本稿は、Umer Sadiq、中込安政が執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。(2023年7月13日)
【背景】
米ドルに対して8カ月ぶりの安値水準に達した円だが、季節要因の分析、デリバティブ市場、市場予測などは円の反発を示唆するものとなっている。
過去20年間で見ても、季節的に7月の円相場は年間で最も顕著な強気相場となってきた。この6カ月間で、空売り筋による円先物のネットベースの売建玉も過去最高レベルに達した模様だ。オプション市場も円高を予兆させるものとなっており、アナリストのコンセンサスも強気だ。
ブルームバーグのSEAG、BI、VOLC、WCRS、FXFM機能で為替市場を分析する。FFM(端末活用術)の記事を受信登録するには、NSUB FFMSTORY <GO>を実行。
【課題】
円はドルに対して4-6月(第2四半期)に約8%下落し、昨年11月以来の安値に近づいていた。一時、1ドル=145円を超える水準となったことで当局による円安けん制発言が相次ぎ、政府がドル高を抑えるために介入するのではないかとの臆測が飛び交った。また、日銀が超金融緩和方針を7月末に変更するとの警戒感も強まっている。
季節要因チャートを表示する方法は以下の通り:
- コマンドラインに「yen」と入力し、「USDJPY Curncy – 米ドル/日本円クロス」を選択
- 「seasonality」と入力し、「SEAG – シーズナリティ・チャート」を選択。クイック入力はUSDJPY Curncy SEAG <GO>
- チャートの上に表示されるグレーの[ヒートマップ]タブをクリック
- 画面左上の「年数」を「20」に設定
ドル・円ペアは夏季、季節的に軟調となる傾向がある。20年過去平均をみると、7月は0.65%の下落となっており、1年の中で最も下落幅が大きい。
ここ数カ月、トレーダーの間では円の売り残が過去最高に達し、非常に偏ったポジションになっているため、介入リスクがショートスクイーズを引き起こすのではないかとの懸念が高まっている。円のショートポジションを追跡する方法は以下の通り:
- コマンドラインに「bi fx」と入力し、「BI CURRG -ブルームバーグ・インテリジェンス:通貨(グローバル)」を選択
- データ・ライブラリーの下にある「FXポジショニング」をクリック
- 「JPY(12,500,000)」の左側にある小さな矢印をクリックし、次に 「非商業部門:ネットポジション」右側のチャートアイコンを選択
- 画面右下にあるグレーの[他のデータを選択]ボタンをクリックした後、レバレッジファンドにチェックマークを付ける
- 「周期」を「52週」に設定。チャートの上に表示されるバーチャートのアイコンをクリック
【追跡】
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータに基づくと、米連邦準備制度理事会(FRB)の到達金利予想がさらに上昇し、ヘッジファンドとレバレッジファンドによる円のネットベースの売り建玉は6月初旬以来再び増えている。スイスのプライベートバンク、ロンバー・オディエによれば、日銀は高インフレと円安再開に対応するため、年内にイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)政策を修正または撤廃する可能性がある。
こうした記録的な新規売りにもかかわらず、インプライドおよび実現ボラティリティーは低下している。ボラティリティーの変化を追跡する方法は以下の通り:
- コマンドラインに再度「yen」と入力し、「USDJPY Curncy」を選択。「vol」と入力し、「VOLC-ボラティリティー比較」を選択。クイック入力はUSDJPY Curncy VOLC <GO>
- チャート上部の3つのボックスにチェックマークを入れる最初の2つのボックスで「通貨」を「USDJPY 」に設定
- 「データ項目」の1行目を「インプライドボラティリティー」に、2行目を「実現ボラティリティー(日次)」に設定する。双方とも「期間」は「3カ月」に設定。3番目のボックスは「スプレッド(絶対値)」のままとする
- 「周期」を「12カ月」に設定。<GO>キーを押す
- コマンドラインに「world currency ranker」と入力し、「WCRS」を選択
- 左側のメニューで「ボラティリティー」の次に「25Dリスクリバーサル」をクリック。クイック入力はWCRS RR <GO>
- メインパネルで、「バスケット」を「G10」、「基準」を「USD」、「期間」を「3カ月」に設定
チャートでは、インプライドボラティリティーを測定するUSDJPYの25デルタ・リスクリバーサルが7月13日時点で円コールに大きく偏っている一方で、スイスフラン以外の他の主要10通貨ではプットオプションの方に傾き、センチメントが弱含んでいることを示している。円のラインをクリックし、「GP-ラインチャート」を選択すると、スキューが昨年9月下旬の弱気水準とは程遠いことが分かる。
アナリストも円に強気だ。円予想をオプション市場が示唆する確率と比較する方法は以下の通り:
- コマンドラインに「yen」と入力し、「USDJPY Curncy」を選択。「fx forecast」と入力し、「FXFM — FX金利予測モデル」を選択。クイック入力はUSDJPY Curncy FXFM <GO>
- 右側チャートの下にある「現在のスポットレート」、「アナリストコンセンサス」、「レンジ」にチェックマークを入れる
- 表中の「6カ月」ラインをクリック
この機能を使うと、オプション市場が示唆する円の値動きの確率分布を示す曲線(赤色)と、各アナリストの予想(緑色)、およびコンセンサス予想(アンバー)を確認できる。アナリストによる6カ月後の円コンセンサス予想は、現在のスポットレートである1ドル138円前後から133.71円まで円高になるというものだ。また、確率レンジでも円は強含んでいる。
ブルームバーグの各機能の詳細は、BHL <GO>を実行。