この記事はForbesのFrancois Bothaが執筆し、Bloombergが版権を取得したものです。
フィランソロピー(philanthropy) が純粋に人類(Anthropos)のための愛(philos)に導かれた投資であるとするならば、利潤追求型の企業の目線から見れば、これを追及できるのは超富裕層だけと考えたとしても驚くことではありません。しかし、特にファミリービジネスに限って言えば、フィランソロピーは単なる社会全体への投資としてではなく、創業者ファミリーとその従業員が意味あるつながりを感じられるような、より健全でサステナブルなビジネスのための長期投資として、もう少しホリスティック(全体的)かつオープンマインドで考えたほうが賢明かもしれません。
共通の目的と価値観を持つことの重要性
ファミリービジネスにおけるいわゆる「ソフトファクター」の重要性については、目的主導型のマインドセット構築を強調する議論がこれまで多くありました。Daniel Pinkは、著書Drive「邦題:モチベーション3.0 持続する『やる気!(ドライブ)』をいかに引き出すか」のなかで、「最も深いところで動機づけられた人々は、最も生産的でかつ満足感が高いばかりではなく、そのモチベーションが自己を超越した何かに紐づけられている」と述べています。動機あるいは目的は、企業の文化や戦略に埋め込まれたとき、リーダーシップをとるチームメンバーをひとつにまとめ、組織内だけでなく組織全体を超えて共鳴する傾向があります。フィランソロピーは、共通の目的という企業文化を探求し構築するには大変優れた方法です。 Global Philanthropicが以下のように上手くまとめています。「フィランソロピーこそが究極の買い物です。ご自身とその価値観をつなげて、現世代ばかりでなく、未来の世代にもわたって、世界全体にポジティブな影響を与えることができるのです。」
この文脈でいう「未来の世代」とはフィランソロピーが社会に与える長期にわたるインパクトのことを言っています。なぜなら、フィランソロピーとは社会問題の解決に焦点を合わせており、すべての人々が恩恵を受けることのできるようなプロジェクトや社会貢献活動を支援するものだからです。
多世代の参加を支援する
このファミリービジネスという意味合いでいえば、フィランソロピーはまた、未来の世代にわたって一族のメンバーがファミリービジネスに従事し、関わり続けることを容易にし、幾世代にもわたって富の移転をサポートする点においても大変効果的なツールであると言えます。AIFO(イタリアのファミリーオフィス協会)会長のPatrizia Misciattelli delle Ripeは、次のように述べています。「世の中へ還元するというニーズは、これまでのチャリティのような寄付から、すべてのファミリーメンバーを共通の目的の下で動員できる効果的かつ集中的な多世代型フィランソロピーへとシフトした。フィランソロピーはファミリーのつながりを強化し、世代を超えた継続性を促進するための理想的な方法だ。 」
ミレニアル世代からの関心を維持し続ける
この方法は、ミレニアル世代によるファミリー企業への関与を確実にするためには特に有効です。この世代は、自分の個人的な価値観に合った雇用主を積極的に探し、またその約3分の2は世界情勢について気にかけているだけでなく、自らが何かを変えてゆく義務があると考えています。2017年にリリースされたMillennial Impact Projectレポートは、この世代が特に関心を持っている課題として以下を挙げています。
- 公民権/人種差別
- 雇用
- ヘルスケア
- 気候変動
- 移民
- 教育
ファミリーオフィスこそがサポートすべきだ
英国のフィランソロピー分野の専門家であるJuliet Valdingerは、その貴重なリサーチのなかで、以下のように述べています。Valdingerはファミリービジネスによる多世代型フィランソロピーを応援するだけでなく、ファミリーオフィスがこの分野で必要なサポートとガイダンスを提供することの重要性も強調しています。
- 62%の投資家は、ファミリーの価値観や遺産、富が存在する理由、それを尊重し、それを賢く使う方法について次世代を教育するために、フィランソロピーが重要であると考えています。
- ミレニアル世代の投資家の67%が、社会的責任のある投資を自分たちの価値観や信念の自然な表現と見なしています。
- フィランソロピー計画についてのアドバイザーを持つクライアントは、そのアドバイザーに満足する可能性が40%高くなっています。
- 顧客がインパクトを起こすための取り組みをサポートするアドバイザーは、非常に個人的かつ意義ある方法で顧客を力づけています – 投資家の44%がアドバイザーからのフィランソロピー計画に関して、より多くのガイダンスを希望しています。
要約すると:
ロックフェラー フィランソロピーアドバイザーは、次のような説得力のある言葉で、この議論を終わらせています。「ファミリーフィランソロピーは、特に親世代や祖父母の世代にとって魅力的な現在と未来の組み合わせと言えるでしょう。「いま、ここ」で愛する者たちと有意義な経験を共有することができ、さらに「社会へ還元する」という伝統も将来の世代にわたって形成されます。」
フィランソロピーだけで、この世のすべての問題を正していくことはできませんが、ファミリーオフィスのインパクト投資という新しい光明は、世代を超えて届けられる贈り物になる可能性があると言えます。