財務担当がサステナブルファイナンスについて知っておくべきこと

本稿はPennon Groupトレジャリー部門ヘッドで特別ゲスト寄稿者のChris Tregenna 氏が執筆しました。Read the English version published on September 04, 2019.

ESG(環境、社会、ガバナンス)投資とサステナブルファイナンスは金融業界において主流となりつつあり、機関投資家と個人投資家の資金がサステナブル投資に流入しています。世界持続可能投資連合(GSIA)が発表したリポートによると、サステナブル投資またはグリーン投資の残高は2018年開始時点で31兆ドルと推定され、2016年からの2年間で34%増加しました。

企業の財務担当者にとって、これは必ずフォローすべき大変重要なトレンドです。グリーンボンド(環境プロジェクトまたは気候変動対策に必要な資金を調達するために発行される債券)と「サステナビリティプール」(グリーンな要素を組み込んだ資金プール)は、共に一般的なものとなりつつあります。これらの商品は当初は額も小さかったのですが、投資家と企業がESG戦略を重視するようになるにつれて急速に拡大しました。例としてはグリーンファイナンスを組み込んだリボルビング・クレジット・ファシリティなどがあり、金融機関はグリーンな要素を組み込んだ新商品の開発に躍起となっています。

ESGの価値を短期的・長期的に投資に組み込む投資家数の増加に伴い、グリーンファイナンスに対する需要は増加の一途をたどるでしょう。会社の内容を知り尽くした財務担当者は、グリーンファイナンスの実務を自社に導入する最も適した立場にあります。この新しいビジネスのやり方を主導できるのは、自社に関して幅広く深い知識を有する財務担当者だけです。サステナビリティの業務への統合を後押しすることにより、財務担当者は会社の長期的成長・成功に向けた土台構築に貢献することができます。

それでも実際にサステナブルファイナンスに取り組むとなると、特に小規模な企業の場合には躊躇が見られます。例えば、グリーンボンドの発行額は多くの場合ベンチマークとなり得るサイズ(少なくとも2億5000万ドル~3億ドル)ですが、これは小規模な企業に適したサイズではありません。しかし、前述の通り金融機関がESGやサステナブルファイナンス関連商品の開発を続けていることから、企業が新たにESGに取り組みやすい環境が整ってきています。最終的にサステナブルファイナンスが主流となるためには、まずサステナブルファイナンスがビジネスとして成立することが必要です。多くの投資家がESG価値を取り込みたいと考えていますが、リターンを犠牲にしてまでというわけではありません。従って、例えばESG格付けを取得したローンのパフォーマンスが年々向上していることを実証できれば、サステナブルファイナンス促進にプラスとなるでしょう。

企業は、自社のビジネスにサステナブルファイナンスのフレームワークを取り込むことを検討する必要があります。そしてその際には、サステナブルボンド市場の透明性と統一性を促進することを目的として制定されたグローバル原則のガイドラインと整合性を取る必要があります。

例えば、英国の上場企業でFTSE250種総合株価指数の構成銘柄であるPennon Group plcは、サステナブルファイナンスのフレームワークを通じて資金調達関連の新商品を積極的に取り込み、サステナブルファイナンスによる多彩な調達ファシリティを整えました。これらのファシリティにより調達された資金は、その資金使途がサステナビリティを考慮しているかという観点からサステナビリティファイナンスのフレームワークに沿ってモニタリングされ、その結果は外部の機関によって検証されています。このようにして同社はサステナビリティにコミットし、急速に拡大するESG市場への参加を果たしています。

Pennonは頻繁に社債を発行する企業ではありません。そのため事業に必要な資金を調達するサステナブルファイナンスのフレームワークを構築しました。同社はこのフレームワークを利用してグリーンローン原則(GLP)、グリーンボンド原則(GBP)、サステナビリティボンド原則(SBP)に則った形で、さまざまなタイプの資金調達を行う予定です。またローンとリボルビング・クレジット・ファシリティの一部にはサステナビリティにリンクしたKPI(重要業績評価指標)を設定して順守しています。同社の目標は全社レベルのサステナビリティ戦略策定を支援し、その戦略を業務のあらゆるレベルに浸透させることです。

一方、ESG報告については幾つかの懸念が浮上しています。その1つはサステナブルファイナンス商品のパフォーマンスをどのように分析するかというものです。しかしこれは、懸念自体がやや誇張されている面もあります。なぜなら、ESGやグリーンファイナンスのパフォーマンスを計測可能な報告ツールやパフォーマンス計測に役立つサステナビリティインデックスの提供を、幾つかのベンダーが既に始めているからです。企業が自社のビジネスニーズに基づいて独自の報告フレームワークを開発するにあたって、こうしたツールは出発点を提供してくれます。また、コンサルタントなどの外部機関を雇って開発を加速させることもできます。

必要な作業をすべて完了させ、会社の目標を正確に理解した事業部門からのコミットメントが得られれば、会社には大きな価値がもたらされます。そのためには最初から目標を明確に掲げた上で、報告フレームワークを決定することが重要です。

ここ数年間でESG投資の考え方が投資家層に浸透したことから、サステナブルファイナンスのコストはわずか数年前と比較しても大きく低下しています。あらゆる企業のトレジャリー部門が、企業価値向上という理由だけではなくビジネス上の理由からも、サステナブルファイナンスに取り組む価値があります。

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