LIBOR移行 専門家の見解:イングランド銀行 Arif Merali 氏

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このインタビューは、ブルームバーグが業界リーダーや世界各国・地域の規制当局にインタビューを行い、その中からLIBOR移行プロセスの管理に役立つ洞察や助言を集めた「LIBOR移行:専門家の見解」の一部です。


Arif Merali 氏
イングランド銀行(英中央銀行)
市場担当ディレクター、シニアアドバイザー

「2021年末までに残された時間は限られています。各企業が、積極的なLIBOR移行に関して可及的速やかにカウンターパーティーと検討を開始することを推奨します」

Arif Merali氏は、リスクフリーレート(RFR)移行を専門とするイングランド銀行のシニアアドバイザーです。金利デリバティブ取引について大手投資銀行で25年の経験を有し、特にクレディ・スイスにおいてはポンド建金利トレーディングを総括するマネージングディレクターを15年務めました。

本インタビューにおいてArif Merali氏は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を参照する担保に関する英中銀の立場、線形・非線形デリバティブおよび上場デリバティブへのポンド翌日物平均金利(SONIA)の導入、そしてRFRへの積極的な移行をまだ開始していない企業に対する英中銀からの助言について話してくれました。

Q

先日イングランド銀行が改定した、LIBORを参照する担保に関するポリシーの内容を教えてください。また、米ドルLIBORについては終了日が延期されましたが、ドル建の担保に関する考え方も教えてください。

A

当行は以前、LIBORにリンクした担保について段階的にヘアカットの上乗せ(haircut add-ons)を行うと発表しましたが、先日その内容を更新しました。その中で、十分なフォールバックまたは将来における金利切り替えメカニズム(で一定の条件を満たすもの)が整備されていると当行が判断した場合には、上乗せを免除する権限を留保することとしました。

一定の米ドルLIBORについてその終了日が延期されたことを受けて、それらを参照する担保に関する考え方を現在見直しており、いずれ決定した段階で内容を公表します。ただしそれらの担保については、対象となる米ドルLIBOR以外のLIBORを同時に参照している場合を除き、ヘアカット上乗せの対象とはなりません。また、米規制当局が公表した新規契約における米ドルLIBORの使用に関するガイダンスに歩調を合わせ、米ドルLIBORを参照する証券で2022年1月1日以降に発行されるものについては、担保として受け入れません。また、米ドルLIBORを参照する証券のうち2021年4月1日以降2021年12月31日までに発行されるものについては、十分なフォールバックまたは将来の金利切り替えメカニズムが整備されていると当行が判断したもののみを担保として受け入れます。

Q

ほとんどの金融商品についてポンドLIBORの新たな使用を中止するというマイルストーン(中間目標)の期限としてポンドのRFRに関するワーキンググループ(RFRWG)が設定した第1四半期末を過ぎました。その内容、どれほどの効果かがあったのか、さらに英中銀はこの中間目標をどれほど重要視しているのか教えてください。

A

RFRWGは、第1四半期末のマイルストーンとして、ポンドLIBORにリンクするローン、債券、証券化商品、線形デリバティブ(既存ポジションのリスク管理のためのものを除く)で2022年以降に満期を迎えるものの新規発行を停止するよう推奨しました。

このマイルストーンは、市場の注意を引き明確な行動計画の設定を促すという点で、確かに効果がありました。すべての市場参加者により100%順守されたと言うには時期尚早ですが、少なくともポンド債市場における新規発行がほぼ100%ポンド翌日物平均金利(SONIA)を参照するようになってからかなりの時間がたっています。また、スワップ市場におけるSONIA取引も、昨年の「SONIAファースト」コンベンションへの切り替え以降増加を続けています。こうして今では、ポンドLIBORへの依存はほとんどなくなっています。ローン市場においてはSONIAの導入が遅れていますが、第1四半期末直前の数週間でSONIAにリンクしたローンが大幅に増加しています。

これらのマイルストーンを規制当局は大変重要視しています。例えば、健全性監督機構(PRA)と金融行為規制機構(FCA)が先日発出した「Dear CEOレター」の中で、両規制当局はすべての企業がRFRWGが設定したマイルストーンを達成することを期待すると述べており、その進捗状況を確認するために企業から定期的に情報を収集する予定です。

Q

線形デリバティブについてはSONIAの導入が順調に進んでいますが、非線形デリバティブおよび上場デリバティブについては遅れているようです。これについて懸念されていますか。どのような対策をお考えでしょうか。

A

RFRWGは第2四半期末のマイルストーンとして、非線形デリバティブおよび上場デリバティブの新規組成停止(既存ポジションのリスク管理のためのものを除く)を推奨しています。これは中核をなすスワップ市場における流動性の向上を踏まえた段階的なアプローチです。非線形デリバティブおよび上場デリバティブ市場におけるSONIAの利用は当初は低調でしたが、最近数カ月は導入に弾みが付き取引量が大幅に増加しています。

当行とFCAは、非線形デリバティブ市場におけるSONIAファーストコンベンションへの切り替えを支持する旨を5月11日に発表するとともに、上場デリバティブ市場におけるコンベンションの切り替えについても第2四半期末をめどに支援策を現在検討中です。監督下にある金融機関はまた、これらの市場における流動性向上対策を支援するよう「Dear CEOレター」の中で求められています。

この先についてRFRWGは、ポンドレッグを含むクロスカレンシーデリバティブの新規組成を第2四半期から第3四半期にかけて停止するよう市場参加者に推奨しています。

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Q

RFRへの積極的な移行をまだ始めていない企業に対してアドバイスをお願いします。

A

積極的な移行に関してRFRWGが設定したマイルストーンでは、積極的な移行が可能なすべてのレガシーエクスポージャーを第1四半期末までに特定し、可能なものから移行を進めて第3四半期末までに完了するよう求めており、当局の「Dear CEOレター」の中でも同じ内容が再度要請されています。企業が保有する金融契約を有効に管理するためには、積極的な移行が最も望ましい手段です。

LIBOR停止に関する2021年3月5日のFCA声明によりパネル行が提示するレートを基に算出される現行のLIBORの終了日が確定され、また、国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)がポンドLIBORとSONIA間の「調整スプレッド」を確定して両者が明確にリンクされたことにより、積極的な移行に関する議論を行うための確固たる基盤が整いました。

このような状況下、2021年末までに残された時間は限られていることから、各企業が積極的なLIBOR移行に関して可及的速やかにカウンターパーティーと検討を開始することを推奨します。積極的な移行が難しい場合には、十分なフォールバックを確保する必要があります。

これらの対策を議論する際には、RFRWGが作成したさまざまな文書が当行ウェブサイトのRFR移行ページで閲覧できますので参考にしてください。

Q

企業がLIBORからの移行を準備する際に直面する最大の障害は何だと思いますか?

A

LIBORからの移行はマーケットにとって非常に大きな変化です。LIBORは複数の通貨で何十年にもわたって使われてきた結果として市場インフラに深く組み込まれており、さまざまな金融契約の中で主要な金利ベンチマークとして使用されています。LIBOR移行は決して過小評価してよい課題ではなく、LIBOR終了が目前に迫る現在、真剣に対応する必要があります。幸いなことに、ほとんどの市場参加者はLIBORがない世界に備えることの重要性を既に認識していると思われます。

LIBORが使われている各通貨圏では、公的セクターと民間セクターの効果的な連携により移行が順調に進んでいて、強力な代替リスクフリーレート(RFR)が選択されています。また、ISDAの尽力によりポンド建金利スワップの約97%にフォールバックが整備されました。

また、移行が困難なタフレガシー契約についても、英国を含む多くの国・地域で立法による解決策が進捗しています。しかしまだやるべきことは残っています。各企業に対しては、顧客による強固な代替指標への切り替えを引き続き支援すること、自社のインフラが最新のマーケットコンベンションに適合していることを確認すること、そして可能な場合にはレガシーLIBOR契約をより強固なRFRに積極的に移行させることを強く推奨します。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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