メタバース、次世代技術プラットフォームの市場規模は8000憶ドルに達する可能性

Read the English version published on December 1, 2021.

この分析は、ブルームバーグ・インテリジェンスのシニアアナリスト(業種担当)Matthew Kantermanと、ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト(業種担当)Nathan Naiduが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されたものです。

メタバースは次世代の大規模テクノロジー・プラットフォームで、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)が約8000億ドルと試算する市場機会のシェアをオンラインゲームメーカー、ソーシャルネットワーク、およびその他のテクノロジー・リーダー企業が獲得しようとしています。社会的に共有され続ける3D仮想世界のメタバースは、リアルタイム3Dソフトウエアを使用したインターネットおよびソーシャルネットワークの進化の次のステップにおいて、物理的領域とデジタル領域を融合させるものです。これは、オンラインエンターテインメントやソーシャルメディアの大手企業にとって、新たな収益源を獲得する機会となります。

BIではグローバル・メタバース・テーマ・バスケットを構築し、業界全体で最もエクスポージャーが高い企業を追跡しています。バスケット対象企業となるには、収益の重要な部分を仮想現実のプラットフォームに加え、仮想現実での体験と取引から生み出す必要があります。

メタバース、ライブイベントや広告を取り入れれば市場規模は8000憶ドルに達するか

BIの分析およびNewzoo、IDC、PWC、Statista、Two Circlesのデータによると、メタバースの世界全体の収益機会は、2020年の約5000億ドルに対し、2024年には8000億ドル近くまで拡大する可能性があります。オンラインゲームメーカーとゲームハードウエアの主要市場は、2024年には4000億ドルを上回る可能性があり、残りはライブエンターテインメントとソーシャルメディアが占めるでしょう。

2桁成長で8000億ドルへ

BIの分析およびNewzoo、IDC、PWC、Statista、Two Circlesのデータによると、メタバース市場は2020年の4787億ドルに対し、2024年には7833億ドルに達する可能性があり、年平均成長率は13.1%となります。ゲームメーカーは、引き続き既存タイトルをよりソーシャルネットワークに近い3Dオンラインの世界へ対応させていくことで市場機会が拡大し、コンサートやスポーツイベントなどのライブエンターテインメント事業を取り入れたり、ソーシャルメディアでの広告収入のシェア争いをしたりする可能性があります。メタバースの市場規模は、ゲームソフト、サービス、広告収入だけでも2.7倍に達するとみられています。

米ロブロックス、米マイクロソフト、米アクティビジョン・ブリザード、米エレクトロニック・アーツ、米テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア、中国のテンセント・ホールディングス(騰訊)およびネットイース(網易)、日本のネクソンなど各オンラインゲームメーカーは、3D仮想世界の成長を利用することで、エンゲージメントと売上を大幅に高めることができるかもしれません。

ゲーム、AR、VRで4130億ドルの主要市場の創出

ゲームメーカーにとって、メタバースからの主要な収益機会の大部分は、既存のゲームソフトとサービス市場のほか、ゲーム機の販売増加によるものであるとBIでは分析しています。2020年の2749億ドルに対して2024年には4129億ドルに達する可能性があるこの主要な市場機会のうち、ソフトウエアおよびサービスからの収益とゲーム内広告の収益は、市場規模全体の約70%を占めます。これはオンラインゲームメーカーにとっては既存の市場ですが、既存のゲームを仮想世界に対応させることで高いユーザーシェアとエンゲージメントの獲得に成功した企業は、セクター別売上高でより高いシェアを得られます。

ゲーム用PCや周辺機器を含むゲーム機と、米フェイスブックのオキュラスなどのAR(拡張現実)/VR(仮想現実)ハードウエアが、主要な市場機会の残りの部分を占めます。

ライブイベントやソーシャル広告で市場規模を2倍に

コンサート、映画上映、スポーツなどのライブイベントを3D仮想世界に取り入れることができれば、ゲームメーカーはオンラインでの体験を3次元の実社会に発展させてメタバースの機会を活用する際に、新たなビジネスチャンスを獲得できます。米エピック・ゲームズやロブロックスなどのゲームメーカーは、すでにゲーム内でコンサートを開催しており、米ユニティ・ソフトウエアは3D開発キットにスポーツのライブコンテンツやツールを導入する機会に投資しています。

BIの分析およびPWC、Statista、Two Circlesのデータによると、映画、ライブコンサート、スポーツの生中継など、メタバースのコンセプトに含まれる可能性のあるライブエンターテインメント事業の収益は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)から徐々に回復し、2024年には2000億ドルを超え、2019年とほぼ同水準となると見込まれています。

オンラインゲームメーカーとソーシャルネットワークによるメタバースの主導権争い

オンラインゲームメーカーと既存のソーシャルネットワークは、ゲーム、ソーシャル、ユーザー生成コンテンツというメガトレンドの融合により、8000億ドル規模の急成長を遂げているメタバース経済の主導権を争うことになるかもしれません。市場の発展に伴い、フェイスブックのユーザー規模とVRへの投資が有利にはたらくこともあり得ます。その一方で、ゲームエンジンベンダーのユニティ・ソフトウエアやエピックはソフトウエア需要が高まる可能性があります。

ロブロックス、エピックがリードするも、参入余地の大きい仮想世界

「ロブロックス」、マイクロソフトの「マインクラフト」、エピック・ゲームズの「フォートナイト」が、メタバースの主導権争いにおける初期段階のリーダーに見えますが、他のゲームメーカーやソーシャルネットワーキング企業にとっても、市場の成長から利益を得るために既存のサービスに手を加えたり、新しいサービスを立ち上げたりするのに十分な時間があります。他のゲームメーカーにおいても、アクティビジョンの「コール オブ デューティ ウォーゾーン」や「ワールド オブ ウォークラフト」、EAの「ザ・シムズ」、テイクツーの「GTA オンライン」、ネクソンの「メイプルストーリー」や「アラド戦記オンライン」などのオンラインタイトルで、大規模かつアクティブなユーザー層を獲得できています。これらの企業は、ソーシャル機能を追加し、ユーザー生成コンテンツがゲーム体験の中でより大きな部分を占めるようにすることで、メタバースの需要を勝ち取ることができます。

3D仮想世界への方向転換に成功したゲームは、エンゲージメントとユーザー数の増加においてより大きなシェアを獲得し、売上成長を加速させることができるでしょう。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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