相互接続データ:規制順守のための戦略的アプローチ

Read the English version published on February 15, 2022.

ブルームバーグのコンテンツ(エンタープライズ)部門グローバルヘッドのBradley Fosterと規制・リスク・気候データソリューション責任者のMurat Bozdemirが、規制コンプライアンスの確保および今後の道筋に求められる業務上のベストプラクティスを定めるための戦略的データフレームワーク整備の必要性について論じます。

アジア地域の規制当局が市場動向の変化や新たに観測されたリスクに対応するため、国内政策を改善し世界基準に適応する中、アジアの金融機関は規制状況の変化に直面しています。さらに、これを悪化させているのが新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の余波とビジネスプロセスの混乱です。証券監督者国際機構(IOSCO)の作業計画は、パンデミックによる市場の混乱により、新しい規制や報告基準の施行が引き続き困難になっており、不正行為や詐欺など、新型コロナウイルスによって深刻化したリスクの軽減がIOSCOの公式優先事項リストに追加されたと説明しています。

さらに、環境・社会・ガバナンス(ESG)問題および気候変動関連のリスク管理と報告書作成も、企業にとって必須事項となっています。世界のCO2排出量の大部分がアジア地域からのものであることから、気候変動は投資家にとって主要な関心事になると見込まれます。アジアの規制当局は、気候変動関連リスク管理、グリーンウォッシング(うわべだけ環境に配慮しているかのように取り繕うこと)、透明性要件への対応を強化しています。

刻々と変化し増えていく要件に金融機関が対応するためには、新しい規制と追加のリスクカテゴリーを、より詳細なデータで管理できる戦略的なデータフレームワークが必要です。

将来を見据えたリスク管理、コンプライアンス、報告書作成

市場イベントを知らせ、積極的なリアルタイムのリスク管理、コンプライアンス、報告書作成を支援する企業全体のデータ駆動型インフラを構築するのは簡単なことではありません。時間とコストの圧力に直面すると、金融機関はデータインフラへの大規模かつ戦略的な投資を見送り、代わりに単発の解決策へ反動的に投資したくなることがあります。このような解決策はほとんどの場合、既存のデータフレームワークとの整合性がないため、長期的にコストがかかり非効率になる可能性があります。逆に、企業が戦略的なデータインフラに投資した場合、データを入力され、データでつながった複数のシステムは「相互に応答」できるため、規制にとらわれずシームレスな運用が可能になります。

今日、戦略的なデータインフラは特に重要なのは、過去18カ月の市場および規制の進展により、組織全体にわたって相互に接続され、整合性のある一貫したデータが必要であると強調されているからです。新型コロナウイルスのパンデミックは、「普段の生活」における職場環境とプロセスを崩壊し、規制報告の脆弱性を悪化させ、データの完全性、信頼性、品質、一貫性の問題を痛々しいほど明らかにしました。

また、パンデミックは、バーゼルIIIおよびトレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)規制の実施時期の調整など、規制スケジュールの調整にも連鎖的な影響を与えました。欧州ではバーゼルIIIの導入を2025年まで延期し、アジアでも香港は2023年6月、オーストラリアは2025年を目標に導入を延期するなど、ほとんどの管轄国・地域で延期されました。バーゼルIIIのスケジュール変更に伴う「波及」は、アジアの市場に不確実性をもたらし続けており、特にまとまりのないデータソースや手動のデータプロセスに依存している場合、地域全体で効果的に対応することは金融機関にとって非常に困難です。

これらの延期は、金融機関がパンデミックの影響に対処するために必要な余地を与える一方で、規制発効時に企業がより良い準備を整えているよう、リソースの収集と計画のための時間を確保することも意図しています。オーストラリア健全性規制庁(APRA)は、資本配分改革の実施を2025年に延期するにあたり「疑う余地のない強固な」自己資本の水準はすでに確保されており、延期の決定は複数のポートフォリオにわたる自己資本の再配分についてのみ言及していることを構成機関に伝えました。 さらに、香港金融管理局(HKMA)は、金融機関が2023年までの期間を利用してコンプライアンスの徹底的な評価と準備を行うことへの期待を示し、報告機関がデータ管理体制を整える必要性を強調しています。

データ戦略とESG

また、金融機関にとって、EUタクソノミーやサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)などのESG規制の報告要件の増加や各国の新しい要件に対応するために、包括的なデータ戦略は非常に重要です。アジアの金融機関は、規制当局と市場全体のために、気候関連のリスクとESGをより一般的に管理する必要性に迫られています。このように、低カーボンフットプリント、責任投資、資本配分を検証し、グリーン経済政策に沿ったデータは、投資家、規制当局、その他のステークホルダーへの報告する際に、ますます価値が高まっていくと考えられます。

しかし、アジアにおけるESGの報告要件はまだ発達段階で、それがさらなるリスクと複雑さを生み出しています。例えば、セルサイドの参加者がESGリスクを評価するには、移行リスクと物理的リスクの測定値をサポートする多くの新しい非構造化データを、従来の構造化された証券および財務データセットに統合する必要があります。これは、ESGコンプライアンスに関する業界基準が多数存在し、監督官庁のガイダンスが限られているため、さらに複雑化します。適切な気候リスクの測定と評価を開始する前に、これらすべてのデータを標準化し、従来のデータと調和させる必要があります。

今後の道筋に求められる業務上のベストプラクティス

規制当局の優先事項やコンプライアンス機能の変化による将来的な影響を考慮すると、報告金融機関が考えるべき業務上のベストプラクティスがいくつかあります。

まず、取引とパフォーマンスデータの管理および報告に関わるワークフローを最適化する必要があります。これは、主にこれらの機能の自動化を意味しており、ビジネスプロセスがまだとても正常とは言えない状態の中、その重要性ますます高まっています。

次に、リスク管理は包括的なデータ分析を活用して、ポートフォリオ配分、流動性レベル、その他運用上の要件を考慮し、潜在的なマーケットショックや規制変化を事前に評価するのに役立つものでなければなりません。例えば、複数の管轄地域にわたる市場参加者にとって、バーゼルIIIのコンプライアンスを効果的に実施することには、当面困難が伴うと考えられます。

最後に、自動化されたリスク管理および報告ツールは、企業が市場環境を変える新たな規則やデジタル対応の製品とプロセスを考慮しやすくさせる、新しいコンプライアンスと報告プロセスを迅速に設計・導入するのに役立つでしょう。パリ協定が発効し、アジアの金融規制当局が今後さらにサステナビリティ対策をコンプライアンスに取り入れるようになると、プロアクティブなリスク評価ツールがESGコンプライアンスにおいて特に重要になります。

複雑なビジネス環境と相互依存するリスク要因により、アジアの金融機関は常に業務上の課題を抱えています。しかし、リスク管理や規制当局への報告基準など相互につながっつながったデータ戦略を持つことで、企業はこれらの課題と将来の発展に効果的かつ自信を持って対応できるようになります。

ブルームバーグのサポート体制

金融規制数が増えて複雑化し、時にこれらの規制が相互に関連しているため、企業はもはやそれぞれに対して単独で準備することはできません。その代わりに、データ取得と管理の方法について戦略的なアプローチを採用して利用有効性の恩恵を受け、オペレーショナルリスクを低減し、規制を超えてビジネスに役立つインサイトを得る必要があります。これは、契約条件、価格データ、コーポレートアクションなどの分野を含む企業の基礎データから始まり、セルサイドおよびバイサイドの顧客を対象とした、世界中の特定の規制に対応する、よりカスタマイズされ対象を絞ったデータセットにまで及びます。

ブルームバーグのエンドツーエンドの規制・リスクデータソリューションは、当社の基礎データとの完全な相互運用性を提供し、意思決定者がポートフォリオを迅速にスクリーニングのうえ最適化し、複数の地域と管轄区域にまたがるリスクおよび規制報告書を自動化できます。ブルームバーグの規制対応データについての詳細は、規制・会計データのウェブサイトをご覧ください。

本稿は、Regulation Asiaと共同でブルームバーグが作成しました。本稿の執筆者は、Bradley Foster、Murat Bozdemir、Vicky Ceng、Kate Lee、およびDennis Toです

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。