JPモルガンやアックマン氏が勝った23年-負けはクレディS債投資家

人工知能(AI)ブームが株式市場を救った。ベッド・バス・アンド・ビヨンドへの賭けはアマチュアのデイトレーダーを撃沈した。投資のプロは中国買いが裏目に出た。

銀行債から暗号資産(仮想通貨)に至るさまざまな資産が今年、予想に反して急落、あるいは急騰した。

仮想通貨の熱狂的なファンは一発逆転を果たした。ESG(環境・社会・企業統治)の「バブル」は崩壊。こうした動きの背景には、米連邦準備制度による破壊的な金融引き締めがあり、その結果、新たな勝ち組と負け組が生まれた。

AI:ヘッジファンドは出遅れ

2023年のAI関連株の上昇はハイテク企業と先見の明のある投資家に巨万の富をもたらした。さまざまな規模のポートフォリオが莫大(ばくだい)な利益を上げた一方で、抜け目のなさで知られるスマートマネーは大敗を喫した。

ヘッジファンドのテクノロジー株へのエクスポージャーは、AIブームに火がついた1月に数年来の低水準付近で推移していた。そのため、ヘッジファンドの運用担当者は歴史的なうまみのある取引から取り残されることになった。

ゴールドマン・サックス・グループのデータによれば、9月下旬までに運用方針は大きく転換し、ヘッジファンドのハイテク株エクスポージャーは過去の平均的水準の99パーセンタイルにまで上昇した。

結局、マイクロソフトやエヌビディアなど7大ハイテク銘柄は年初から12月20日までのS&P500種株価指数上昇の65%を担った。

Chip Shot

Nvidia has outperformed the S&P 500 by more than 200 percentage points

Source: Bloomberg

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債券:アックマン氏

「債券の年」は不発に終わったかもしれないが、それでも富豪のビル・アックマン氏は米国債が大きく変動したことで巨額の利益を得た。

パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントを創業した同氏は8月、インフレ率上昇と政府の財政赤字膨張を理由に米30年国債の値下がりを想定した取引をしていることを明らかにした。それは正しかった。10月下旬までに利回りは5%を超え、16年ぶりの高水準に達した。

地方銀行:JPモルガンの独り勝ち

過去数十年で最も急ピッチの金融引き締めは、銀行の金利収入を増やし、景気拡大が続けば与信拡大と投資が促進されるはずだった。実際、ゴールドマンによれば、一握りの地方銀行が破綻する数週間前、投資信託は金融株を大幅なオーバーウエートにしていた。

その後、金融危機以来の銀行業界の大混乱がウォール街を動揺させた。緊急措置や救済、政府介入、議会公聴会、そして銀行業界に対する新ルールの導入が始まった。

Tanking Banks

Regional lenders slumped in 2023, while the S&P 500 rallied

Source: Bloomberg

JPモルガン・チェースは経営破綻したファースト・リパブリック・バンクを買収。これはジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)にとってここ数年で最高の取引の一つになるかもしれない。

中国:復活ならず

ほとんどの人が中国について見誤った。ゴールドマン・サックスはMSCI中国指数とCSI300指数の2桁台の上昇を予想、モルガン・スタンレーは昨年12月に中国株をオーバーウエートに転換した。

しかし、新型コロナウイルス対策後の経済再開による復活は実現しなかった。株価はパンデミック前の水準に遠く及ばず、中国の不動産債務危機はさらに多くの企業に広がった。12月20日現在、MSCI中国指数は年初来で14%余り下落している。

Reopening Trade Backfires

Chinese stocks underperform global peers

Source: Bloomberg

日本: 株価が上がる国

ここ数年、世界の株式市場において常に不調だった日本が、投資家の憧れの的となった。経済成長の好転や企業改革の見通し、日本銀行が超低金利政策をやめる準備がようやく整ったという楽観など、幾つかの要因が重なって日本への注目度が高まった。中国の不況とウォーレン・バフェット氏からの支持も寄与した。

伝説の投資家バフェット氏は4月、日本の商社への出資比率を高めた後、さらなる日本への投資を検討していると明らかにした。同氏が率いるバークシャー・ハサウェイは6月、日本の商社5社への出資比率をさらに高めたと発表。TOPIXは33年ぶりの高値まで上昇した。

以前は危険な戦略だった日本国債の空売りも成功した。日銀の超金融緩和政策終了に賭けてきた投資家たちは、日銀が10年債利回りの厳密なコントロールを緩めたことで、ようやく一定の成果を得た。

10年債利回りは一時11年ぶりの高水準に達した。日銀が予想ほどタカ派的でないことが判明したためその後低下したが、それでも、RBCブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング氏ら日本国債弱気派が、今年の勝ち組であることは明らかだ。

ビットコイン:復活

仮想通貨とその評判は、サム・バンクマンフリード氏の交換業者FTXの破綻の影響で動揺したままだった。ビットコインが復活する見込み、ましてや上昇する見込みはないように思われた。

しかし6月に入ってブラックロックを筆頭とする運用会社がビットコインのスポット価格に連動する上場投資信託(ETF)の認可申請を相次いで提出したことで、持続的な回復が定着した。

To the Moon?

The largest cryptocurrency has more than doubled in 2023, though it remains well below its all-time high of almost $69,000

Source: Bloomberg

これらのETFが承認されビットコインの普及に拍車がかかるとの楽観的な見方や米利下げ期待などが相まって上昇が加速し、ビットコインは今年2倍以上に値上がりした。

ベッド・バス・アンド・ビヨンド:ミーム株投資家への教訓

ベッド・バス・アンド・ビヨンドが4月の破産に向かっていた時も、同社の株価は不可解なほど高値を維持していた。同社は、パンデミックから生まれたミーム株ブームの恩恵を受けた代表格だ。このブームは、一握りの企業の株価を一見、理由もなく高騰させ続けた。

ベッド・バス・アンド・ビヨンドはヘッジファンドのハドソン・ベイ・キャピタル・マネジメントから資金を調達し延命を図ったが、結局破綻。同社が時間切れになった時、同社株を手にしていた投資家も自分たちの運を使い果たした。

ESG:降参

環境・社会・ガバナンス運動を推進する上で、進歩主義者と強硬な資本家の同盟は決して容易なものではなかった。しかし今年、ESGのアジェンダは政治的対立軸のあらゆる側面から大きな打撃を受けた。

このセクターは、その手法や透明性、「グリーンウォッシング」による目標の効果誇張の可能性について、監視団だけでなく米共和党議員からも疑問の声が上がっている。一部の業界ウォッチャーは、ESGは 「必然的な終焉(しゅうえん)」に向かっているとまで言っている。

最大の犠牲者はブラックロックのETFグループとヘッジファンドのベテラン運用者ジェフ・ウッベン氏だった。ブラックロックはESGに特化した最大のETFから90億ドル以上が引き揚げられ、年間流出額としては過去最大を記録した。ウッベン氏は社会的責任投資ファンド会社、インクルーシブ・キャピタル・パートナーズを先月突然閉鎖した。

クレディ・スイス:AT1債の灰から

クレディ・スイス・グループの突然死は、同行の最もリスクの高い債券を保有していた投資家に予想外の壊滅的損失を与えた。マネーマネジャーやシニアバンカーは反発し、銀行資金調達市場は危機に陥るだろうと警告した。

170億ドルのいわゆるその他ティア1(AT1)債を無価値にするというスイス当局の決定は、長い負け組リストを残した。その中にはパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)やインベスコ、三菱UFJフィナンシャル・グループの富裕層顧客も含まれている。

一方、バーゲンハンターのファンドはチャンスを見いだした。ゴールデンツリー・アセット・マネジメントは約3億ドルのAT1債を値下がりした価格で購入し、1億ドルの利益を得た。

原題:The 11 Big Trades of 2023 – Market Busts to Career-Making Wins(抜粋)

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