日本のジェンダー多様性-長い道のり

女性取締役比率が低い日本企業-ジェンダー多様性を求める圧力強まる

日本企業では、取締役会におけるジェンダーの多様性(ダイバーシティー)がますます喫緊の課題となりつつあるようです。投資家たちが企業に女性の取締役比率の向上を求める中、この比率が高いほど株価リターンが向上するといったプラスの効果もブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の調査で明らかになっています。社会全体の状況を測定する世界経済フォーラム(WEF)による2021年「ジェンダーギャップ指数」のランキングで、日本は156カ国中120位でした。

日本は女性の昇進の点で前進したものの、韓国以外の他の経済大国に比べて後れを取っています。日本では女性の労働力率(15 歳以上人口に占める労働力人口の割合)が低いこともあり、取締役会に占める女性の比率は世界平均の19%に対し、わずか7.9%となっています。これは、女性が家族の世話をすべきであるという考え方を反映している可能性があり、日本の労働力人口のうち女性の47%はパートタイムや契約社員を含む非正規労働者となっています。

政府が明確な目標を掲げていないことが前進を妨げている一方で、米ステート・ストリートや仏BNPパリバ、英リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)など大手機関投資家は男性のみの取締役会には反対票を投じており、他の投資家もそれに追随する可能性があります。LGIMはジェンダー多様性の進捗の遅れを問題視し、日本企業10社において、取締役会長や指名委員会議長に対し反対票を投じています。また野村証券は、議決権代理行使の基準として、女性取締役を1名以上置くことを規定しています。

女性の労働力率と女性の取締役

⼥性の労働⼒率と⼥性の取締役

Source: Bloomberg Intelligence

ジェンダー多様性を推進している企業は、長期的な競争力向上にコミットしている可能性が高い傾向があります。従って、女性取締役の割合が低い企業を投資ポートフォリオから除外することで、パフォーマンスの改善を期待できるかもしれません。BIでは、日経平均株価の構成銘柄を5つのグループ(五分位)に分け、女性取締役の割合が最も高いグループを第1分位群、最も低いグループを第5分位群として調査したところ、第1分位群の株価は年間トータルリターンが最も高く、ボラティリティーが最も低いことがわかりました。一方、第5分位群は、第4分位群よりも高いリターンを達成したものの、ボラティリティーも非常に高かったことがわかりました。今回の調査では、女性取締役とリターンとの間の因果関係は証明されませんでしたが、業績好調の企業や国際的に事業を展開する企業は資金に余裕があり、自然成り行きとしてESG(環境・社会・ガバナンス)の問題により注力すると考えらます。よって、ジェンダーの平等を考慮する企業に投資することで、高いリスクに晒(さら)されることなくリターンを改善できる可能性が示唆されているといえるでしょう。

日経平均構成銘柄の年間リターンとボラティリティー

⽇経平均構成銘柄の年間リターンとボラティリティー

Source: Bloomberg Intelligence

女性のリーダーシップと低炭素への移行

女性取締役の比率が高い企業ほど長期的に炭素排出量の削減に成功している傾向が見られます。世界各国が気候変動に対処しようとする中、この点は重要です。日経平均構成銘柄を対象にしたBIの調査では、女性取締役比率が一番高い第1分位群が、最も安定的に売上単位当たり排出量を削減していることが明らかになっています。やはりここでも、女性の方が排出量削減に積極的であるのか、それとも女性の平等な待遇に注力している企業ほど本質的に他のESG課題にも集中的に取り組んでいる結果なのかは不明です。

資生堂、野村、大和証券の3社はこの数年間で最も炭素排出量を削減した第1分位群のトップ企業で、ESG開示スコアも日経平均構成企業の平均である約43に対し、53-58と高くなっています。

日経平均構成銘柄:ジェンダー多様性とGHG排出量

⽇経平均構成銘柄:ジェンダー多様性とGHG排出量

Source: Bloomberg Intelligence

不動産、資本財・サービス、素材のセクターの企業は、女性取締役比率が低いため、ジェンダー多様性の点で投資家の標的になる可能性があります。これら産業の一部ではジェンダー多様性が最も差し迫ったESG課題ではないかもしれませんが、この3セクターに該当する日経平均構成企業の40%で、取締役会が男性のみで構成されている状況です。

金融、生活必需品、ヘルスケアのセクターは、女性取締役比率が最も高いグループに入ります。この比率が高い企業は、ここ数年で人気が高まっているESGやジェンダーをテーマとしたファンドに組み入れられる可能性が高いと思われます。ESGをテーマとする日本の上場投資信託(ETF)の運用資産は、20年初には241億ドルでしたが、同年末には325億ドルに達しています。

日経平均構成銘柄:セクター別ジェンダー多様性

⽇経平均構成銘柄:セクター別ジェンダー多様性

Source: Bloomberg Intelligence

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。