LIBOR廃止、2023年半ばまで延期の可能性

Read the English version published on December 2, 2020.

本稿はWilliam Shaw、Liz Capo McCormick、Edward Bolingbroke、Craig Torresが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

不正操作問題で信用を失ったドルLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)を運営するICEベンチマーク・アドミニストレーション(IBA)は、ドルLIBORの一部の廃止を1年半先延ばしすることを検討しています。

IBAは、3カ月物、6カ月物、12カ月物のドルLIBORの廃止を2023年6月末まで延期する案について市中協議を行うと発表しました。規制当局は依然として銀行に対してLIBORからの移行を可及的速やかに行うよう求めていますが、LIBOR廃止が延期されるのではないかとの思惑は以前からありました。また、上記発表には翌日物LIBORの廃止延期も含まれており、これを受けてユーロドル先物の出来高は急増しました。

Friedman Kaplan Seiler & Adelman法律事務所のパートナーであるAnne Beaumont氏は今回の動きについてドルLIBORを運営する側が折れた形になっていると指摘し、「本来はLIBORの使用を完全にやめてもらいたいが、現実的には難しい。当初の予定に固執して金融システムを吹き飛ばしてしまうようなことは望んでおらず、結果的に現状を追認した」と述べました。

LIBOR移行延期を受けてユーロドル先物は急反発

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LIBORはグローバル金融システムの基盤の一部となっており、規制当局が2021年末までの段階的使用中止を一致して求めてきたにもかかわらず、依然として数百兆ドルもの金融資産に使われています。米連邦準備制度理事会(FRB)その他の規制当局は、大規模なLIBOR不正操作問題や算出に使用される取引データの枯渇を受け、市場参加者に対して代替指標への移行を声を大にして促してきました。

しかし今年は新型コロナウイルスの感染拡大という不測の事態によりその動きが妨げられ、市場はこの大規模な移行に対応する準備ができていないのではとの懸念が高まっていました。

最も多く使用されている3カ月LIBORの廃止が延期される可能性が出てきたことは市場にとって朗報ですが、規制当局は依然として2022年以降新たな契約にドルLIBORを使用しないよう強く求めています。FRB、連邦預金保険公社、通貨監督庁は共同声明の中で、銀行がドルLIBORを新たな契約に使用することは銀行自体の安全性と健全性に対する潜在的なリスクとなるため厳しく検査すると述べています。

主要な期間のドルLIBOR廃止が2023年6月まで延期されれば、ドルLIBORにリンクした金融契約のほとんどがそれ以前に満期を迎え、わざわざ新ベンチマークに移行する手間が省けることになるとFRB高官は述べています。

一方で、上記共同声明は銀行に対してできる限り速やかなドルLIBORからの移行も求めています。

「今回の動きにより、新たなリスクフリーレートに移行できなかったであろうレガシー契約を巡り混乱が生じる恐れは軽減されました。規制当局は引き続きLIBORからの移行を求めているものの、レガシー契約については事実上猶予を認めたことになります」と、TD証券ニューヨークの米金利シニアストラテジストであるGennadiy Goldberg氏は述べています。

またBrean Capitalで債券戦略のヘッドを務めるScott Buchta氏は、重要なポイントは証券やローンなどのキャッシュ商品市場において秩序ある移行を促すための時間を規制当局が得たことだと述べています。

一方国際スワップ・デリバティブ協会は、IBAによる上記声明は市場が待ち望むLIBOR参照契約のフォールバック条項を発動するトリガー(cessation event)には該当しないとしています。

また英金融行為規制機構は、ドルLIBORの新たな使用を制限するかどうかについて米国その他の規制当局と協調して検討するとしています。

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