自動配信のニュース記事からイベント予測は可能か:クオンツチームによる検証

Read the English version published on June 29, 2020.

ブルームバーグが1990年にニュースの公表を開始して以来、印刷物、テレビ、インターネットなどのチャネルを通じたニュースの配信量は爆発的に増加しました。情報の多様性も高まり、配信スピードも加速化されました。この圧倒的なニュースフローの中には、数多くのアノマリーやシグナル、そしてチャンスが潜んでいます。問題は、いかにしてその中から最も有意義なデータを捕捉するかで、そのためには優れた分析機能も必要です。

データ量はもはや人間の分析能力をはるかに超えていますが、その一方でテクノロジーの進化がそれに取って代わろうとしています。ブルームバーグは、市場を監視して役に立つデータを発見し、コンピューターを使ってタイムリーに発信するテクノロジーを開発しました。それが、自動配信ニュースを作製する500以上のテンプレートを備えたブルームバーグ・オートメイテッド・インテリジェンスで、他のニュースソースを補完して新たなインサイトを提供します。ブルームバーグターミナルのユーザーは、ブルームバーグ ニュースおよびブルームバーグ・ファースト・ワードで自動配信ニュースを読むことができます。

この自動配信ニュース記事が投資戦略に役立つかどうか、言い換えれば自動配信ニュースにシグナルが含まれているかどうかについて、ブルームバーグのクオンツ・リサーチ・チームが検証しました。Mohammad FesangharyとArun Vermaが分析から得た興味深い結果を「ブルームバーグ・オートメイテッド・インテリジェンスの予測分析」と題された白書の中で最近公表しました。

ブルームバーグターミナルで閲覧可能な自動配信ニュース記事(例)

コーポレートアクションを観察する:データから得られるインサイト

オートメイテッド・インテリジェンスは、例えば市場センチメントや読者の関心、トレンドの変化などを捕捉するニュース分析機能など、数多くの記事のタイプに対応しており、それらを基に自動配信ニュースが配信されています。自然言語処理(NLP)を利用したニュース速報も、米食品医薬品局による新薬承認から新たな投資アクティビストによるキャンペーンまで幅広く配信されています。また、出来高の急増やアナリスト活動、オプション市場におけるインプライドボラティリティの変化など、金融市場が大きく動いた場合にも自動配信ニュースが配信されます。そしてこれらすべてが、将来のコーポレートアクションや価格変動の予測に役立つかもしれないのです。

上記白書において著者は、自動配信ニュース記事とその公表日を調べてそれがその後近い将来に起きるコーポレートアクションの予測に役立つかどうかを検証しました。事例証拠からは、一定のタイプの自動配信ニュース、特に幾つかのタイプのニュースの組み合わせが、企業の重要なニュースリリースと期待確率を上回って相関していることが示唆されています。そこで著者たちはそれが偶然であるかどうかを検証しました。自動配信ニュースの公表データをランダム化しその分布を実際の分布と比較することにより、ノンパラメトリック手法を用いて自動配信ニュースの予測力を分析し、仮説を検証しました。次に、コーポレートイベントの発生や大きな値動きに対象を絞り検証を行いました。特定のタイプの自動配信ニュースの発生率がランダム化された発生率と大きく異なれば、そのタイプのニュースにはシグナルが含まれていることになります。

サンプルにおけるイベントのランダム期待発生率と自動配信ニュースの実際の発生率

検証の結果からは、幅広い業種において自動配信ニュース記事が企業の主要なニュースリリースに先行して公表されていたことが分かりました。特に、自動配信ニュースの一定の組み合わせは、ランダムサンプリングによる期待発生率を大きく上回ってM&Aなどのコーポレートアクションに先行していました。例えば、インサイダー取引とインプライドボラティリティ、債券取引高の急増のシグナルが短期間の間に観察されると、その後にM&Aが公表される確率が16.7%に上り、これは期待値の3倍以上でした。さまざまなニュースソースのダイナミクスを分析すると、いわゆる「社会的速度」と「ニュースヒート」がかなり強いシグナルを有していることを示す証拠も見つかりました。

さらに時間が必要:リサーチとテストを継続

この研究を始めた一つのきっかけは、自動配信ニュース記事の一定の組み合わせが市場を動かすようなイベントに先行する傾向があるという事例証拠でした。では、単一のニュース記事の予測力については何が言えるのでしょう。研究の結果からは単一の自動配信ニュースから市場の大きな値動きを予測するのはかなり難しいことが分かりました。その一方で、大きな値動きの後には自動配信ニュースが配信されますが、ユーザーは値動き全体が終了する前にそのニュースを入手できるためまだ適時性があり、そこから有効なモメンタムベースの取引戦略を開発できる可能性があります。

自動配信ニュースの生成メカニズムはまだ改良が進んでいるため、システム全体はまだ固定化されていません。これによりバイアスが発生する可能性もあるため、さらに検証を重ねる必要があります。上記の研究の対象期間はわずか18カ月でした。従って、観察期間を長くしてより多くの検証を行えば、より優れた投資戦略の開発につながるでしょう。

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