスカッションでは、脱炭素社会に向けての取り組みや、新型コロナ感染拡大で見えてきたこと、投資先のエンゲージメントやイニシアチブへの参画、今後のESGの発展に向けての課題、TCFDなどの環境分野におけるフレームワークの現状、取り組みについてお話しいただいたほか、ESG投資とリターンの関係性についてもご意見をおうかがいしました。(もっと読む)
DAY 2-1 基調講演: ブルームバーグ L.P.会長 ピーター・グラウアー
「ブルームバーグ・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク日本チャプター」発足にあたって
多様性は、持続可能な投資を推進するための不可欠な要素
基調講演において、ダイバーシティとインクルージョンを長年にわたって推進してきた弊社会長のピーター・グラウアーは、考え方や視点の多様性は、「市場の大きな変化に追いつき、持続可能な投資を推し進めていくための不可欠な要素」であるとし、「バイサイド業界で働く女性が増えることが、金融セクターにより多様な考え方をもたらし、より持続可能で包摂的なビジネスが可能になる」と述べました。(もっと読む)
Day 2-2「ブルームバーグ・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク日本チャプター」設立 エグゼクティブ・メンバー インタビュー
ブルームバーグ・バイサイドフォーラム2020東京の2日目、ブルームバーグ・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク(BWBN)の日本チャプターの発足が発表されました。2018年、シンガポールで産声を上げたバイサイドの女性のための本コミュニティは、インド、香港へと拡大し、日本での開設となりました。「投資の未来からインスピレーションを受け、次世代のバイサイド女性リーダーたちをインスパイアする」をモットーに、アジアでバイサイド分野の次世代女性リーダーを育てるビジョンを掲げています。(もっと読む)
国内で初の女性のバイサイドネットワークとして、メンバーに向けたサポートシステムの提供、業界内で能力主義やインクルージョンの促進、バイサイド分野でのキャリア構築のためのダイバーシティ教育を、有効的なエンゲージメントと積極的なメンターシップを通して取り組んで参ります。詳細はこちらから。
Day 2-3トップ対談「資産運用業界の未来」
2日目の第2部では、日本の資産運用業界を代表する著名なゲストをお迎えし、今後の資産運用業界の展望について、討論いただきました。パネリストはアライアンス・バーンスタイン株式会社代表取締役社長、阪口和子氏、ベイビュー・アセットマネジメント株式会社代表取締役副社長、下城理恵子氏、野村アセットマネジメント株式会社CEO兼代表取締役社長、中川順子氏、そしてモデレーターは、日本生命相互保険会社代表取締役副社長執行役員、赤林富二氏です。なお、パネリストの皆さまは、ブルームバーク・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク日本チャプターの発足メンバーでもあります。
ディスカッションでは、コロナ拡大による未曾有の状況下で変化する資産運用における課題およびその解決策について、投資家ニーズの多様化、資産運用への関心の高まり、デジタル化の進展の観点からご意見をおうかがいしたほか、資産運用業界の未来図や経営者としての舵取りについてお話しいただきました。(もっと読む)
参加者アンケートから見えてきたESG投資に関する傾向
- 最大のモチベーションは長期リターン
- 投手手法においてESGインテグレーションの採用が増加
- 課題は標準化された正確なデータへのアクセスとスキルの取得
- ESGインテグレーションの課題が大きいのはEとS
ブルームバーグがバイサイドフォーラム2020東京Day 1の視聴者の皆さまに対して行ったESG投資に関するオンライン調査では、ESG投資をする最大の理由として最も多くの参加者票を集めたのが「長期リターンの追求」でした。
また、ESG投資に伴う課題は「標準化された信頼性のあるデータへのアクセス」が1番にあげられ、分析スキルの取得がこれに続きました。(フォーラム総登録者数 680 回答者数146 対象:ポートフォリオマネジャー、アナリスト、ストラテジスト、企画、営業、マネジメント層を含むバイサイド)
資産運用業界では、アクティブ、パッシブを問わずグローバルでESGを意識した投資への関心が高まっており、それと同時にデータの信頼度への課題がクローズアップされる傾向にありますが、調査はそれを改めて裏付ける結果となりました。
ブルームバーグでも、情報に基づいた投資判断を下すために必要なESG データをさらに充実させて、投資家の皆さまが透明性や品質の高いデータにアクセスできるよう、引き続き努めて参ります。
「ESG投資に取り組む最大のモチベーション」として最も高かったのが、「長期リターンの追求」でした。実際に、Day 1のパネルディスカッションの中でも「ESG投資がコロナ禍のなかでアウトパフォームしていた」という結果が共有されています。これまで、比較的「顧客対応・ブランド強化」や「リスクマネジメント」といった側面で注目される傾向があったESG投資ですが、長期リターンとの関連性への理解が深まっていることがうかがえます。
現在取り入れているESG投資手法で、最も多かったのが投資判断の中に非財務情報であるESGを織り込む「ESGインテグレーション」、2番目にエンゲージメント、そしてネガティブ・スクリーニングと続きました。世界のESG投資の統計を発表しているGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の2018年度の調査では、日本における最大の投資戦略は「企業のエンゲージメント・議決権更新」という結果でしたが、2年を経て行われた今回のブルームバーグの調査では、ESGインテグレーションがそれを上回るものとなっています。
「ESG投資に伴う課題」として、最も多くの参加者があげたのが、「標準化された信頼性のあるデータへのアクセス」で、「分析スキルの取得」「投資フレームワーク・基準の構築」がほぼ横並びでそれに続きました。各事業会社で公表しているESGに関するデータの基準が標準化されていないために比較しづらいという背景があり、信頼できるデータへのアクセスが最大の課題である一方で、それを分析するためのスキル構築の必要性を感じている運用会社が多いという状況がうかがえます。
「E/S/Gの中で分析・インテグレーションに一番課題を感じているのは」という問いに、最も多かったのはSのソーシャル、ついでEの環境でした。Sについては、開示データが比較的少なく、標準化のための枠組みが整備されていないことが各方面から指摘されており、今後の課題となりそうです。一方でGが最も少なかったのは、コーポレートがバンスコードやスチュワードシップコードの施行にあげられる日本における取り組みもあり、データもかなり多く出そろってきているのが背景にあると思われます。
近年、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース提言書)やSASB(サステナビリティ・アカウンティング・スタンダード・ボード)など非財務情報の開示に関する基準が次々と開発・導入されていますが、標準化の推進、データ量の増加等、事業会社による開示努力がより一層求められています。