ネットゼロ目標達成に欠かせないカーボンオフセット

Read the English version published on April 25, 2022.

二酸化炭素排出量ネットゼロのコミットメントには、さまざまな企業が急速なペースで取り組みを進め、表明を行っています。石油会社、航空会社、グローバルに展開する製造業、そして国全体までもが、大半は2050年までに、自らが排出する温室効果ガスと大気中から除去する温室効果ガスの量が同じになるようにするということを約束しています。

気候変動への懸念とその影響が高まる中、こうしたネットゼロの目標は前向きな取り組みといえます。しかし、より深く掘り下げると、これらの約束が本当に意味することは何なのかという疑問が残ります。そして、それと同じくらい重要なのは、企業や国がどのようにして排出量ネットゼロの目標を達成するのかという課題です。

ここでカーボンオフセットが登場します。排出量削減の取り組みだけでネットゼロの目標を達成できる組織などほとんどありません。大抵の場合、排出量を完全になくすことはできませんが、カーボンオフセットを活用すれば相殺ができます。しかし、カーボンオフセット市場は依然として不透明で標準化されていません。

ひとつの解決法として、より持続可能なカーボンオフセット市場を構築することが考えられます。つまり、カーボンオフセットに関する規則を整備し、低品質の脱炭素化プロジェクトを排除し、ネットゼロのコミットメントを実現できる環境を作ることです。

ネットゼロの背景

ネットゼロ・コミットメントは一段と広がりを見せています。実際、「クライメート・アクション100+」の対象企業167社のうち110社以上がネットゼロの目標を掲げています。「クライメート・アクション100+」には、600の投資家や資産運用会社が参加しており、温室効果ガス排出量が極めて高い投資先企業に脱炭素化を促進させることを表明しています。ここでは167社に焦点が絞られています。

2050年(大半のネットゼロ・コミットメントにおける目標年)までに、これらの110社がネットゼロ目標を達成するには、総計で年間106億メートルトンの二酸化炭素排出量を削減する必要があります。これは、現在の世界全体にわたる二酸化炭素排出量の20%を占めています。実際、ネットゼロ目標を掲げる企業としても、環境に配慮したより持続可能なビジネス慣行を構築することへの意欲はあります。

とはいえ、無視できないのは投資家や「クライメート・アクション100+」のような投資家グループからの圧力です。彼らは、気候変動が自らのポートフォリオにもたらすビジネスリスクを検証し、投資先企業の脱炭素化を推進しているのです。また、投資家は、ネットゼロを約束する企業が革新的な新製品を生み出し、排出量目標を達成するための投資機会を創出するという、(地球環境にとって良いだけではない)潜在的なプラス効果も期待しています。例えば、テクノロジー分野では現在、顧客の脱炭素化を支援するソフトウエアやハードウエアなどの製品が作られています。

カーボンオフセットとの関係性

科学的根拠に基づく温室効果ガス排出削減目標の設定を求める国際的なイニシアチブ「SBTI」のようなグループは効果的なネットゼロ目標の設定と評価のためのフレームワークを開発していますが、現在のところ、ネットゼロ・コミットメントの定義に関する基準要件はありません。例えば、企業によってはネットゼロ・コミットメントの対象排出量にスコープ1、2および3のすべてを含めています。この場合、自社での燃料の使用による直接排出と、川上分野の他社から供給された燃料や、自社製品の使用による間接排出の両方を対象としています。一方で、自社が直接排出した分のみをネットゼロ・コミットメントの対象としている企業もあります。

SBTIの枠組みでは、間接排出も含めたネットゼロ目標を呼びかけています。そうなると、対応すべき範囲が広範にわたることになることから、カーボンオフセットを利用してカーボンニュートラルを達成せねばならない企業が多くなるでしょう。カーボンオフセット市場はまだ開拓途上で、質の高い脱炭素プロジェクトの詳細部分に対する規制はほとんどありません。SBTIなどでは、ネットゼロ目標の枠組みに合わせてカーボンオフセットに関する規則を設定することで、現状を変えようとしています。例えば、SBTIのネットゼロの枠組みに沿うと、炭素を除去、貯蔵、または隔離するカーボンオフセット・プロジェクトしか企業は利用できません。炭素排出を回避するだけのカーボンオフセット・プロジェクトは対象になりません。

ネットゼロへのコミットメントとカーボンオフセットとの関係性が強まり、カーボンオフセット市場は再び活気づいてきています。2021年の登録プロジェクトによるカーボンオフセットの発行件数は過去最高の2億8400万件となりました。しかし、排出量がコモディティーとして取引されるようになると、カーボンオフセットの需給バランスが極めて重要になってくるでしょう。SBTIが提案するようなカーボンオフセットに関する規則を適用した炭素除去プロジェクトのみを良しとする市場を作ってしまうと、オフセットの価格が高すぎてネットゼロ・コミットメント企業が広く利用できなくなる可能性があります。反対に、カーボンオフセットの品質に関する規則が全くなければ、カーボンオフセットの価格は低いままで、企業が排出量削減対策を自ら講じる動機付けにはほぼならないと考えられます。

カーボンオフセット市場は、この両者の間を取ったハイブリッドな進化を遂げる可能性が高いでしょう。また、企業が自社のネットゼロ目標実現の進捗(しんちょく)を確認し、その過程で排出量削減への取り組みを調整する中で、基準についても整備されていくでしょう。ひとつ確かなことは、ネットゼロへの取り組みが機能している限り、カーボンオフセットも存在し続けるということです。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。