Read the English version published on July 11, 2024.
この記事は、ブルームバーグのコモディティ・インデックス・プロダクトマネジャーのJim Wiederholdが執筆しました。
5月の世界全体の平均気温は15.91℃で過去最高を記録し、2024年は観測史上で最も暑い年となる見込みです。コモディティー市場もまた、需要面での新たな追い風と、投資家による同アセットクラスへ関心が再シフトしたことを背景に、堅調な1-3月(第1四半期)に続いて、4-6月(第2四半期)も活況な相場展開となりました。ブルームバーグ商品指数(BCOM)も2.9%上昇、2024年は年初来で5.1%増となっています。銅と金の価格は史上最高値を更新しました。金属、天然ガス、コーヒーが上昇相場をけん引し、ほとんどの農産物は出遅れの展開となりました。ブルームバーグが年初に提示したエネルギー移行や地政学的問題など、24年の主要テーマの一部が相場展開に寄与しましたが、第2四半期には人工知能(AI)向けの膨大な電力要件や必要なコモディティーなど、新たな興味深いマクロ経済のテーマも表面化しました。ボラティリティーは第1四半期の下落の後に上昇、季節的要因も重なり、商品先物カーブの大半は、より急なコンタンゴ状態(期先の先物価格が期近の先物価格より高い状態)に転じました。
ブルームバーグの2024年コモディティー見通しでは、今年の注目すべき六つの主要テーマの一つとしてエネルギー移行を強調しています。 化石燃料利用から電気利用への移行に伴うマクロ経済のシフトにおいて欠かせない工業用金属および貴金属に、投資家の関心がシフトしたため、第2四半期の上昇相場へとつながりました。 AI主導となった株式市場のテーマは、コモディティー市場にも波及しました。その背景として、AI技術の導入に伴う電力需要の高まり期待感から、天然ガス需要も回復し積極的なロングポジションが取られたことがあげられます。
「2024年コモディティ見通し」の他の二つのテーマはインフレと先物カーブの構造でした。 今年初頭に予想を上回るインフレ指標が幾度か発表され、第2四半期までにはやや落ち着きを取り戻したものの、インフレ指標は依然として米連邦準備制度理事会(FRB)の目標水準を上回っています。コモディティー市場の相場展開は、6月に入ってからやや弱含みとなっていますが、4月、5月は、なかなか収まらないインフレの影響で、堅調に推移しました。BCOM構成銘柄については、コモディティーの先物カーブの大半が、より急なコンタンゴ状態に転じました。当四半期末時点のBCOMのポジションは、1年前の強いバックワーデーションからコンタンゴへと移行ししており、これは市場参加者の先物ロングポジションのロールオーバー(限月乗り換え)が、マイナス利回りとなることを示唆しています(図表2)。このようなマイナス利回り圏への推移が今年いっぱい続くと、コモディティー投資のリターンにとって無視できない逆風となるでしょう。
14日間の相対力指数(Relative Strength Indicator, RSI)によると、株式は4月の売られ過ぎから6月末には買われ過ぎに転じました。この時期、株式や債券が売られ、ほとんどの個別コモディティーが上昇したため、コモディティーへのアロケーションを増やしていれば、高いパフォーマンスを得られていたでしょう。第2四半期に株価が史上最高値を幾度か更新した結果、ヘッジファンドのコミュニティーは、最近ハイテク株からの離脱を進めています。 セクターローテーションは、市場の転換点への期待が高いときに発生します。株式投資においては、公益事業へのシフトが起きているようで、同セクターは他のセクターよりもコモディティー動向重視に傾斜しつつあります。
コモディティー全体のボラティリティー(BCOMTR指数ヒストリカル30Dボラティリティー)は24年1-6月(上期)の終盤に上昇し、過去の平均値に近づきました。一方で株式のボラティリティーは、米国株価指数が史上最高値を更新するたびに低下しました。コモディティーは、異常気象、地政学的な出来事、あるいは特定の先物契約受け渡しに関する予測絡みの供給不安などから、時に爆発的なボラティリティーを引き起こす傾向が見られます。直近の材料としては、5月にニューヨーク商品取引所(COMEX)の銅先物市場で発生した大規模なショートスクイーズ(踏み上げ)による銅価格の急騰が、記憶に新しいところです。銅は、他の工業用金属に比べて導電性が高く、エネルギー移行のテーマにとって最も重要な金属の一つとなっています。ブルームバーグ工業用金属インデックスの中で、銅は最も高いウエートを占めています。工業用金属価格の上昇の動きは、1年前からの化石燃料中心のエネルギーからのシフトを示しています(図表3)。
投資家がコモディティー市場に参加する場合、考慮すべきことの一角に「季節要因」があげられます。穀物については、収穫後の特定期間に生産者による現物保有エクスポージャーのヘッジ取引によって、特定先物契約に対する追加的価格圧力がかかるというのが一般的となっています。エネルギー商品の需要サイドにも季節性が存在します。年間の異なる季節によって建物の暖房/冷房のニーズが変化するためです。また貴金属価格は、世界中の祝日を前にした宝飾品販売への需要に影響を受けます。広範なコモディティー市場全体を見ると、個々の商品の季節的要因が第2四半期にすべてでそろい、BCOMの今年のパフォーマンスは10年平均と同水準になりました。(図表4)。
結論として、第2四半期のコモディティ市場はエネルギーと金属がけん引して上昇しました。世界的に記録的な温暖化は、注視すべき重要なテーマとなっています。エルニーニョ現象からラニーニャ現象に移行する見通しで、今年後半には大西洋でのハリケーン活動が活発化する可能性があります。この状況は、エネルギー生産と供給だけでなく綿花のような農作物にも打撃を与える可能性があります。コモディティーの先物カーブは、より有利なプラスのロールイールド環境から遠ざかっているとはいえ、引き続きポジティブキャリーの源泉となっています。AI向けの電力ニーズと相まって、エネルギー移行のテーマは、エネルギーと工業用金属の価格動向を見る限り、今年が転換点にあると見ることができます。コモディティーのパフォーマンスは堅調で、季節性を考慮しても予想通りの展開となりました。24年7-12月(下期)のコモディティー相場はどのような展開となるのでしょうか?市場参加者にとって、ここから市場のけん引役となるマクロテーマに注視していくことが、アセットクラスとしてのコモディティーと、そのベンチマークとなるBCOMを理解する上で、とても重要になってくるでしょう。
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。