新型コロナ禍のESGのレジリエンス

本稿は、BI ESG アナリストAdeline DiabとAthanasios PsarofagisがEric Balchunasの協力を得て執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。(04/06/20)

新型コロナウイルスの影響による株式市場の急落は、ESG(環境・社会・ガバナンス)をテーマとする上場投資信託(ETF)の真価が問われる初のテストの場となる可能性がある。 今回の局⾯を通じてESG関連ETFのパフォーマンスのレジリエンス(弾⼒性)の⾼さが証明されれば、さらなる投資を呼び込む契機となろう。前回の市場下落局⾯においては、ボラティリティーの低いファンドへの需要が拡⼤した。当初は⼆次的な懸念に過ぎなかった新型コロナウイルスが主要な懸念材料となった現在、景気後退局⾯⼊りの可能性もある中で、投資家は新型コロナの⻑期的な影響を認識し始めている。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)では、新型コロナウイルスによりESG戦略への取り組みが加速するとみている。ESG市場への代替投資となるESG関連ETFは市場を上回るパフォーマンスを⾒せており、⻑期的な⾦融資産と価値を確保しようとする投資家を引き付ける可能性が⾼い。

  1. 新型コロナの渦中、ESGのレジリエンスの⾼さは驚くことではない

BIは新型コロナに関する懸念が浮上して以降のESG関連ETFのパフォーマンスを分析した。その結果は、強気相場においては優位に⽴ち、弱気相場においてはバッファーとなりえる、いかなる状況下においても有効な投資⼿段であるとのBIの⾒解と⼀致するものとなった。ESG関連ETFは欧州と⽶国のそれぞれのベンチマークをアウトパフォームしており、現在の状況を考えれば⽬覚ましい実績と⾔えよう。ESG関連ETFをESG領域への投資の代替とみなす戦略は、市場の下降局⾯においてはよりレジリエンスが⾼く、その時々の取引や市場環境に関係なく⻑期的な投資としてESG関連ETFが有効であるとのBIの⾒解を裏付けるものだ。

グローバルESG ETFMSCIワールドインデックス

Source: Bloomberg Intelligence

  1. のESGETFをアウトパフォーム

新型コロナ禍以降、欧州ではESG関連ETFの60%がMSCI欧州インデックスをアウトパフォームしている。BIの分析によれば、2019年には、欧州のESG関連ETFの77%超がMSCI欧州インデックスをアウトパフォームした。 この分析結果は、ESG関連ETFは株式市場のボラティリティーが⾼く、先⾏きが不透明な状況下では格好の代替投資になりうるとのBIの⾒解と⼀致するものだ。 2019年の株式市場では⽶中貿易摩擦やブレグジットが波乱要因となり、今年に⼊ってからは新型コロナウイルスの感染拡⼤に加え、サウジアラビアとロシアの間の原油⽣産を巡る争いもリスクとして浮上している。

BIでは欧州の35のESG関連ETFについて、それぞれ個々と全体でのMSCI欧州インデックスとの相対パフォーマンスを検証した。

MSCI欧州をアウトパフォームしたESG ETFの割合

Source: Bloomberg Intelligence

  1. のESGETFアウトパフォーマンスはさらに

⽶国でも新型コロナによる市場の混乱が続く中、ESG関連ETFはベンチマークをアウトパフォームしている。 年初からこれまでに、ESG関連ETFの59%がS&P500種株価指数をアウトパフォームしている。過去3年間では53%がアウトパフォームしている。 今後数週間で景気後退局⾯⼊りの可能性が⼀段と⾼まった場合は、このトレンドに拍⾞がかかることが考えられる。 ブルームバーグ・エコノミクスは、ロックダウン(都市封鎖)により⽶国の4−6⽉(第2四半期)の実質国内総⽣産(GDP)成⻑率が従来予想よりもさらに9%縮⼩するとの⾒通しを⽰している。 下振れシナリオでは、GDP成⻑率はさらに14%低下し、その影響は7−12⽉(下期)にかけても続く可能性がある。 このような状況下では、今後もESG関連ETFは市場をアウトパフォームし続け、⽐較的安全な投資先という位置づけにより今後も投資家を引きつけるとみられる。BIでは⽶国の27のESG関連ETFについて、それぞれ個々と全体でのS&P500種株価指数との相対パフォーマンスを検証した。

S&P500をアウトパフォームしたESG ETFの割合

Source: Bloomberg Intelligence

  1. がESGETFテスト

前回の市場下落局⾯においてボラティリティーの低いファンドへの需要が拡⼤したことからみて、今回の株式市場の下落局⾯でESG関連ETFがリスクの⾼い企業への投資を避け、⾼いレジリエンスを発揮できた場合、ファンドの成⻑が加速する契機となる可能性がある。 直近の強気相場において、ESG関連ETFはベンチマークを過去3年間では45%、過去5年間では26%アウトパフォームしたに過ぎなかった。ただ、5年以上の運⽤実績を持つESG関連ETFはわずか15本とサンプルサイズは⼩さい。

ベンチマークをアウトパフォームしたESG ETFの割合

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