テスラはESG銘柄かー多数のファンドが所有も、万民向けではなさそう

Read the English version published on May 26, 2022.

本稿はブルームバーグ・インテリジェンスのESGストラテジストShaheen Contractor、シニアESGアナリストRob Du Boffが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。

「テスラはESGファンドに適切か」という長年の論争が、先日S&P500 ESG指数からテスラが除外されたことで再燃しています。電気自動車最大手メーカーとしてのテスラのステータスは、環境またはインパクト・テーマ(例:気候)重視型のファンドには適している一方で、社会およびガバナンスへの配慮が不足し、ESGファンドへの組み入れには疑問が生じています。その意味ではインデックス除外は遅すぎたとも考えられます。再び起こった「テスラはESG銘柄か」という議論はさておき、多数の大型ESGファンドは同社株を保有しています。ファンド運用会社の保有銘柄を通じてESGセンチメントやどの企業を支持しているかを測るブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の分析で、テスラはS&P500種株価指数の構成銘柄中で46位にランクしています。

テスラはS&P ESG指数から除外後も多数のESGファンドが選好・保有

テスラのESG属性をめぐり引き続き最も熱い議論が交わされる中、直近の提出書類によれば多くのESG重視型ファンドが保有していたことが明らかになりました。各企業のESGおよびサステナビリティ型ファンドへの組み入れの可能性を測るBIの分析では、テスラはS&P500種構成銘柄の中で46位にランク付けされています。ESGやサステナビリティのテーマをポートフォリオの投資基準に含める米国大型ファンド15本のうち、8本がテスラを保有、その比率はS&P500種に対して平均1%オーバーウエートとなっています。テスラを保有するファンドの多くは、MSCI ESG指数をベンチマークとしたパッシブファンドです。興味深いことに、BIサンプルの中ではテスラを保有するアクティブファンドはほとんどありませんでした。

テスラは環境重視型やインパクトテーマ型のファンドには適合する可能性がある一方で、社会およびガバナンス面での課題から、ESGファンドへの組み入れには議論の余地が残るとみられます。そして、S&P500 ESG指数からの除外は遅すぎたとも言えます。

15本の大型ESGファンドにおけるテスラ株の組み入れとウエート

テスラは「環境」テーマには適合も、「ガバナンス」に課題

テスラのESGファンドへの組み入れは、同社が直面する「S(社会)」と「G(ガバナンス)」の課題から目を背けているように見受けられます。テスラ取締役会の過剰兼務に関する統計は一見、健全に見えますが、イーロン・マスク氏がスペースXのような非上場企業で最高経営責任者(CEO)を務めていることや、現在、ツイッターの買収を試みていることなど、テスラCEOとしての職務を阻害する可能性がある活動については説明がつかないのです。また、テスラはブルームバーグの役員報酬・株主権のスコアでも振るわず、役員のパフォーマンスに対する非常に高い株式報酬と3年に1度の「say-on-pay」(ベストプラクティスは年次開催)に関する株主の支持が低下していることにそれが如実に現れている。取締役の任期が3年の期差選任制を採用していることも、取締役全員を毎年選任する方法と比較すると株主重視の姿勢が劣っていると言えます。

米証券取引委員会(SEC)との和解合意に従いマスク氏が会長職を退いた際は、後任に女性を任命しましたが、取締役会の女性比率は25%と、性別多様性でも後れをとっています。

テスラのブルームバーグ・ガバナンススコア

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

S&P ESG指数からのテスラ除外を招いた懸念

S&P500 ESG指数は5月2日付けのリバランスの際テスラを除外しましたが、その理由として人種差別や劣悪な職場環境、自動運転車に関連する死傷事故調査への対応に懸念があると言及しています。

テスラ除外の詳細は、5月17日付のS&Pのブログ記事で説明されています。

Bloomberg News

“世界で最も有名な電気自動車メーカーが、S&P500 ESGインデックスの構成銘柄から除外された。S&Pはテスラの労働条件や運転支援システムに関連する死傷事故の調査への対応に懸念を示している。また、低炭素化戦略および企業行動規範が欠如していることもテスラに不利に働いた”

Elaine Chen – テスラ、事故や職場環境への懸念からS&P ESG指数から除外、ブルームバーグ
ブルームバーグ・ニュース

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

BIの米国ESG銘柄ユニバースの資産運用残高920億ドル

下の図では、目論見書に従ってESG基準を採用し、さらにS&PやMSCI米国の大型株指数をベンチマークとする15本の大型ファンドを特定しています。これらのファンドの規模(資産運用残高920億ドル)を考慮すれば、ユニバースは米国ファンド運用会社のESGに関する意思決定を反映していると考えられます。ファンドに頻繁に組み込まれ、S&Pに対して平均的にオーバーウエートとなっている銘柄は、ESG基準を十分反映している傾向が強く、一方で組み込み頻度が低く、S&Pに対してアンダーウエートとなっている銘柄はESGへの取り組みが消極的な傾向があります。

ユニバースのポートフォリオ:条件を満たす米国ESGファンド

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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