Read the English version published on November 21, 2022.
本稿はブルームバーグ・インテリジェンスのシニア産業アナリスト Anurag Rana およびアソシエートアナリスト Lucas Ramadanが執筆し、ブルームバーグターミナルに掲載されたものです。
アプリケーションソフトウエアのクラウド移行はまだ初期段階にあり、パブリック・クラウド・モデルを採用したものは市場全体の半分以下にとどまっています。景気に不透明感がある中でもデジタル改革の必要性が高いことに変わりはないため、クラウドの優れた機能性が、この市場の1桁から2桁前半の成長を促進し続けると考えられます。今のところクラウド普及率が低い財務関連ソフトウエアは、次の市場拡大が期待される分野でしょう。
クラウド普及率はCRMで76%、エンジニアリングで8%
コラボレーションアプリケーション、顧客管理(CRM)、人事など特定の機能分野は、業界の垣根を越えて共通するという特性があるため、金融サービスやエンジニアリングなどの分野と比べて、クラウドの普及率がはるかに高い状態です。例えば、市場調査会社IDCのデータによると、コラボレーションアプリケーションの87%がクラウド・デリバリー・モデルを採用しているのに対し、エンジニアリングではその比率が8%にとどまっています。顧客サービスの分野でクラウドベースのアプリケーションの需要が強いことから、CRMソフトウエアを手掛ける米セールスフォースの増収率は2桁に達しています。またクラウドベースの人事アプリケーションのニーズは、企業向けクラウドアプリケーションを手掛ける米ワークフォースの成長を促進しています。
マクロ経済要因や地政学要因から圧力がかかるものの、これらのカテゴリー向けの支出は、状況が改善し、企業のレガシーインフラの更新が続くにつれ、今後12カ月間にわたり堅調に推移するとブルームバーグ・インテリジェンス(BI)では予想しています。
機能別のクラウド普及率
ERPは次にクラウド移行の加速が期待される分野
統合基幹業務システム(ERP)は、オンプレミス(サーバーなどの機器を社内に設置してシステムを運用する方式)からクラウドへの急速な移行が次に起こる大きな機能分野だとBIでは考えています。このカテゴリーの支出が増加しているからですが、経済環境が悪化すれば、追い風が吹くのが遅れる可能性があります。ERPには、中核的な財務アプリケーション、プランニング、調達などの分野が含まれ、その全体の市場規模は660億ドル(約9兆330億円)に上りますが、クラウドの普及率はわずか52%にすぎません。独SAP、米インテュイット、米オラクル、米マイクロソフトは、オンプレミスおよびクラウドベースのERP市場をリードしています。ワークデイはクラウド専門の業者で、人事アプリケーション市場での成功を武器に、このセグメントで信頼を勝ち得ています。
ERPの機能市場別クラウド普及率
オンプレミスの人事・CRMソフトではSAPがリード
クラウドベースのCRMと人事ソフトウエアでは、セールスフォースとワークデイが上位2社となっていますが、SAPはどちらの市場でも最大のオンプレミス提供モデルを持っています。SAPはこうした位置付けにあるため、これまで主に企業買収を通じて築いてきたクラウド市場でのプレゼンスを拡大するチャンスが十分にあります。
オラクルもこの市場の有望な参加者で、オンプレミスの顧客をクラウドに誘導することによって、クラウドベースの製品で一貫して成長を見せています。
オンプレミス型CRM・人材管理システムのシェア
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。