リスク分析からリターン予測まで、投資ガイドとしての機械学習

この記事はブルームバーグ・ブリーフ・スペシャル・レポート | 機械学習の解読に寄稿されたもので、グローバル・トレーディングに最初に掲載されました。

機械学習は万能というわけではありませんが、金融分野において、近年より広範囲で利用されるようになってきています。バーリー・ポーターが、ブルームバーグの機械学習ヘッドのゲーリー・カザンツェフ、データ・サイエンス・ヘッドのギデオン・マン、クオンツ・リサーチ・ヘッドのブルーノ・ドゥピールと、その可能性について聞きます。

質問:金融における機械学習において、最大の誤解は何でしょうか。
ゲーリー・カザンツェフ(GK):機械学習はある意味、魔法の杖のようなもので、基本的な統計に基づく真実に反する難しい問題を解決してくれる、という考え方です。もし、解決しようとしている問題が不適切であったり、十分なデータが揃っていなかったり、あるいは非定常性やバイアスといった点に配慮がなかったり、といった場合、機械学習は、役にたちません。

ギデオン・マン (GM)1つの大きな誤解は、「機械学習は人には不可能なことができる」というものです。つまり、人間の能力では到底成しえないことを、魔法のように成し遂げることができるということです。しかし、機械学習による最大のインパクトは、典型的な例をあげれば、それほど複雑ではない人間の意思決定をより安価なコストで自動化できるため経済的だということです。これが魔法のように見えるのです。

質問:どんなことに一番関心を持っていますか。
GK
現在、機械学習に基づいた方法で対処可能な問題が、広範囲に広がっていることです。

ブルーノ・ドゥピール (BD)AIが私たちに投げ掛けている問題、すなわち、人間としての私たちの本質を成すものは何であるかという問題です。以前は揺るぎないものと考えられていた人間としての能力分野は、一つずつ明け渡されており、存在論的な問題が見直されています。2つの大きな疑問は、機械は私たちのすべての認知的作業を実行することができるか、という点です。そしてもしできるとするならば、機械は私たちよりはるかに優れた結果を出せるのか、という点です。

質問:現在、金融分野で機械学習はどの程度進歩しているのでしょうか。
GK
状況次第です。対処する問題と手法は広範囲にわたり急速に拡大しています。機械学習全般の問題として捉えて、エンド・ツー・エンドの戦略開発(ポートフォリオの選択から執行まで)を実施している会社を知っています。この分野の調査に着手したばかりの会社も数多くあります。金融機関における新テクノロジーの受容度は、受容可能なリスク特性、モデルの説明力や透明性に関する特定要件、さらに地理的な条件(最先端のリサーチに精通した人材プールを利用できるかに影響)によって異なります。これは、幾多の他のテクノロジーよりも機械学習により当てはまることです。

BDまだ初期段階ですが、非常に速いスピードで激しく進化しています。クオンツ・ファイナンスは機械学習にとって適用しやすい分野です。インプット・データとリターンとのつながりを確立するための学習が、大いに役立つためです。構造化データ(時系列の証券価格、ファンダメンタルズ)、非構造化データ(ニュース、ツイート、電話記録のテキスト、ネット検索、衛星画像)のいずれも体系的に活用されており、機械学習の手法は増え続けています。ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、ナレッジグラフ、リカレントネッワーク、長短期記憶(LSTM)、コンボリューションネッワーク、敵対的生成ネットワーク(GAN) などがあります。1987年に初めてニューラルネットワークを用いて金融関連の時系列データを予想して以来、状況は大きく変わっています。

質問:先進的なお客さまは、ワークフローにおいて機械学習をどのように利用していますか。また機械学習は、投資戦略にどのような影響を及ぼしていますか。
GK
私たちの知る限りでは、カウンターパーティー・リスク分析から最良執行まで、また破綻リスクの予想からリターン、収益や失業率の予想といったあらゆることを分析しています。またポートフォリオの構築、金融関連のニュースのセンチメント分析などにも用いられています。機械学習は、体系的な戦略策定で使用するツールボックスにおいて不可欠な部分となってきています

質問:金融業界において機械学習への投資や注目を促している要因となっているのは何でしょうか。
GM
機械学習は他の業界にも多大な影響をもたらしており、大幅な成長を促しています。グーグル、アマゾン、フェイスブックのことを考えてください。また、価値の追求に機械学習を利用することができる金融会社の数は増えています。さらに、企業は、コスト削減圧力から、より少ないコストでより多くのことをできないか、社内内部に目を向け始めました。拡大テクノロジーで従業員の生産性を向上させることの魅力も高まっています。

質問:ブルームバーグの新しい機械学習のアプリケーションやツールで、最も満足しているものは何ですか。また、その理由も教えてください。
BD
私たちは、非常にユーザー・フレンドリーな対話環境で、サイキット・ラーン、テンソルフローおよび私たちの独自の機能にユーザーがアクセスすることができるようにする機械学習のプロトタイプを作っています。それによって、データ、学習の進捗状況、アルゴリズムの作動の仕方などを視覚化するさまざまな方法が提供されています。

GM私たちはニューラル・ネットワーク・インフラに多額の投資をしています。また努力により、展開されたニューラル・ネットワーク・モデルの例が数多くあります。こうした中で、私は特に表の理解への取り組みに満足しています。厄介な古い問題の解決に対して、これらの新たなテクノロジーの効果が示されているためです。

GK私は特に、質疑応答に関する作業に満足しています。非常に難しい未解決の問題であるにもかかわらず、お客さまのターミナルの利用方法に影響を及ぼすことができました。

質問:将来について、何かひとつ予想を提示してください。
GM
将来の特徴としては、かなり安定した期間が急速な変化によって妨げられるようになると考えています。これは情報やテクノロジーが広まるスピードが速くなっているためです。

GK海面は上昇し、市場は変動するでしょうが、深層学習が真の人間レベルの人口知能をもたらすことはないでしょう。

GD近いうちにコミュニティは、ニューラルネットワークはいかに深いものであっても、あらゆる問題を解決することはできない、と気付くことになると考えています。特にデータが不足している場合には、ニューラルネットワークと論理型システムの結合を目のあたりにすることになりそうです。高度なタスクに関しては、データに学習プロセスを牽引させるのでは不十分で、専門的な知識を注入して、ハイブリッド・システムに移行させる必要があります。