レポ市場の混乱もLIBOR移行には明るい材料

本稿はAlexandra HarrisおよびAllan Lopezが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。Read the English version published on October 18, 2019.

2019年9月の米レポ市場の混乱は、連邦準備理事会(FRB)がドルLIBORの代替として選択した担保付翌日物調達金利(SOFR)の有効性に多くの疑問を投げかける形となりましたが、一方で明るい材料も提供しました。

9月17日のSOFRは前日の倍以上の5.25%まで上昇し、過去最高を記録しました。原因はSOFR算出のベースとなるレポ取引に使われる超過準備の額とディーラーが保有する証券の量のバランスが崩れたことにあります。この混乱によりSOFR固有のリスクに対する不安が市場参加者の間に広がり、SOFRへのエクスポージャーをヘッジするためにSOFRにリンクしたスワップや先物の取引が急増しました。

米国におけるLIBOR移行を主導するためにFRBが設置した代替参照金利委員会にとって、この取引量の増加は明るい材料でした。SOFR普及の最大の障害の1つとして挙げられるのがSOFRの期間構造の欠如です。2018年に創設された1カ月および3カ月のSOFR先物の出来高が増えればより長期の先物取引導入の気運が高まり、いずれは市場の期待レート水準を示すイールドカーブの構築へとつながります。「市場参加者がSOFRに慣れSOFRベースで物事を考えるようになれば、その金利変動から身を守る方法も考えるようになるでしょう」と、Barclays Plcニューヨークのマネーマーケット・ストラテジストであるJoseph Abate氏は述べています。

Wave of the futures

SOFR先物の建玉は、2019年9月の1カ月間で25万5000枚から42万9000枚まで増加し、想定元本総額は1兆5000億ドルを超えました。

SOFRの利用を促す別の動きもありました。米連邦住宅貸付銀行を管轄する連邦住宅金融局(FHFA)は2019年9月末、LIBORにリンクした金融商品で満期が2021年12月末を超えるものを傘下の銀行が新規に発行することを2020年第2四半期以降は認めないと発表しました。英当局がパネル行に対してLIBOR算出に用いるレートの提出義務を免除するのが2021年12月末です。

連邦住宅貸付銀行が発行したLIBORリンク債の残高は2,210億ドル以上ありますが、上記の結果としてその多くがSOFRリンクに移行すると見られています。

TD Securities ストラテジストのGennadiy GoldbergとPriya Misraは10月4日に顧客に送ったメモの中で、「FHFAが傘下の銀行に送った書簡は、一連の規制当局の動きの中でSOFR導入加速を目的とした最初の動きと思われます」と書いています。

それでもなお2019年9月にSOFRが1日で282bp急上昇したことを受けて、多くの市場関係者は、規制当局がSOFRへの移行加速化を求めていることを知りつつもためらいを見せています。

「SOFRがこれだけ乱高下すれば、新参照レートへの信頼が揺らいでもおかしくはありません。市場参加者が憂慮するのは当然です」と、Association for Financial Professionalsのトレジャリーサービス担当ディレクターであるTom Hunt氏は述べています。

ARRCの委員長を務めるTom Wipf氏は、SOFRが急上昇した翌日に委員へ送った書簡の中で、SOFRの平均値は安定していること、日々のレートが変動することはARRCには常に分かっていること、SOFRの3カ月複利平均値の上昇幅はLIBORと比較して最小限にとどまっていることを伝えました。

SOFRにリンクしたデリバティブ取引を促進するその他の動きとしては、2019年1月の先物オプション取引開始やニューヨーク連銀による後決めターム物レート導入の可能性などが挙げられます。

また、国際スワップ・デリバティブ協会がLIBOR移行作業の一環として既存契約を変更するプロトコルを公表したことやCME Group Inc.およびLCH Ltd.によるSOFR価格調整(price alignment)および複利SOFR参照スワップの清算開始などのいわゆるビッグバンと呼ばれる移行措置も取引高の増加につながる可能性があります。

「SOFRの利用は徐々に広がっています。私たちはそれを注意深く見守ってきましたし、過去データも持っています。今はその使用に習熟しようとしている時期なのです」と、Abate氏は述べています。

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