世界最悪の汚染国でサステナブル金融が成長

本稿はブルームバーグニュースにより執筆され、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。(Read the English version published on March 10, 2019.)

Tao Zhang氏は、特に家畜の温室効果ガス排出量に関して、中国のサステナビリティを強気に見ています。米中合同のインパクト投資コンソーシアムDao Venturesの創設者であるZhang氏は、新会社のDao Foodsを通じて、中国の消費者向けの一層環境に配慮した植物由来の肉や人工培養肉への投資を加速することに、過去1年間の大半を費やしてきました。

気候変動の問題に力を注いでいる活動家は、中国の肉食意欲の高まりが天然資源をさらに圧迫し、メタン排出量を急増させている、と懸念しています。しかし、Zhang氏と新勢力のインパクト投資家集団は、この問題と中国がほかに環境面・社会面で抱えている多くの懸念要因は、資金で解決できると信じています。

北京とワシントンを行き来するZhang氏は、「中国は水と天然資源が不足しているため、そうした方法で解決する必要がある。」と述べています。「中国は巨大な消費市場であることから、私達は常に中国の消費者自身も問題の解決に参加させる方法を考えている。」

自社で、過去10年にわたって、中国を中心に2億ドルを超える環境・社会関連の投資を実行または推進してきたZhang氏によると、今では中国でインパクト投資家として活動しても、以前ほど孤立感を味わわずに済むそうです。そうした活動には、クリーンな冷蔵技術を開発するプロジェクトや、農業廃棄物を調理用木炭に転換するプロジェクトも含まれます。

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インパクト投資は世界的に伸びているトレンドで、社会的な懸念に対処しつつ、市場金利並みのリターンを獲得しようとするものです。地球上で最も人口が多く、最も環境を汚染している国である中国では、現地の課題の解決は、二酸化炭素排出量の削減や持続可能な農業の確立を目指す世界的な運動を大きく後押しすることにもなるという、追加的なメリットもあります。

中国政府が野心的な環境目標を打ち出したことが、そうした機会の一部を生み出しています。すなわち政府は、環境汚染対策で、2020年の代替燃料車200万台の販売を目指しています。さらに中央銀行の中国人民銀行は、グリーン・ファイナンスの奨励を推進しています。同行は、6月に、中期貸出オペレーションで受け入れる担保の範囲を拡大して、グリーン経済関連の債券も含める意向を発表しました。

UBSグループが実施したサステナブル投資への関心度を査定する世界規模の調査で、昨年、中国の富裕層の投資家がトップに立ったのは、こうした支援が一因になったのかもしれません。UBSグループのサステナブル金融に焦点を当てた部門をまたがる構想であるUBSイン・ソサイエティで、サステナブル金融のグループ・ヘッドを務めているRina Kupferschmid-Rojas氏は、「投資家は、中国政府が環境政策を一段と迅速に進めているのを目の当たりにして、投資機会を見出している。」と述べました。

この調査で判明したことに、100万ドル以上の投資可能資産を保有する中国の投資家の約60%が、環境、社会、ガバナンス(ESG)の問題に焦点を当てた保有銘柄を既にポートフォリオに組み入れている、と回答しました。また、中国の富裕層の投資家の74%が、次の10年でサステナブル投資が新たな標準になると予想しているのに対して、米英の富裕層の投資家でそのように予想しているのは、わずか32%でした。

Kupferschmid-Rojas氏は、調査で判明したほかの事柄について、これからの中国人の富豪や大富豪は、一代で財を成したより若い年齢の女性が増える可能性が高く、それは、社会的なリターンと金銭的なリターンの双方を獲得したいと考える投資家の間でも、共通して見受けられる特性だと説明しています。調査会社のWealth-Xによると、世界の超富裕層の女性の9%以上が中国か香港に拠点を置き、その資産総額は4,000億ドル近くにのぼります。

確かに、中国でのサステナブル投資には十分な勢いがありますが、まだ初期段階にすぎません。さらに、他の地域でインパクト投資を推し進めた年金基金が、中国には存在しません。BNPパリバ香港で株式・デリバティブ戦略の責任者を務めているJason Lui氏も、これまで短期志向の市場であった中国では、インパクト投資などの価値と長期戦略を重視する投資家は「動き出したばかり」と評しています。ただし、中国はアジア内でより安定した投資先のひとつのように映り始めている点も付言しました。

国連が支持する「責任投資原則(Principles for Responsible Investment)」の中国主席代表を務めるLuo Nan氏は、中国のESGデータの信頼性を高めると同時に、インパクト投資上の問題を減らすには、ESG投資を支える法規上の枠組みを強化する必要がある、と指摘しています。期待されていて、ついに実現する事柄もあります。上海証券取引所と深圳証券取引所は、ESG報告の改善を目指した(国連の)持続可能な証券取引所イニシアティブ(Sustainable Stock Exchanges Initiative)に参加しました。さらに2020年には、中国証券監督管理委員会(China Securities Regulatory Commission)が上場企業に対し、事業におけるESGリスクの開示を義務付ける予定です。

その一方、投資会社は、突然増えたインパクト投資戦略需要に対応しようと急いで準備しています。インパクト投資を奨励するニューヨークの非営利団体Global Impact Investing Networkの最高経営責任者を務めているAmit Bouri氏は、次のように述べています。「香港と中国本土の両方で、関心が大いに高まっている。そこで、多くの民間銀行が大急ぎで商品を市場に投入している。」

北京に本社を置く証券会社の中国銀河証券(China Galaxy Securities Co.)は、ここ数年でグリーンボンドの引受けや環境関連企業への他の資金調達手段の提供を実施してきましたが、さらなるグリーン戦略の推進を目指す旨を表明しています。同社は、上場企業向けESGレーティング・システムの導入を計画しており、高いスコアを獲得した企業を投資家に推奨する予定です。中国銀河証券で機関投資家向けサービス担当の取締役を務めているCharles Yu氏は、中国現地のマネジャーは、昨年の長生生物科技(Changsheng Bio-Technology Co.)のワクチン問題のようなESG関連の「地雷」を回避できる可能性が高まっていると確信している、と述べました。さらに「実際に、ESGの原則に従えば、地雷が少ない先進国よりも中国の方が高いリターンを獲得できる。」と自信をのぞかせました。

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによると、中国は既にクリーン・エネルギー投資で世界最大のターゲットになっており、昨年このセクターに1,000億ドル以上の投資資金が配分されました。サンフランシスコのU.S.-China Social Innovation Consultingの創業者であるBin Li氏曰く、インパクト投資家は、初期のベンチャー・キャピタルや融資を主体にしているものの、持続可能な食料やクリーン・エネルギーだけでなく、中国の輸送、リサイクル、ヘルスケア、高齢者介護、教育でも、潜在的な投資機会を有しています。

実際、中国は幸運の象徴とされている豚(日本ではイノシシ)の年になったこともあって、さまざまな社会還元方法が出現している模様です。Dao VenturesのZhang氏も、次のように述べています。「中国では昔から、金持ちになったら他人を助けるべきだと言われている。そして今、どのように自分の富を活かして社会にとって有意義なことをするかを、確かに考え始めている。」