LIBOR移行 専門家の見解:ブラックロック Maria Daniels 氏

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このインタビューは、ブルームバーグが業界リーダーや世界各国・地域の規制当局にインタビューを行い、その中からLIBOR移行プロセスの管理に役立つ洞察や助言を集めた「LIBOR移行:専門家の見解」の一部です。



Maria Daniels氏

ブラックロック
シニアLDI Core PM & LDI
LIBOR移行プログラム責任者
 

「目的、タイムスケール、許容範囲を定義した明確な計画を立てることが最も重要です」

Maria Daniels氏はLDIチームに所属し、グローバル債券プラットフォームをはじめとするブラックロックが有する能力や専門知識を顧客に提供しています。LDIチームは、あらゆる債券リスクスペクトラムをカバーするLDI投資ソリューションに関連する取引の構築、執行ならびに関連業務、およびリスク管理を担当しています。本インタビューにおいてDaniels氏は、ポンド翌日物平均金利(SONIA)への移行に関する自身の経験、SONIAデリバティブの流動性と取引コスト、まだ移行を開始していない企業にとっての最大の障害について語ってくれました。

Q

英国のliability-driven investment(LDI:債務に基づいた投資)運用会社は、早くから運用資産の参照金利をポンド銀行間取引金利(LIBOR)からポンド翌日物平均金利(SONIA)に切り替えました。どのように移行に取り組んだのかお聞かせください。

A

私たちは明確な移行計画を立て、その中で主な目的、投資原則、市場の許容範囲、タイムフレームを定義しました。これにより市場の流動性を活用し、売買機会に迅速に対応することができるようになり、取引コストの削減と移行計画の迅速な遂行につながりました。移行計画はリスク管理の観点から幾つかのフェーズに分け、全ポートフォリオにおいてTCF原則(Treating Clients Fairly:顧客の公平な取り扱い)が達成されるように管理しました。

取引を巧みに構築し、相対取引と中央清算される取引の双方を迅速に処理する体制を整えたことにより、複雑な構造のポートフォリオを管理することができるようになりました。これにより当社全体でポートフォリオ内およびポートフォリオ間の取引の相殺を行うことができ、顧客の取引コストをさらに削減することができました。さらに、LDIポートフォリオ運用チームとブラックロックトレーディングチームが緊密に連携して円滑かつ効率的な執行を行い、市場への影響を最小限に抑えるとともに、市場に投資機会が発生したときにはそれを活用できる準備を整えました。

Q

ポートフォリオの移行後、SONIAデリバティブ市場には十分な流動性がありましたか。ポンドLIBORよりも流動性の確保が難しい商品はありますか?

A

ポートフォリオ管理プロセスの一環として、SONIA商品およびLIBOR商品の流動性と取引コストをモニターしています。市場でLIBORからの移行が進む中で、SONIAスワップの取引コストは削減され、流動性は向上しました。また、2020年10月27日にインターバンク市場におけるデフォルトがSONIAに移行したことにより、SONIAスワップへの移行がさらに加速しました。

流動性の確保が難しい商品についてですが、スワップ市場での移行が順調に進んでいるのに対して、スワップションなどの非線形デリバティブや通貨スワップ市場では移行がやや遅れています。多くの長期投資家はSONIAの取引を望んでいます。インターバンク市場ではSONIAが標準となっており、LIBORと比較して流動性は高く、取引コストは低くなっています。このため、アクティブ投資家はデュレーションの観点からSONIAを使用しています。当局がさらに移行を後押しすれば、SONIAの優位が定着していくでしょう。

Q

英金融行為規制機構(FCA)からLIBOR停止・指標性喪失に関する声明が発表されました。これにより、運用会社による積極的なポートフォリオ移行が加速されると思いますか?

A

市場ではその発出が予想されてはいたものの、FCAによる停止声明は移行プロセスにおける重要なステップの一つでした。これ以外にも既に数多くの重要なステップ(ISDAプロトコル、インターバンク市場におけるデフォルトのSONIAへの切り替え、保険など他のセクターにおける移行の進捗など)が進んでいます。多くの積極的な市場参加者が移行を進めており、移行は既にかなりの段階まで順調に進捗しています。

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Q

リスクフリーレート(RFR)への積極的な移行をまだ始めていない企業に対してアドバイスをお願いします。

A

まだ移行を始めていない企業にとって残された時間は短いですが、最も重要なことは、目的、タイムスケール、許容範囲などが定義された明確な計画を立てることです。市場に出現する流動性ポケットを柔軟に捉える体制を整えることができれば、取引コスト管理や移行計画のスムーズな遂行につながります。一方で、移行に関するあらゆる側面を十分に考慮することも重要です。市場環境、オペレーション体制の準備、リーガルデューディリジェンスなどはどれも考慮すべき重要な要素です。

当社の経験では、こうしたアプローチを採用することにより複雑なポートフォリオであっても迅速かつ円滑に移行させることができます。LIBORはさまざまな分野に深く浸透しているため、当社のLIBOR移行ワーキンググループはトレーディング、ポートフォリオ管理、法務、オペレーション、コンプライアンスなどさまざまな部門の代表から構成されています。こうした部門間の協調は、すべての要素が考慮された円滑な移行を確実なものとするために、あらゆる企業が注力すべきものです。

Q

企業がLIBORからの移行を準備する際に直面する最大の障害は何だと思いますか?

A

一部の市場ではLIBORが深く定着し移行を複雑なものとしています。また、幾つかのセクターにおいては規制の影響にも配慮しなければなりません。こうした要因がLIBOR移行のさらなる課題となり得ます。また、規模が小さい市場参加者にとっては、移行管理におけるロジスティクスやオペレーションも課題となります。オペレーションの流れのどの部分もフォールバックに対応できる体制を整えることが必要です。さらに、市場ごとにフェーズの切り方が異なっていることにも注意が必要です。例えば、米ドル市場における移行とポンド市場における移行が同時に進むというわけではありません。このため両市場にまたがる金融商品、例えば通貨スワップなどにはさらなる影響が及びます。だからと言って移行に手をつけないとすれば、保有するLIBOR参照商品の流動性がどんどん低下するという追加コストを被ることになります。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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