Read the English version published on June 3, 2026.
本稿は、ブルームバーグ・インテリジェンスのシニアアナリスト、Eric Balchunasが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。
「テマ・スペース・イノベーターズETF」(NASA)は、イーロン・マスク氏率いる米宇宙会社スペースXを約10%組み入れていることや、競合する上場投資信託(ETF)を上回るパフォーマンスを示していることなどを背景に、設定からわずか2カ月で最大規模の宇宙関連ETFに浮上しました。この急速な資金流入は、歴史的規模の新規株式公開(IPO)を前に、未公開市場への投資エクスポージャーを求める投資家の動きが強まっていることを示しています。NASA、「バロン・ファースト・プリンシプルズETF」(RONB)、「ERシェアーズ・プライベート・パブリック・クロスオーバーETF」(XOVR)など、スペースXを比較的大きく組み入れているファンドには、多額の資金が流入しています。背景には、投資家が市場で上場への期待が高い銘柄の一つであるスペースXに、上場前から間接的に投資できる手段を探していることがあります。ただし、上場への期待が、実際に取引開始後の株価パフォーマンスにつながるとは限らない点には注意が必要です。
スペースX効果でNASAの運用資産拡大、競合ETF上回る
NASAは設定からわずか2カ月ながら、すでに約13億ドル(約2080億円)の資産を有する世界最大の宇宙関連ETFとなっており、確立されたカテゴリーではほぼ前例のない急成長を遂げています。その背景にあるのが、特別目的事業体(SPV)を通じたスペースXへの約10%のエクスポージャーです。これにより投資家は、今夏に予定されるIPOを前に、未上場企業のスペースXに上場市場を通じて投資できる数少ない手段の一つを得ることになります。パフォーマンスの好調さもこの急拡大を後押ししています。NASAは設定以来約53%上昇しており、「プロキュア・スペースETF」(UFO、37%上昇)、「SPDR S&Pケンショー・ファイナル・フロンティアーズETF」(ROKT、26%上昇)、「アーク・スペース・エクスプロレーション・アンド・イノベーションETF」(ARKX、23%上昇)といった競合ETFを上回るパフォーマンスを示しています。
これら3本のETFはいずれも現在スペースXを保有していますが、IPO後に同社株を組み入れる可能性が高いETFは他にも存在します。例えば「インベスコQQQトラスト・シリーズ1ETF」(QQQ)は、IPOから15日後にスペースXを組み入れることになるとみられています。

NASA、SPV経由のスペースXへのエクスポージャー
スペースXへの投資機会を提供しているETFは、NASAだけではありません。RONBとXOVRもスペースXのポジションを保有しており、IPOを前に投資家が同社への投資機会を求める中、3本のETFはいずれも資金流入が加速し、運用資産残高が大幅に増加しています。RONBは、関連するバロンの投資信託から移管されたスペースX株を直接保有している点で、他のファンドとは異なる構造となっています。同ETFはスペースX株を追加取得する予定がないため、現在約3%のスペースXへのエクスポージャーは今後の資金流入に伴い徐々に低下していく見通しです。
XOVRは、SPVを通じてスペースXへの投資エクスポージャーを提供しています。NASAは、スペースXのIPO登録届出書「S-1」提出を前に資金流入が加速したことを受け、スペースXへの配分を拡大しました。SPV経由の保有分の評価は、IPO後に簿価ベースから市場価格ベースへと徐々に移行するとみられており、それに伴い開示されるエクスポージャー比率も変化していく見通しです。

XOVRが示す未公開企業への投資需要
この急激な資金流入のきっかけとなったのは、XOVRというティッカーシンボルを持つあまり知られてないETFでした。同ETFは、1年以上前にスペースX関連のSPVへの投資を行ったのを機に、無名の存在から資金を呼び込む存在へと一気に変貌しました。こうした関心の高まりを背景に、同ETFの運用資産残高は10億ドルを突破し、本稿執筆時点での過去1週間の資金流入額と出来高はトップクラスとなっています。スペースX関連のSPVは、市場での評価額を上回る価格で取得された可能性が高く、さらに手数料が上乗せされている可能性もあります。投資家は、RONBのようにスペースX株を直接保有するETFではなく、SPV経由で保有するETFを購入する前に、この点を理解しておく必要があります。
スペースXを組み入れている投資信託が数本あるほか、米アーク・インベストメント・マネジメントのインターバルファンド(一定期間にのみ解約が可能なファンド)もあります。スペースXへのエクスポージャーを求めるのであれば、投資家にとっては、こうしたファンドを保有する方が望ましい選択となる可能性があります。

アークのインターバルファンド、スペースXなどを保有もETFではない
スペースXの組み入れ比率が高いもう一つのファンドが、キャシー・ウッド氏の「アーク・ベンチャー・ファンド」(ARKVX)です。このインターバルファンドは同氏が掲げる「イノベーション」投資戦略を未上場市場へ拡張するために設定されました。スペースXの組み入れ比率は約10%となっています。ポートフォリオでは、マスク氏率いる脳インプラント開発会社、米ニューラリンクが2.5%を占めており、このほか人工知能(AI)開発の米OpenAI、同業の米アンソロピック、予測市場プラットフォームの米カルシなど、注目度の高い未上場企業も含まれています。ARKVXは、設定から3年超が経過したものの、運用資産残高は4億5500万ドルにとどまり、大半のアークETFを大きく下回っています。しかし、パフォーマンスは堅調です。設定以来、同ファンドは約150%の上昇を記録しており、この上昇率はS&P500種株価指数の108%や、アークの旗艦ファンド「アーク・イノベーションETF」(ARKK)の98%も上回っています。
そのため、多くのETF発行体は、プライベートエクイティー(PE)だけでなく、プライベートクレジットもETFの枠組みに組み込もうとしています。背景には、未公開資産への投資をETFを通じて行いたいという投資家の需要があります。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
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