本稿はブルームバーグのグローバル制裁データ・アナリストBrian Moranが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。ターミナルユーザー様は、こちらから全文をお読みいただけます。(2023年11月21日)
【背景】
半導体業界に投資家の注目が再び集まりつつある。半導体関連株の急騰をけん引したのは、単なる人工知能(AI)ブームではなく、半導体製造装置製品を対象とした米国輸出規制の強化だった。オランダのASMLホールディング、東京エレクトロン、米国のKLAをはじめとする半導体製造装置メーカーは、中国への売上高比率が高い。
これら企業の株価は、米国が新たな対中半導体関連製品輸出規制を発表した10月17日以降、2桁台の上昇を見せた。中国では季節的に国内半導体メーカーの在庫が積み上がり発注減となっていたかもしれないにもかかわらず、同規制が11月17日金曜日に発効するのを目前に、駆け込み需要によって半導体部品輸入が急増した。
サプライチェーン分析からは、半導体部品サプライヤーが中国と袂(たもと)を分かつのは難しいことが分かる。ブルームバーグの端末機能を活用して半導体業界を分析する。
【課題】
まず中国への売上高比率が最も高い半導体製造装置サプライヤーを特定する。
そして時価総額10億ドル以上のグローバル半導体部品メーカー大手のうち、売上高全体の10%以上を中国で稼ぐ企業が一覧表示する。最新の報告書に基づくと、米半導体製造装置メーカー、ラムリサーチは売上高の半分近くを中国で稼いでいる。東京エレクトロンは売上高の39%、KLAは30%を中国が占めている。これらサプライヤーは、先端半導体製造に欠かせない企業だ。
次に、季節要因を分析する。11月17日金曜日に新たに発効された米国の規制は、軍事利用に不可欠な特定のハイエンド半導体を中国が購入・製造できないようにするもの。この新たな規制導入を目前にして、半導体製造装置の中国輸入は急増した。季節要因分析からは、中国の輸入増という異変が起きていたことがわかる:
SEAG<GO> 機能を活用して季節要因を分析 Source: Bloomberg
- コマンドラインに「chinese semiconductor imports」と入力し、 「CHIVCSEM Index China Import Commodity Value – Semiconductor & IR Manu Machines CNY」を選択
- 「seasonality」と入力し、「SEAG – シーズナリティ・チャート」を選択。クイック入力は「CHIVCSEM Index SEAG」
- グレーの[ヒートマップ]タブをクリック
シーズナリティ・チャートでは、過去5年間、半導体製造装置の中国輸入が9月と10月に低水準となる傾向があったことが分かる。しかし、今年は輸出規制が強化される前の駆け込み需要により、9月に輸入が前年比で60%増と跳ね上がり、10月も増えていたと予想される。
次に、企業のサプライチェーンの中で、制裁対象となっている仕入れ先・販売先を確認する:
SPLC RISK<GO> 機能を活用して、制裁措置や規制リストを確認 Source: Bloomberg
- コマンドラインに「asml」と入力し、「ASML NA Equity – ASMLホールディング」を選択
- 再びコマンドラインに「supply」と入力し、「SPLC – サプライチェーン分析」 を選択。グレーの[リスク]タブをクリック。クイック入力は「ASML NA Equity SPLC RISK」
- [販売先]ボタンをクリックした後、「合計制裁件数」列をクリックして降順に並べ替え
ASMLのサプライチェーンの中では、同社の販売先SMIC(中芯国際集成電路製造)が現在、米国の大統領令13959による制裁措置を受けているほか、YMTC(長江存儲科技)が米国商務省産業安全保障局の輸出規制リスト「エンティティー・リスト」に掲載されている。「合計制裁件数」列にある「1」をクリックすると、詳細が表示される。
ターミナルユーザーさまは、上記の他にも、中国が半導体製造装置の買いだめに走る中、どの企業が恩恵を受けたかを確認する方法、新たな米国輸出規制を巡る経営陣のコメントを追跡する方法など含めた全文を、こちらからをご覧いただけます。