アジアにおける機械学習:韓国におけるAI導入の取り組み

人工知能の応用拡大に伴い、アジア諸国はAI開発の足場を広げている。「アジア企業は、新しいテクノロジーについて、最初はやや慎重だが、いったんその意義を理解すれば、米国や欧州の同業他社よりも導入が早い」と語るのは、ブルームバーグ・ニュースマーケット・スペシャリストのマキシミリアン・フォルマーだ。

特に金融機関では、プロセスを自動化して効率化を図る手段として機械学習に注目している。人工知能に付随して発達した分野で、データを使ってコンピュータに自分で「学習」させることにフォーカスした方法だ。韓国は、このトレンドに乗るアジア諸国の中でも、近年特に目覚ましい進歩を遂げている国の一つだ。

韓国情報通信技術促進機構の2017年調査によると、2005年1月から2017年9月までの期間において、韓国のAI関連特許は、米国と日本に次いで3番目に多かったという。大手証券会社の未来アセット大宇は、インターネットポータルサイトのNaverと提携、AIなどのデジタルプロジェクトに5,000億ウォンを投資すると発表したばかりだ。

導入への障害

AI導入に対して熱心ではあるものの、他のアジア諸国と同様、韓国もこれまでに複数の課題に直面し、スピード調整を余儀なくされてきた。日本も含め各アジア諸国も、規制や自国の言語でのコーディングへの制限が共通の課題としてある。しかし、韓国ではその困難の程度はさらに大きく、他のアジア諸国とは異なったアプローチを求められる。

最大のハードルは言語 ブログや他のプラットフォームで共有されているオープンソース資料の多くは、どのように英語のテキストを処理するかについて英語で書かれたものだ。オープンソースの自然言語処理アルゴリズムを韓国語に適応させるにはしばらく時間がかかった。

地域の規制当局は他国よりも保守的な傾向が強い。証券会社は、時に特定の取引を説明するよう要求される。特に非常にボラティリティの高い市場では、自動取引アルゴリズムの背後にあるプロセスは、手動取引に比べると、説明するのがより難しい。結果的に、地域での自動取引の導入により時間がかかっている。

情報の不平等が導入へのインセンティブを低下させる。人工知能の価値の大部分は、膨大な量のデータを処理し、それなしでは、見過ごす可能性のある結論を導き出す能力にある。しかし、この能力が価値を持つのは、情報の平等性がある場合に限られる。仮に誰もが同じ情報を同じ時間に大差なく取得した場合、付加価値となってくるものはその情報を利用して他をしのぐ何かを生み出す能力だ。しかし、アジア市場は多くの場合、米国や欧州と比較すると、情報の平等性は低いと言える。「株価はニュースが出る前にすでに動いているケースが多い」とフォルマーは指摘する。

意思決定において、ニュース自体はそれほど意味を持たない。ニュースは、欧米では投資家の意思決定に重要な役割を果たす一方で、アジアの投資プロセスにはそれほど組み入れられてはいない。ブルームバーグが先ごろ韓国で開催したMachine Learning Decodedイベントでの調査データによれば、出席者の67%がニュースの持つセンチメントは株価を押し上げる要因の一つに過ぎないと考えていた。また、ニュースの重要性を認めるものの、ワークフローに自動的に組み込まれるところまでは行っていないようで、機械処理が可能なニュースフィードに直接アクセスし、自然言語処理を適用できると回答したのはわずか3%だった。ワークフローにニュースは組み込まれていないと回答したのは42%で、最も多かった。さらに30%はヘッドラインを手動でチェックしていると答えた。

バックオフィスでは進捗あり

韓国の大手証券会社には依然として大量の紙が消費されているところもあり、現時点では金融機関は「バックオフィスの自動化に注力している」とフォルマーは言う。

競争力を持つために、特にリアルタイムプライシングに付随するプロセスの自動化が必要だと企業は認識し始めている。トレーディング自動化は重要だと回答した人は約26%で、20%が考え方を完全には許容できないものの、トレーディング自動化は重要だと答えた。これは、約半数の参加者が、実現の可否にかかわらず、トレーディング自動化の価値を認めていることを意味している。

実際、調査対象となった出席者の34%が、機械学習を使用するのはアドホックな研究目的においてのみと答えている。また別の11%はシグナルや要因生成のために使用していると回答し、15%は生成にはシステマティックに使用しているとした。これらの数字から読み取れるのは、効果的に使えるものは何なのか、金融機関が可能性を調べるための実験をしているということだ。

韓国では、「プライシングと執行の効率化をはかるために機械学習を採用することに特に関心がある」とフォルマーは見ている。例えば、中央銀行がボラティリティを予期して突然のテーパリングや緩和策を発表するたびにf / xを調整するなど、プライシング において機械学習は、市場リスクをヘッジするのに役立つ。研究者はまた、市場の状況やニュースの状況を把握するために機械学習を検討しており、これによりトレーダーはいつでも、わずかな監視で、どのトレーディングアルゴがいいのか選択することが可能だ。

アジアの金融機関にとってこれらAIは、まだ発達初期の段階に過ぎないが、急速に進歩を遂げている分野だ。 小さな成功がより大きな競争上の優位性を示唆するものとなり、今後もより多くの企業提携やプロジェクトが続くことは間違いなさそうだ。

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