本稿は、Ishika Mookerjee、Sheryl Tian Tong Leeが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。(2023年5月31日)
アジアで運用成績トップのESG(環境・社会・企業統治)ファンドが、日本株投資の果実を得ている。日本株は、サステナブルを重視する日本の運用マネジャーでさえ、ほとんど見向きもしていなかった市場だ。
資産規模2億5000万ドル(約350億円)以上のESGファンドを対象としたブルームバーグのデータによると、アジアでは今年、パフォーマンス上位5本のうち4本を日本に投資するファンドが占めている。トータルリターンは17%以上。これはアジアのESGファンド全体の平均上昇率1.1%と、TOPIXのパフォーマンスであるプラス約16%も上回る。
日本でサステナブル関連の戦略を手掛ける運用マネジャーは、相対的な低リターンやESGの取り組みの弱さを理由に、日本市場を敬遠してきたケースが多い。
それにもかかわらず日本にこだわってきた運用者が、コーポレートガバナンスの改善やインフレ関連の要因、著名投資家ウォーレン・バフェット氏による支持から恩恵を受けている格好だ。これらの材料が日本株を巡る楽観的な見方につながっており、同市場は今年世界で最もパフォーマンスの良い市場の一つとなっている。
「アルマ・エイコー日本大型株」と「ゴールドマン・サックス・ジャパン・エクイティー・パートナーズ」は今年、アジアのESGファンドの中で運用成績が上位で、ともに20%を超えるリターンを上げている。
「アルマ・エイコー日本大型株」は、日本航空や三菱重工業などの銘柄からリターンを獲得。日本航空はトランジションファイナンスで資金を調達している一方、三菱重工業は水素・炭素回収関連の技術を通じ排出削減を目指している。
ゴールドマン・サックスのファンドに関しては、ソニーグループなどのテクノロジー関連企業が資産配分の約4分の1を占める。
ESG重視ファンドには、ブルームバーグのデータで気候変動やクリーンエネルギーなどの一般属性を持った戦略が含まれる。
中型株への投資
「オイスター・ファンズ – 日本オポチュニティーズ」については、日本の中型株がパフォーマンスに貢献。ブルームバーグのデータによると今年同種のファンドの90%を上回る成績を残している。運用マネジャーのジョエル・ル・ソー氏は、東京証券取引所が1月、企業の株主資本利益率(ROE)向上や株価純資産倍率(PBR)改善を後押ししたのは、中小型株に向けられたものだと話す。
中型株は「ESG評価の観点ではベスト・イン・クラス(業種の上位)ではないかもしれないが、だからといってESGのパフォーマンスが劣っているとは言えない」と同氏は指摘。
こうした銘柄について「単にESG格付け機関が好むような立派なリポートを作るだけのリソースがなく、不利であるだけだ」と述べた。
原題:Top ESG Funds in Asia Boost Returns In Formerly Unloved Market(抜粋)