第1四半期のサステナブル債:関税の逆風下でもスプレッド改善

Read the English version published on May 9, 2025.

本稿は、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のESGシニア・ストラテジストChris Rattiと、ESGストラテジー・アソシエイトのJia Jun Barによる分析です。ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。

2025年第1四半期、サステナブル債は、関税や米トランプ政権による反ESG圧力といった逆風にもかかわらず、従来型の投資適格社債を上回るスプレッド面でのパフォーマンスを示しました。ブルームバーグ・グローバル社債グリーン・ソーシャル・サステナビリティ・ボンド・インデックスのスプレッドは、一般の投資適格社債と比べて縮小しています。

金融セクターでは、グリーン債が一般債よりも顕著に低いスプレッドで取引され、プレミアム(グリーニアム)が明確に現れました。一方、工業および素材セクターでは、炭素排出量の多さを背景に、ディスカウントが最大となっています。地域別に見ると、米州(北中南米)は特にエネルギーおよびヘルスケアセクターでグリーニアムが拡大しました。工業セクターでは依然としてディスカウント幅が最も大きい状態が続いています。EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域では、第1四半期末時点では全体的にディスカウントが見られましたが、エネルギー安全保障への関心が高まる中、エネルギーおよびヘルスケアセクターの一部でグリーニアムが確認されました。アジア太平洋地域のサステナブル債は全体的にややディスカウントされたものの、素材セクターではプレミアムに転じています。

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第1四半期のグリーン債、関税圧力下でもプレミアム改善

第1四半期を通じて、グリーン債のスプレッドは世界的に拡大したものの、その拡大幅は投資適格社債全体と比べて小幅にとどまりました。過去5年間の12カ月正規化ベースでは、グリーン債と一般社債のスプレッドはおおむね連動してきましたが、直近ではかい離が見られます。投資適格社債全体のスプレッドが拡大する一方で、グリーン債のスプレッドは限定的な動きにとどまっており、旺盛な需要がスプレッドの下支えとなっています。BIでは、こうした状況を踏まえ、グリーン債のスプレッドは今後も低水準で推移すると予想しています。また、米インフレ抑制法(IRA)は、トランプ氏の発言や関税を巡る応酬によって市場の不透明感が高まる中にあっても、依然として超党派の支持を維持しています。

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地域別の動向:米州は回復、EMEAは依然としてディスカウント状態

米州は、関税を巡る不安が高まる中にあっても、2024年を通じて4四半期連続でグリーニアムを維持し、2025年初頭には一時的にプレミアムを失ったものの、第1四半期末には加重平均で1.7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)まで回復しました。アジア太平洋地域は、2024年第4四半期の3.2bpのディスカウントから改善が進み、2025年第1四半期末にはディスカウント幅が0.6bpに縮小。プレミアム圏への回復も視野に入ります。一方、EMEAでは、グリーン債が同等の一般債よりも2.4bp広いスプレッドで取引されており、最大のディスカウント状態にあります。ただし、2024年末と比べて一定の改善は見られます。なお、米州およびアジア太平洋地域では、劣後グリーン債のスプレッドが、同等の一般債を上回る水準で拡大しています。

Corporate Greeniums by Region

セクター別の動向:金融が恩恵、炭素多排出業種は引き続きディスカウント

第1四半期末時点で、金融セクターのグリーン債は、同等の一般債と比べて1.8bp低いスプレッドで取引されており、4四半期連続でプレミアムを維持しました。2024年第4四半期末にはほぼゼロであったプレミアムが、改善した形です。生活必需品セクターも、2024年末に4.4bpのディスカウントを記録していましたが、2025年第1四半期末には1.3bpのプレミアムを回復しました。一方、素材や工業など炭素排出量の多いセクターでは、引き続き最大のディスカウントが見られます。1月から2月にかけてスプレッド格差は9bp縮小したものの、2月末以降は再び拡大傾向にあります。※本分析は、弁済順位がシニアの債券を対象としており、ジュニア債や劣後債は含まれていません。

Global Corporate Greeniums by Sector

グリーニアムの定義と算出方法

グリーニアムとは、グリーン債が同等の一般債(非グリーン債)と比較して得られるプレミアムを指します。オプション調整スプレッド(OAS)に基づいて評価され、OASがマイナスであれば、プレミアム(グリーニアム)が付いている状態を示します。BIでは、ブルームバーグ・グローバル社債グリーン・ソーシャル・サステナビリティ・ボンド・インデックスの構成銘柄ごとに、グリーニアムを算出しています。具体的には、各グリーン債について、償還期限の前後に位置し、かつ同じ弁済順位を持つ2本の一般債を、ブルームバーグ・グローバル総合社債インデックスから選定し、そのスプレッドと比較することでプレミアムを測定しています。グリーニアムは、グリーン債のオプション調整スプレッド(OAS)と、比較対象となる2本の非グリーン債から内挿(補間)したOASの差分によって算出されます。また、グリーンインデックスのウエートを用いて、弁済順位別やブルームバーグ産業分類基準(BICS)のセクターレベルで集計を行っています。比較可能な一般債が存在しない場合や、必要なデータが不足している場合は集計対象から除外されます。

Global Greenium Calculation Methodology

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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