インデックス2025年展望:株式

Read the English version published on January 22, 2025.

本稿はブルームバーグの株式指数プロダクト・マネジャー、Sean MurphyとMike Pruzinskyが執筆しました。

2024年のパフォーマンスがどうであれ、1月1日をもって市場はいったんリセットされます。2025年は、米新政権の発足と多くの新任者の登用により、既存政策が変更される可能性が高まる中、「答え」よりも「問い」が多い状況でのスタートとなりそうです。 米連邦準備制度理事会(FRB)も注視すべき重要な存在です。最近の発言からは、インフレ率を2%水準に引き戻すという姿勢を強めていることが読み取れ、2025年の利下げ回数が従来の予想よりも限定的になる可能性が示唆されています。先行きの不透明感が増す中、2025年に注目すべき株式指数および市場トレンドを以下に整理します。

インデックス関連お問い合わせ
こちらから

注目すべき「トランプ・トレード」

米大統領選挙を控えた数カ月間、投資家たちは演説や公式ウェブサイト、交流サイト(SNS)、さらにはブルームバーグ端末を駆使して、第2次トランプ政権下で有望となる分野を見極めようと模索していました。大統領選挙も過去の話になった今、市場の一部では、特定の業種にとって追い風となる環境を織り込む形で株価が上昇しています。果たして、トランプ効果はすでに市場に織り込まれているのでしょうか。過去のパフォーマンスが将来のリターンを示すものではありませんが、第1次トランプ政権の1年目において、さまざまな投資テーマややエクスポージャーがどのようなパフォーマンスを示したかを振り返り、それを今回の選挙以降の動きと比較することは一つの参考になるでしょう。意外にも、かつて「トランプ・トレード」として人気を集めたセクターや銘柄の中には、直近で下落に転じたものも見受けられます。こうした動きは、投資家にとって新たな参入機会を提供する可能性があります。

米国株式市場における規模とスタイル

当初、市場はトランプ政権による規制緩和の期待が高まり、主に恩恵を受けるとされた小型株に注目が集まりました。しかし、金利環境の変化を背景に、そうした初期の上昇分はおおむね巻き戻されています。2017年の実績を振り返ると、大型株が小型株をアウトパフォームする状況が続く可能性が示唆されます。 2017年には、ブルームバーグ大型株指数ブルームバーグ2000小型株指数を約8%上回るパフォーマンスを記録しました。また、今回の大統領選挙以降、グロース(成長株)バリュー(割安株)をアウトパフォームしており、第1次トランプ政権の初年度と同様の傾向を示しています。

米国株式市場におけるセクター

2017年に最も好調だったセクターの一つが素材で、ブルームバーグ米国素材指数(B3000M)は同年に20%超の上昇を記録しました。このパフォーマンスの背景には複数の要因がありましたが、産業用金属、特に鉄鋼に対する関税措置により、国内供給への需要が高まったことが主因の一つとされています。興味深いことに、今回の選挙以降、素材セクターは最も低調なパフォーマンスとなっており、これまでに11%超下落しています。

図表1:B500 BICSセクター別指数:2017年リターンと選挙日以降との比較

Figure 1: B500 BICS Sector Indices: 2017 Return vs Post-Election Day

米国外市場

貿易戦争による混乱にもかかわらず、第1次トランプ政権の1年目においては、国際株式市場は予想外に堅調な動きを見せました。実際、ブルームバーグ新興国株指数(EM指数)は2017年に米国株を上回るパフォーマンスを記録し、36%の力強いリターンとなりました。同年、中国株式市場(CN指数)は、堅調な国内経済を背景に50%超のリターンを記録しました。しかし、2024年の米大統領選以降数週間で、新興国市場株式は5%近く下落しており、中国経済の低迷が主な要因とみられます。関税措置や貿易戦争の影響は、果たして過剰に織り込まれているのでしょうか。

先進国株式(DMEU指数)も2017年には堅調な推移を示しました。新興国株式に比べると上昇幅は控えめでしたが、それでも約25%のリターンを記録しています。一方、多くの海外投資家にとっては、米ドル高が最も気になるところでしたが、同年においてはDMドルヘッジ指数(DMXUHU指数)のリターンは16%にとどまり、大きく出遅れる形となりました。 直近では、2024年の大統領選挙以降、米ドルは主要通貨に対して上昇基調を強めており、ユーロに対して4%、円およびポンドに対してはそれぞれ3ポイントの上昇となっています。対照的に、2017年当時は米国の財政政策や金融政策への不透明感から、これらの通貨に対してドルは大きく弱含んでいました。

図表2:米国を除く先進国株式10年リターン比較:為替ヘッジありvs為替ヘッジなし

Figure 2: Developed Markets ex US 10 Year Returns: Hedged vs Unhedged

テーマ別動向

初期の兆候を見る限り、第2次トランプ政権下では、太陽光発電(BSOAP指数)、電気自動車(BEVAP指数)、トランジション・メタル(BTMAP指数)といった環境技術分野に対して逆風が吹く可能性が指摘されています。これまで同分野を後押ししてきた規制や税制上の優遇措置が廃止されるとの観測から、こうしたテーマ型指数の多くは、すでに下落傾向にあります。一方で、2017年にはこれらのテーマが大きく成長しており、太陽光アグリゲート指数は40%のリターンを記録しました。一部では「暗号資産寄り」とも評されるトランプ大統領の動向を踏まえると、金融分野にも変革の波が押し寄せる可能性があります。ブルームバーグ・フューチャー・オブ・ファイナンス指数(BFFAP指数)は大統領選挙以降下落していますが、2017年には56ポイントの上昇を見せ、同年にはデジタル決済指数(BDPAP指数)も同様の高リターンを記録しています。

図表3:ブルームバーグ主要テーマ型インデックス抜粋:2017年と今回の選挙日以降

Figure 3: Select Bloomberg Thematic Indices: 2017 Return vs Post-Election Day

M&A動向

米国におけるM&A(企業の合併・買収)市場は、過去10年間で最も低調だった2年間を経て、2025年には、プライベートエクイティ(PE)資本や企業のリストラクチャリング(事業再編)の動き、規制環境の緩和などに支えられて、本格的な活況を迎える可能性が高まっています。ビジネス寄りとみなされているトランプ政権への移行により、規制環境の一段の改善が期待されており、独占禁止法の運用緩和などを通じて、さまざまなセクターでM&A活動の活発化が促進されると見込まれます。イノベーションの加速、スケールメリットへのニーズ、消費者嗜好(しこう)を背景に、消費財、ヘルスケア、テクノロジー関連企業がM&Aの対象として関心が高まることが予想されます。一方で、外国企業による米国企業の買収に対する審査強化や貿易障壁の導入といった保護主義的政策の台頭は、海外投資家の投資意欲をそぐ可能性があります。これらの政策は、米国市場への外国資本の流入を制限し、クロスボーダーM&A(国境を越えたM&A)を抑制する一方で、国内企業同士の統合をM&A成長の主軸とする可能性が高まっています。

図表4:米国のM&A活動2005年-2024年

Figure 4: US M&A Activity 2005-24

株式指数のリターンは、企業業績と株主還元動向に左右されるか

近年、株式市場では大幅なバリュエーション拡大が進み、多くのセクターで株価収益率(PER)が過去最高水準に達しています。このため、今後は単なるバリュエーションの拡大による上昇余地は限られると思われます。現在、投資家は、市場全体のセンチメントやマルチプル拡大に頼るのではなく、企業のファンダメンタルズに基づくリターンを重視せざるを得ない、より難しい環境に直面しています。こうした状況を踏まえると、企業の本源的価値や成長見通しを的確に見極める力が、今後の投資判断において一層重要となります。

図表5:B3000のヒストリカルPERとコア利益・株主還元利回りの比較

Figure 5: Historical P/E Ratios of B3000 versus Core Earnings & Shareholder Yield

現在の高バリュエーション環境下では、企業の業績と株主還元が、株価の高止まりを維持・正当化するうえで極めて重要な役割を果たすとみられます。ビジネスモデルが堅固で、革新的な戦略を有し、安定した収益性を確保している企業は、より一層投資家の関心を集めるでしょう。例えば、ブルームバーグ・ニューコンストラクツ・コア利益指数(BCORE、図表7参照)は、コア利益に着目し、本源的価値と比較して割安と判断される企業を選定しています。また、ブルームバーグ・株主還元トータルリターン指数(BSHARP)は、自社株買いや配当、負債返済といった株主還元を重視する企業群を対象としています。 いずれのケースにおいても、こうしたファンダメンタルズ重視の戦略は、米国株式市場全体を代表するブルームバーグ米国3000指数(B3000)と比較すると、株価収益率(PER)ベースで過去最大級の割安水準で推移しています。一方で、実質的な業績改善を示すことができない企業は、ファンダメンタルズ重視の市場環境下で、ボラティリティの上昇やアンダーパフォーマンスに直面する可能性があります。

2025年を見据えて

イノベーションを原動力とするテクノロジーや再生可能エネルギーといった特定分野では、依然として投資機会が存在する一方で、相対的に高水準にあるバリュエーションを踏まえると、企業の利益成長や株主還元といったファンダメンタルズにより一層焦点を絞る必要があるでしょう。 新政権下では、規制緩和やM&A活動の活発化といった政策スタンスの変化が報道をにぎわせており、今後の動向を注意深く見守る必要があります。2025年の複雑な市場環境を乗り切るためには、投資家は規律ある運用姿勢を保ち、長期的な視点を維持することが重要です。

ブルームバーグの株式指数に関する詳細につきましては、こちらをご参照ください。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

本資料に含まれるデータおよびその他の情報は、例示を唯一の目的としています。金融商品に関する助言ではなく、「現状有姿」の状態で提供され、法的拘束力を有しない事実情報の提供を構成します。ブルームバーグおよびブルームバーグ・インデックスはブルームバーグ・ファイナンス・エル・ピー(以下「BFLP」)の登録商標およびサービスマークです。本インデックスの運営機関であるブルームバーグ・インデックス・サービシーズ・リミテッド(以下「BISL」)を含むBFLPおよびその関連会社、または、本インデックスのライセンサーは、本インデックスに対するすべての所有権を有します。ブルームバーグ・エル・ピー またはその子会社は、BFLP、BISL、およびその子会社にグローバルマーケティング業務および運用支援・サービス業務を提供しています。
デモ申し込み