在宅勤務実験を通して学んだこと

Read the English Version published on July 17, 2020.

本稿はJeff GreenとMichelle F. Davisが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

新型コロナのパンデミック(世界的大流行)で世界中のオフィスが閉鎖に追い込まれると、オフィスワーカーたちは、在宅勤務のメリットとデメリットを短期間で実際に学ぶことになりました。自宅のキッチンテーブルでも、職場と同じパフォーマンスを発揮できるのかという議論は、これ以前にテクノロジーの発達で在宅勤務への切り替えが可能となってからというもの、活発に続けられてきました。数カ月に及ぶロックダウン(都市封鎖)は、期せずして、この議論にヒントを与える試みとなりました。大部分のオフィスワーカーにとって自宅で精力的に働くことは、生活の大きな部分を占めることとなり、さらに日常とさえなっていることは間違いないようです。

  1. オフィスワーカーはどのように適応したのか

米ギャラップ社の世論調査によると、米国人の在宅勤務の割合は数週間で倍増し、4月には62%に達しました。学校が閉鎖されると、保護者は苦労を重ねながら仕事と遠隔学習の両方のサポートを引き受けなければなりませんでした。オフィスワーカーはSlackのようなビデオ会議やコラボレーション向けの各種ツールを使い始めました。しかし、長時間労働が当たり前となり(あるリポートによると、米国では3時間超)、こうした目新しさはすぐに消えうせましたが、在宅勤務の柔軟性は多くの人に歓迎されました。

  1. 在宅勤務はこのまま継続されるのか

少なくとも一部の職種では在宅勤務が継続されそうです。米国のツイッターフェイスブック、そしてスイスの銀行大手UBSグループを含む大手企業では、3分の1以上のスタッフにおいて在宅勤務への切り替えが恒久的に継続する可能性があるとしています。調査では、大多数が、たとえ職場での安全が確保されたとしても、急いで以前のオフィス勤務には戻りたくはないと考えていることが示されています。5月に発表された6000人を対象とした調査では、ドイツ、フランス、およびオランダのオフィスワーカーのうち、フルタイムでのオフィス勤務に復帰したいと回答したのはわずか3分の1という結果でした。ロックダウンは、仕事と生活のバランスを考え直す機会となりました。通勤が不要となったことで、多くの人々が生産性の向上、ストレスの減少、および健康的なライフスタイルの促進が図られることに気づき、驚いたのです

  1. 在宅勤務の持続可能な期間は

全米経済研究所(NBER)が4月に発表した分析では、米国では約40%の職において完全に自宅で業務を遂行できることが示されました(これには教職も含まれており、同分析ではパンデミック以前は一般に不可能だと考えられていたと指摘されています)。これまで実現可能なことが過小評価される傾向にあったようです。米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズは当初、12万人いる米国の従業員のうち約4万5000人の在宅勤務が可能になると予測していました。4月までに、実際の数字は11万5000人に達しました。在宅勤務を意味する「ワーク・フロム・ホーム(WFH)」として知られるようになった勤務形態は、建設業や農業などの多くのブルーカラーの職業や、レストランや小売店などの低賃金のサービス業では、選択することが不可能であり、これもまたパンデミックによって浮き彫りになった現実です。格差はまた国別でも生じました。NBERの研究者らは、英国とスウェーデンでは労働者の40%以上で在宅勤務が可能であるのに対して、メキシコやトルコでは、その割合は4分の1以下であったことを指摘しました。

  1. 金融など規制対象の業種における職場の状況は

当初、証券取引の執行に必要なソフトウエアやデータを自宅のパソコンで処理するのは難しいのではないかという懸念がありましたが、それは誇張であったことが分かりました。 株式市場が暴落し、トレーディングが急増した3月が大きな試金石となりました。通常のにぎやかなトレーディングルームでの成績には及ばなかったとはいえ、投資銀行はトレーディングで数十億ドルを計上できました。大手米銀ゴールドマン・サックス・グループでは従業員の98%が、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーでは70%が在宅勤務でした。一方で、コンプライアンス部門は、潜在的な不正行為の防止対策として、通話や使用するコンピューターのトラフィックを監視する必要性を強く主張したり、会社側も業務が適切に遂行されるよう十分な数のトレーダーをオフィス勤務に残すよう求めたりしました。

  1. 在宅勤務者の生産性は

在宅勤務者とオフィス勤務者の生産性は同じ程度高いことはパンデミック以前の調査でも指摘されていましたが、在宅勤務者は始業前勤務や残業をする傾向があり、在宅のほうが生産性において上回っている可能性さえあります。ロックダウン中、生産性の向上が頻繁に報告されています。米ソフトウエアメーカーProdoscore による調査では、生産性が1年前と比べて47%向上したことが判明しました。従業員は会議の数を減らす一方で、 電話の発信回数、チャットおよび電子メールの送信数のいずれも増やすことができたためです。しかし、これには犠牲も伴いました。ある調査によると、45%の従業員が、業務量の増加、家庭と仕事の両立、会社からのサポートの欠如により、バーンアウト(燃え尽き)を経験していたことがわかっています。

  1. 在宅勤務への移行で変わるものとは

オフィス勤務の呪縛を解くことは、従業員がより安い地域に引っ越すことを選択できることを意味します。フェイスブックは、採用地域を限定せず、候補者の人材プールを拡大できることを理由の1つに上げ、在宅勤務恒久化への移行を表明しました。しかし、カリフォルニアの拠点を離れる従業員は、現地の給与水準に沿って減給される可能性もあります。企業はオフィススペースを縮小可能:米銀JPモルガン・チェース英銀バークレイズ、および米銀モルガン・スタンレーはいずれも、オフィススペースを縮小し、従業員に在宅勤務の実施頻度の増加を求める可能性があると述べています。経営者の中には、広範囲にわたる在宅勤務への移行により、対面でのやり取りから生まれる仲間意識やコラボレーション、創造性などがいくらか失われるリスクがあるのではと懸念を抱くものもいます。1つの妥協策各週の勤務時間を自宅勤務とオフィス勤務に分割する方法があります。