LIBOR移行 専門家の見解:J.P.モルガン Kari Hallgrimsson 氏

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このインタビューは、ブルームバーグが業界リーダーや世界各国・地域の規制当局にインタビューを行い、その中からLIBOR移行プロセスの管理に役立つ洞察や助言を集めた「LIBOR移行:専門家の見解」の一部です。


Kari Hallgrimsson

J.P.モルガン
マネージングディレクター兼EMEA金利取引共同責任者 

「移行のために必要なインフラを整備する必要があります。LIBOR停止日直前になって慌てて移行作業に取り組むといった事態は避けなければなりません」

Kari Hallgrimsson氏は、アイスランド大学で機械工学および生産工学の学士号、ロンドンスクールオブエコノミクスでファイナンスおよび経済の修士号を取得した後、2002年に新卒でJ.P.モルガンに入社しました。本インタビューにおいてHallgrimsson氏は、英金融行為規制機構(FCA)のLIBOR停止声明がデリバティブの流動性に及ぼす影響、担保付翌日物調達金利(SOFR)取引増加のメリット、RFRへの移行作業をまだ開始していない企業に対する助言について話してくれました。

Q

ポンド翌日物平均金利(SONIA)ベースのデリバティブの流動性は、他市場をはるかに上回っています。FCAのLIBOR停止声明は、SOFR、スイス翌日物平均金利(SARON)、無担保コールO/N物レート(TONAR)ベースのデリバティブの流動性にどのような影響を及ぼしますか?

A

FCAの声明は、すべてのリスクフリーレート(RFR)の流動性に非常に良い影響を与えると思います。この声明により、市場が待ち望んでいたベンチマーク改革の工程が明確になりました。その結果、市場はロンドン銀行間取引金利(LIBOR)移行に関して待ったなしの状況に立たされました。

声明の発表により、FCAはLIBORとそれに対応するRFR間のスプレッドを実質的に確定させました。このスプレッドはほぼすべてのデリバティブ市場でLIBOR停止日以降のフィキシングに使用されます。その結果、声明発表以前にLIBORリスクを保有していた市場参加者は、現在はRFRリスクを保有していることになります。これにより今後のRFR取引は大幅に拡大し、流動性が高まるでしょう。

Q

中央清算されないデリバティブポートフォリオの移行については、顧客のセグメントによってアプローチに違いが見られますか?中央清算されないデリバティブポートフォリオのRFRへの主要な移行メカニズムとして、2020年ISDAフォールバックプロトコルに依存する顧客はいると思いますか?

A

移行スピードの観点から、顧客を大きく3つのカテゴリーに分類できると思います。第1のグループは私たちに協力してくれたアーリーアダプターで、過去2年の間に線形デリバティブポートフォリオを積極的に移行させました。英国でこのグループに属したのは主にliability-driven investment(LDI:債務に基づいた投資)を行っている顧客と銀行のトレジャリー部門でした。第2のグループはデリバティブ市場で活発に取引を行う顧客です。ポジションを頻繁に変更するため、最も流動性が高い商品でリスクを取ろうとします。従って、RFR市場の流動性が対応するLIBORの流動性と同程度まで高まった時点で移行しようとするでしょう。

ポンド市場においてSONIAの流動性がLIBORの流動性を上回った流動性の転換点は、市場標準をSONIAに切り替えたSONIAファーストの取り組みでした。SOFR取引を増やすためにも、同様の取り組みが有効だと思います。LIBOR市場の一部がSOFRに切り替えられる段階で行うのがよいでしょう。そして第3のグループはあまり頻繁に取引を行わない事業会社や、非線形デリバティブや通貨スワップなど移行があまり進んでいない商品に絡むリスクを保有する顧客です。

フォールバックに頼る市場参加者は確かにいると思います。ただし、ISDAデリバティブに依存するデリバティブ商品の流動性は低下する可能性があります。

Q

米国、英国、日本、スイスの通貨スワップ市場や非線形デリバティブ市場では、RFRへの移行が遅れ気味です。また、LIBOR以外の通貨圏では複数インデックスアプローチを採用して、自国のIBORと既存の、あるいは新たに設定されるRFRの併存を決定した国もあります。この中には、国内のオーバーナイトインデックススワップ(OIS)市場が未発達の国もあります。こうしたことは、インターバンク通貨スワップ市場の流動性やクォートコンベンションの選択にどのような影響を及ぼすとお考えですか?

A

通貨スワップ市場におけるすべての主要通貨のデフォルトコンベンションは、米ドルとの取引です。これは、2023年6月以降に満期が到来するすべての通貨スワップ取引が実質的には対SOFR取引となっていることを意味します。この結果として、市場のコンベンションは両サイドにおいてオーバーナイトインデックスをベースとしたものに変わっていくと思います。昨年ポンド金利スワップ市場でコンベンションの切り替えに成功したように、主要な市場参加者が特定の日に一斉に市場コンベンションを切り替える取り組みが有効であると考えます。

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Q

現物市場やローン市場では、RFRベースのキャップやフロアについてさまざまなペイオフの可能性があります。インターバンク市場では、ヘッジ目的で単一のペイオフにまとまる可能性があると思いますか?

A

はい、思います。他市場に比べて移行がはるかに進んでいるポンド市場を例にとると、インターバンク市場では日次複利計算され支払いは四半期ごとのSONIAベースのキャップやフロアが取引されています。他通貨市場においても同様の動きが見られるようになるでしょう。

Q

LIBOR後の世界において、タームフィキシングやクレジットリスクを反映したインデックスなど日次RFRの代替となるインデックスはどのような役割を果たすと思われますか?

A

代替インデックスが使われるかどうかは、最終的にはエンドユーザーがLIBORの代わりにOISベースのインデックスを使う際にどのような課題に直面するかによると思います。例えばトレードキャピタルやイスラム金融商品の中には、変動金利の支払額を事前に確定させる必要があるものがあります。そのためには、期間構造が必要となります。また、信用状況を反映するインデックスを必要とする商品もありえますが、RFRは通常信用リスクは反映していません。

Q

RFRへの積極的な移行をまだ始めていない企業に対してアドバイスをお願いします。

A

まず、LIBORに対するエクスポージャーを把握する必要があります。そのためには、LIBORリスクを商品別、通貨別、満期別にリストアップするのがよいでしょう。これにより、移行せずにフォールバック手法に依存した場合のリスクを理解することができます。次に、移行に必要なインフラを確保する必要があります。例えばRFR参照商品の計上やリスク管理が可能なインフラが必要となります。最後に、ポートフォリオの移行に関して時系列に沿った詳細な計画を立てる必要があります。LIBOR停止日の直前になって慌てて移行作業に取り組むといった事態は避けなければなりません。

Q

企業がLIBORからの移行を準備する際に直面する最大の障害は何だと思いますか?

A

総じて言えば、多くの顧客が直面する最大の課題はインフラだと思います。RFR参照商品の取引、計上、リスク管理ができなければならず、さらにすべての社内システムからLIBORを消去する必要があります。これは言うほど簡単ではありません。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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