SOFRの利用拡大で、LIBOR代替に関しては時間の問題か

Read the English version published on October 15, 2018.

変動利付債のベンチマークに担保付翌日物調達金利(SOFR)が使われるようになり、米国ではLIBORの代替として受け入れられつつあります。先物取引の出来高も増加傾向にあることから、いずれは先物市場を通じたカーブの構築が可能となり、LIBORからの移行がよりスムーズになるでしょう。

SOFRリンク変動利付債の登場

SOFRの利用が拡大するためには、SOFRを参照する現物債市場の成長が不可欠です。現物債とデリバティブ市場を併用することにより、SOFRのキャッシュフローと固定のキャッシュフローを交換することができるようになり、プライスディスカバリーに役立ちます。SOFRにリンクした変動利付債(FRN)を最初に発行したのは、米ファニーメイ、世界銀行、クレディスイスでした。発行額は小さいものの、SOFR市場の成長を促す貴重な第一歩でした。

プライシングを比較すると、SOFRとLIBOR間のベーシスを市場が調整してきていることが分かります。ファニーメイの2020年3月満期FRN の直近のディスカウントマージンは3カ月LIBORマイナス12bpでしたが、2020年1月満期SOFRリンクFRNはプラス12bpでした。それでもオプション調整後のスプレッド利回りはそれぞれ2.57%、2.55%でした。

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SOFRは期間構造がまだ不明瞭

SOFRを使う上でいま大きな課題となっているのがターム物のレートが存在しないことです。これまで発行されたFRNはSOFRの単純平均を使っていますが、いずれはSOFR先物市場からターム物レートを算出し、債券やスワップの参照金利として使うことができるようになるでしょう。今はまだできないというだけです。それでは、SOFRの単純平均とこれまで使われてきた他のレートとの差はどれくらいあるのでしょうか。

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翌日物SOFRの平均値はFF実効レートを下回っていますが、3カ月間(61取引日)の平均を取ってみると、SOFR平均値はフェデラルファンドを参照する3カ月OISとほぼ等しくなっています。算出にあたって、当初はニューヨーク連銀が公表する気配値を使い、2018年3月以降は公表が開始された実際のSOFRを使用しました。それが平均値に差が出た理由です。

長期SOFR先物のプライシングが課題

SOFR先物の取引開始後出来高、建玉共に徐々に増加していますが、満期が短い取引の方が出来高が多くなっています。ユーロドル先物にも同様の傾向が見られますが、それでもブルーパック(4年先物)の出来高はかなり多くなっています。しかしSOFR先物については、現時点では2019年3月限を超える建玉はあまり多くありません。現物債市場で世銀のFRN2年債など長い年限の債券の発行が増えれば、長期の先物に対する需要も増えてくると思われます。

新商品の普及には時間がかかるのが常であり、SOFR先物も現物債の発行が少ない現時点では例外ではありません。銀行は、SOFRを使ってフォワードレポのリスクをヘッジすることが技術的には可能ですが、現状では限られているようです。

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レポのヘッジにSOFR先物が有効

レポによる資金調達に依存する金融機関にとっては、SOFRを参照するデリバティブが調達コスト固定に役立つ可能性があります。調達コストが今後上昇する可能性がある環境下でヘッジによりコストを固定するためには、ユーロドル先物やFF金利先物など流動性が高い先物市場か金利スワップなどの店頭デリバティブが通常使われます。SOFRを参照する商品は流動性はまだ高くありませんが、一般担保レポと比較した際のスリッページが他の商品よりもやや小さく、ベーシスリスクを軽減することができます(完全に排除することはできません)。

例えば、2018年初めに、3カ月LIBORが他の短期商品より大幅に上昇し、ベーシスリスクが有意に拡大しました。ヘッジをかけていた市場参加者はこの期間中アウトパフォームしたと思われますが、4月以降LIBOR・OISのベーシスが縮小し、ヘッジ効果が薄れることとなりました。

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SOFR移行に備える

SOFRへの移行により、多くの変動金利商品や市場に影響が出ると考えられます。スプレッド標準から規約の文言までが変更となり、ヘッジや投機に使用可能な新たなデリバティブの形ができあがっていくでしょう。この不可避の変化を乗り切るためには、すべての要素が時間の経過と共にどう調和していくのかを理解することが非常に重要となります。