EUタクソノミー:世界のサステナブル投資に影響?

Read the  English version published on Aug。1, 2019.

サステナブルファイナンスの概念、評価・報告方法、世界の金融市場参加者にとっての意味は急速に変化しています。

欧州委員会が設置したサステナブルファイナンスに関するテクニカル・エキスパート・グループ(TEG)は、低カーボン投資促進に向けた市場の動きを加速する環境を構築するため、サステナブル活動の分類基準をまとめました。それが、気候変動緩和および気候変動適応のためのEUタクソノミーです。

このタクソノミーは市場にとってどのような意味があり、企業はこれをどう活用できるのでしょうか。ビジネス機会はどこにあり、課題は何でしょうか。未来のサステナブルファイナンスはどのようなものになるのでしょうか。

欧州委員会の金融安定・金融サービス・資本市場同盟(FISMA)総局長であるOlivier Guersent氏は、2019年6月にブルームバーグがフランクフルトで主催した「サステナブルファイナンスの未来」と題された会合において、新たに公表されたタクソノミーについて講演しました。

世界に影響を与えるEUタクソノミー

EUタクソノミーは、気候に中立的な経済の実現につながる経済活動をいかに支援し投資を行うかに関するガイダンスを政府、産業界、投資家に提供することを目的としています。

EUタクソノミーに関するTEGの報告書には、気候変動緩和に大きく貢献する8つの産業セクターの67の経済活動、気候変動適応への貢献度の重要性を評価するための方法と実例に加えて、タクソノミーを使用する投資家のためのガイダンスとケーススタディも記載されています。

「サステナブル投資について語るときには共通の定義あるいは言語が必要です。タクソノミーは、開示義務、ラベル、ベンチマークのエコシステムを構築するベースと考えるべきです」とGuersent氏は述べています。

Guersent氏はまた、欧州委員会がタクソノミーを作成した目的は国際市場がサステナブル投資に向けて自ら行動できるようにするための情報提供であるとも述べています。

EU域内でタクソノミーが適用されるのは加盟国、公的機関、自らをサステナブルあるいはグリーンであるとする市場参加者のみとなっています。EUおよび世界のそれ以外の参加者は、タクソノミーを投資分野と投資手法を決定する際の情報ツールとして使うことができます。

TEGは上記テクニカルレポートに加えて、タクソノミーの使い方に関する補足レポートも公表しました。そこには、投資家および企業向けに、タクソノミーの必要性、概要、使い方に関する簡潔明瞭な説明が記載されています。

実施上の課題

Guersent氏は、細分化された国際市場における参加者間の相互信頼向上と、サステナブル投資の内容に関する共通理解が必要であると述べています。

また、企業側の今後の課題として、短期的思考を長期的思考に切り替えること、および気候・エネルギーフレームワーク2030で掲げた温室効果ガス排出量削減目標と2050年までにカーボンニュートラル(ネット排出量ゼロ)を実現するという長期戦略の整合性を図ることが必要であるとしました。

「欧州の温室効果ガス排出量は全世界の11%に過ぎません。すなわち、90%近くの問題の所在はEU外、特に発展途上国や新興国にあります」とGuersent氏は述べています。

すべての国が持続的成長を続けることができるようにするために、欧州委員会はグリーンファイナンスプログラムを強化しています。具体的には、2021年時点でEU予算の4分の1を気候変動対策に充てることを目標としています。しかし公的資金のみでは不十分であり、民間セクターによる投資をグリーンでサステナブルな開発に向かわせるための促進策も検討しています。その促進策費用として、今後7年間で約4,500億ユーロを充てる予定です。

企業、投資家にとってのビジネス機会

新たなタクソノミーは、サステナビリティへの意識を高めつつあるグローバル市場に情報とエンゲージメントの機会を提供するとともに、企業と投資家に対してビジネス機会を提供しています。

投資家のメリットとしては、グリーン投資への需要が急拡大する中で商品選択の幅が拡大することが挙げられます。一方企業にとってのメリットは、グローバル資本市場および金融セクターからの資金調達源の拡大が挙げられます。

Guersent氏はまた、拡大する高齢化人口が望む長期にわたる安定した利回りへのニーズと環境安定の必要性について語りました。同氏によれば両者は基本的に両立可能であり、目指すべき方向が低カーボンあるいはゼロカーボン投資であることは明確であると述べました。

「今のところは二酸化炭素排出量削減に注目が集まっています。しかし、これは国連の持続可能な開発目標の1番目です。この分野において大きな成果を上げることは重要ですが、同時にそれが他の5つの目標の妨げとならないようにしなければなりません」とGuersent氏は言います。

「タクソノミーを充足するために『スーパーグリーン』になる必要はありません。二酸化炭素排出量を大きく削減できればいいのです」

タクソノミーに対する賛同とアドバイス

Athora Insurance(ドイツ)のCEOであるChristian Thimann氏とEnBW Energie Baden-Württemberg AGのCFOであるThomas Kusterer氏は、パネルディスカッションにおいてタクソノミーの趣旨に賛同して次のように語っています。2人ともタクソノミーが真のサステナブル金融商品・サステナブル投資とは何かについて市場がコンセンサスを見いだすための重要なステップであると見ています。

Thimann氏は「移行技術と実現技術の確立を目指す必要があります」と述べ、タクソノミーはアナリストが専門知識を蓄えこの分野のリーダーとなる絶好の機会であるとしました。

同氏はまた、二酸化炭素排出量を監視・報告するためには、タクソノミーと同様に自主的かつビジネス主導の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の活用が有効であるとも述べました。

ドイツ連邦銀行の理事を務めるSabine Mauderer博士は、既にドイツにおいてはビジネスモデル、リスク管理、サプライチェーンのサステナビリティについて透明性が高いサステナブル投資家および企業に対して、一部の銀行が有利な貸付条件を設定していると指摘しました。

Guersent氏は、今こそ行動を起こす時であり、その先頭に立つべきは市場であるとして、以下のようにスピーチを締めくくりました。

「情報を共有しアイディアを刺激し合うプラットフォームが必要です。そのためには何をすべきか、何をすべきではないのかに関するコンセンサスが必要です」

「私たち欧州は、目標達成に向け世界で一番進んでいます。しかし、まだ努力を続ける必要があります。なぜなら、今のままでは二酸化炭素排出量は増加し続けてしまうからです。やるべきことは数多く残っています」