新型コロナ収束後、待つのはインフレレジームへのシフトか

Read the English version published on May 6, 2020.

本稿は本稿は、ブルームバーグインテリジェンス(BI)チーフストラテジストのGina Martin AdamsとストラテジストのGaurav Patankarが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

新型コロナウイルスによるパンデミックの収束後に待つ世界はインフレレジームへのシフトかもしれない。資産価格は⾜元をすくわれ、S&P500種株価指数の中ではエネルギー株が恩恵を受け、ハイテク株は打撃を受ける可能性がある。⽶政府が⼤規模な⽀出を⾏う中、グローバル化に⻭⽌めをかけるような貿易政策やサプライチェーンの分断はインフレにつながり、その傾向は⼤統領選挙によって加速することも考えられる。

1. 脱グローバル化がリセッションを加速させる可能性も

新型コロナウイルスの収束後は貿易政策が政府の最⼤の関⼼事となりそうだが、経済が回復に向かう途上ではこのことが不安的なインフレを招くとになると考えられる。過去数⼗年にわたって拡⼤してきた世界の貿易は2008年を境に減少に転じ、同時期に⽶国の消費者物価指数(CPI)でみたインフレ率も最低値を付けている。このことは、貿易がインフレトレンドに影響を与えることを⽰していよう。技術の⾰新やモノの⽣産を低コスト国へ移す動きは持続的なデフレを後押しする⼤きな要素となったが、後退した景気が回復に向かう過程で貿易が阻害されるような政策が打ち出されれば、予期せぬインフレを招くことになるとブルームバーグ・インテリジェンス(BI)ではみている。脱グローバル化を促す政策は複数年にわたるディスインフレからの脱却につながる可能性があるため、⽶⼤統領選挙はリセッション後のインフレをさらに加速させるかもしれない。

輸⼊とインフレ率は密接に関連

Source: Bloomberg Intelligence

  1. サプライチェーンの分断がインフレにつながる

今後サプライチェーンはより短くなり、多様化と脱グローバル化が進むと考えられ、コストが上昇する可能性がある。サプライヤーの数が減ることで、潤沢な資産を持ち原材料の調達先が多様化している3Mのような企業が優位に⽴ち、その結果価格競争は弱まり、在庫コストも低下するとみられる。在庫のスリム化やジャストインタイム⽣産⽅式の導⼊でバリューチェーンのキャパシティーに余剰が⽣まれ、サプライチェーンは短くなろう。リードタイムの短縮や社会政治的なインセンティブにより近隣国へのアウトソーシングが盛んになるかもしれない。その場合、サプライヤーのコアコンピタンスや戦略地政学上の適合性がサプライヤー選定の決め⼿となろう。結果として、インフレ圧⼒が増す可能性が⾼い。

例えば、中国が多様化を⽬指す流れを受けて、韓国や台湾は先端技術という強みを⽣かすことができるとみられる。メキシコの製造業もまた、⽶国との距離の近さから恩恵を受けることができるだろう。両⽅の場合において、単位原価は押し上げられ、インフレ率が上昇することになる。

OECD(経済協開発機構)の競争

Source: Bloomberg Intelligence

3. 政策がインフレのゲームチェンジャーになりうる

⽶国のバランスシートが2倍に拡⼤し、いまだ政府の⽀出が増え続けている中、経済が新型コロナウイルスの影響による景気後退から回復に転じる過程で、インフレが加速する可能性がある。政府⽀出は経済活動の停⽌によって⽣じた産出量ギャップを埋めるものにすぎないにもかかわらず、今年が⼤統領選挙の年に当たることや、政策⽴案者が経済⾒通しを好転させようとする意図も相まって、今年から来年にかけて政府⽀出はさらに拡⼤する公算が⼤きい。現代貨幣理論(MMT)の論者でさえ、経済が完全雇⽤に達した場合、莫⼤な政府⽀出の主要なリスクがインフレであると認識している。景気回復に伴い、雇⽤が完全雇⽤に近い状態となった場合、政府⽀出はMMTの試⾦⽯となりそうだ。ブルームバーグのコンセンサス集計によると、20年の⽶財政⾚字は国内総⽣産(GDP)の12%超と、第⼆次世界⼤戦後では最⼤となる⾒通し。

財政字と失業率

  1. インフレや政策はエネルギー株にはプラス、テクノロジー株には打撃

⽶連邦⽀出と税の減免措置に加え、貿易政策やグローバルサプライチェーンの多様化の必要性などにより、エネルギー株は恩恵を受け、テクノロジー株が打撃を受ける可能性が⾼い。インフレレジームへのシフトが起きればなおさらだろう。エネルギー株はインフレ期待が⾼まっているときにアウトパフォームする傾向がある。原油価格の低迷により供給が制約され、需給が均衡するようになれば、⽣き残った事業者にとっては恩恵となろう。⼀⽅、テクノロジーセクターはこれまで、多国籍企業や⾃由貿易に有利な税制の恩恵を受けてきた。

今年予定される⼤統領選挙はセクターのパフォーマンスに重要な役割を果たす可能性がある。候補者は、リセッションの主犯と⽬されるものを罰し、同時に景気の⾒通しを迅速に好転させることのできるリーダー像を印象付けようとするためだ。

インフレ予想とエネルギー株

Source: Bloomberg Intelligence