Read the English version published on July 24, 2024.
本稿は、ブルームバーグNEF下流石油・化学部門責任者Luxi Hongが執筆し、ブルームバーグターミナルに掲載されたものです。
石油・ガス産業が世間や投資家からの脱炭素化を求める圧力に直面する中、上場国際石油会社(IOC)の動向は注目を集めています。IOCは対応策として、エネルギー移行に向けた投資とダイベストメント(投資撤退)に取り組んでいます。
世界最大級のIOC9社が2015年から2023年にかけて売却した資産は合計2900億ドル(約43兆円)に上り、上流石油資産の売却がダイベストメント案件の半数を占めました。2023年には、IOCの資産売却額が前年比で15%減少した一方、上流セグメントへの資本配分は着実に拡大しました。 IOCが投資家へのリターンの提供と脱炭素化への取り組みとの間のバランスを模索する中、石油メジャーのエネルギー移行を巡って不確実性が生じています。
- 英石油大手シェルは2015年から2023年にかけて資産売却でリードし、売却額は710億ドルに上りました。これは2番目に積極的だった仏エネルギー会社トタルエナジーズのほぼ2倍に相当します。
- 資産売却額合計は2023年には前年比15%減の220億ドルとなりましたが、これは2022年の石油・ガス価格の高騰が要因だったとみられます。
- IOCは、欧州および北米といった自国市場でより多くの売却を実施しています。これらの地域の資産は他地域よりもコストが高くなることが多く、そうでなくとも規制当局や投資家、顧客から気候変動関連リスクへの対処をより一層強く求められます。
- IOCは高炭素石油資産を縮小し、低炭素事業への投資を増やすことで、事業ポートフォリオの「グリーン化」を実現し、より持続可能な事業を拡大できます。このような傾向は、欧州IOCの間で特に顕著です。
- しかし、IOCの低炭素セグメントへの資本配分は2023年に減速しました。一方で、設備投資に占める上流セグメントの割合は、2017年以降で初めて増加しました。これは、石油メジャーによる移行戦略の見直しを示唆するものです。
- 2021年以降、再生可能エネルギー関連の投資撤退が加速し、新たなトレンドが台頭しています。ブルームバーグNEFではこのような資産売却に対する動機として、プロジェクトのリターンを押し上げるための「ファームダウン」(持ち分の他社への売却)手法の採用、ポートフォリオ再構築に伴う既存事業からの撤退、そして再生可能エネルギーのビジネスモデル強化に向けた提携関係の構築、という3点を特定しています。
- 資産の約70%は、IOCよりも小規模または知名度の低い石油産業企業により買収されています。IOCにとっては高炭素資産の売却は脱炭素化目標を達成する上で効果的かもしれませんが、気候変動対策への意欲が低い買い手にこれらの責任を転嫁しても、石油・ガスセクターの排出削減にはつながらないでしょう。
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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
ブルームバーグNEFについて
ブルームバーグNEF(BNEF)は、世界の脱炭素化についての戦略的な分析を提供する、ブルームバーグのリサーチ部門です。各国のアナリストが、脱炭素社会の実現に向けての鍵となる最先端の技術、政策、金融動向を追い、排出量の多いセクターを中心にデータやリサーチを日々配信しています。コモディティ取引、企業戦略、財務および政策の専門家が変化に対応し、チャンスにつなげられるようサポートしています。
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