関税リスクが高まる中で市場のボラティリティにどう備えるか

Read the English version published on April 29, 2025.

主要ポイント

  • 米国で新たに導入された輸入関税や、今後予定される高率関税の脅威を背景に、不確実性と混乱が広がっています。こうした状況は、投資家や企業の間に恐怖感を生み、市場のボラティリティを高める要因となっています。
  • 2025年2月には中国からの輸入が100億ドル減少しました。また、3月の消費者データでは、裁量的な支出から生活必需品へのシフトが見られ、経済的なストレスの初期兆候として注目されています。
  • 原材料や農産物に対する新たな関税の導入は、インフレへの懸念を一段と高めています。一方で、原油需要の予測引き下げや数年来の価格低下は、景気後退圧力が広がりつつある可能性を示唆しています。

背景

関税の導入や撤回をめぐる動きが続く中、企業、投資家、そして消費者は不確実性への対応に追われており、市場では大きな変動が生じています。S&P500種株価指数は1日で10%以上変動し、ボラティリティはパンデミック初期以来の水準に達しました。2週間にわたる市場の混乱を経てもなお、投資家は警戒を強めています。

ドナルド・トランプ大統領が4月2日、全ての貿易相手国に対して少なくとも10%の「相互」関税を課すと発表するまで、データは米国経済の底堅さを示唆していました。インフレ率は低下傾向にあり、2月の消費者物価指数は予想を下回る2.8%の上昇にとどまっていました。

あの投資家も
ブルームバーグ

論点

関税は、貿易の流れと消費支出という経済の健全性を示す2大指標に混乱をもたらし、米国経済のレジリエンス(回復力)に対する重大な脅威となっています。タイムリーなデータと高度な分析能力を活用してこうした影響を正確に評価することは、市場が直面するボラティリティに対応する上で欠かせません。ブルームバーグのECANツールは、経済指標の中で見出し数値に最も影響を与えている要素を可視化する分析機能です。このツールを用いた最新の米国輸入動向の分析によると、2025年2月の中国からの輸入額は、前月(1月)から約100億ドル減少していました。貿易パターンの変化を詳細に分析することで、より広範な経済への影響の予測が可能になります。

NEW US Imports ECAN screen

さらに、関税による経済の不確実性を受けて、消費者の支出行動は急速に変化する可能性があります。消費者支出は米国経済の健全性にとって極めて重要であり、消費者の需要と供給の水準はインフレの先行指標として機能することがあります。ECANツールは、数百万人の消費者のクレジットカードやデビットカードの取引データをリアルタイムで活用し、消費動向を即座に可視化できます。3月の分析では、消費者支出が前年と比べて著しく減少し、支出の内訳は自由裁量的商品よりも生活必需品している傾向がみられました。

New US Bloomberg Second Measure ECAN screen

原材料や農産物への関税はインフレを加速させ、結果として景気後退への懸念を煽る恐れがあります。一方で、今年の1日当り原油消費量予想はすでに32万バレル減少しており、価格は4年ぶりの安値に近づいています。

「原油価格はすでに景気後退を織り込み始めている」と、Energy Aspectsのアナリストはリポートで指摘しています。「問題は、世界の二大経済大国が対立する中で、この状況がどれほど長く持ちこたえられるかです。歴史的に見て、こうした対立は需要や世界経済全体にとって、あまり好ましいニュースとは言えません。」

トラッキング

ブルームバーグ ターミナルの「WSL POLITICS <GO>」機能を使えば、米国貿易委員会が公表する国別の関税データや、関連する米国の政治的決定をリアルタイムで追跡できます。

  • ブルームバーグ ターミナルで「worksheet sample」と入力し、「WSLマッチ」をクリックします。
  • アンバーの欄に「politics」と入力し、<GO>を押します。
  • 「Politics(政治)worksheet」をクリックします。
WSL Politics function screen

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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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