Read the English version published on November 04, 2021.
この記事はブルームバーグ市場担当のOleksandr Kucher、Luca Berlin、Lina Aboudiabが執筆しました。英語版はブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。
背景
米国の製薬会社ファイザーとモデルナの業績は、新型コロナウイルスのワクチン開発競争で両社が勝利を収めたことを表しています。問題は、何年分のブースター（追加免疫）接種を織り込むべきかです。
アナリストらは、過去6カ月間にファイザーの2022年のワクチン売上高予想を3倍に引き上げました。ブルームバーグ・インテリジェンス（BI）によると、この22年の見通しは依然として21年のコンセンサス予想を37％下回り、生産能力が30億回分から40億回分に増強される計画を踏まえると、低めだと思われます。
一方、モデルナの最高経営責任者（CEO）、Stephane Bancel氏は、独自の中核技術に注力しており、売り上げを押し上げるために取引を急ぐことはしないとして、次のように述べています。「当社は売り上げを増やすために取引をしようとしているわけではありません。売り上げ競争をしているのではないのです。推進しているのは、科学技術戦略です」さらにBancel氏はブルームバーグ・ニュースにこう語っています。「発売予定の製品が多数あり、そこから大きな売上が計上される見込みです」
課題
ファイザーと独ビオンテックは10月21日、両社が共同開発したワクチンのブースター接種には有症状のコロナ感染を防ぐ効果が95.6％あると発表し、高齢者には3回目の接種が必要だとする説を後押ししました。一方、モデルナは、これと競合する同社製メッセンジャーRNA（mRNA）ワクチンで児童に強い免疫反応が見られたと発表しました。なお、ファイザーはこの分野でも受注を獲得しています。ワクチン接種によりデルタ変異株の感染を減らすことはできても完全に止めることはできない中、児童は新規感染者のかなりの部分を占めるようになっています。
BIのアナリスト、Sam Fazeliは、「少なくとも3回目のブースター接種は必要になるでしょう。従って、ファイザーの22年のコロナワクチン売上高のコンセンサス予想は、特にほとんどの国でmRNAワクチンが第1の選択肢になる可能性が高いことを踏まえると、極めて低いように思えます」と述べています。
アナリスト9人の予想では、ファイザーの21年のコロナワクチン売上高は360億ドルと、全社の売上高の半分に達するとの考えで一致しています。また22年は230億ドル、23年は87億ドル、24年は43億ドルになると想定しています。
PFE US Equity MODL SOURCE<GO>を実行して、ファイザーの業績予想を項目別に表示。
ファイザーのコロナワクチン売上高の平均予想は6カ月間で3倍になっています。最も高い予想は、21年の見込みと同等です。
単一指標タブをクリックして、予想の推移を確認。
ブルームバーグ・クエリ言語（BQL）の分析結果を見ると、ファイザーとモデルナが市場を席巻していることが分かります。モデルナのコロナワクチン売上高は、21年と22年には約200億ドルとなり、23年には110億ドル、24年には75億ドルでファイザーを上回ると予想されています。米ジョンソン・エンド・ジョンソン（J&J）や英アストラゼネカのワクチンのように、アデノウイルスベクターを使用したものよりも、mRNAワクチンの方が変異ウイルスに対する効果が高いという研究結果も出ています。なお、ワクチン売上高は、両社とも今年は約25億ドル、来年は15億ドルと予想されています。仏サノフィについては、10億ドルを超えるのは難しいと思われます。
BQLを使用して、さまざまな企業のMODL画面データのスプレッドシートを作成。
イスラエルの事例は、ワクチンで作られた免疫が数カ月後には弱まり、ブースター接種が必要になることを裏付けるものです。ブースター接種で感染が抑えられる期間や症状が軽減される期間についての研究には時間が必要です。英国は、3回目の接種の効果を巡って注目を集めるでしょう。3回目の接種後に抗体の反応が定着し、4回目の注射がしばらく必要なくなるかどうかは、予断を許さないとBIは指摘しています。
しかし、このウイルスはいわば「動く標的」であり、免疫をかいくぐる変異ウイルスが出現する可能性もあります。ブルームバーグのツールは、コロナワクチンの売上高予想の分析に役立ちます。
追跡
COVID-19ワクチン・トラッカーを使用して、世界のワクチン接種状況をモニターします。
コマンドラインに「covid vaccine tracker」と入力し、NI CVACTRACを選択。
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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。