ESG関連ETFの比較にはスコアカードが有益

Read the English version published on February 24, 2022.

本稿はブルームバーグ・インテリジェンスのESGアナリスト Shaheen Contractorが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。

ESG関連ETFが次々と新たに登場し、企業の市場進出や戦略の多様化が進んでいます。さまざまなESG関連ETFの特徴を比較することは、ファンド分析にとって今後も不可欠ながらもますます難しくなるでしょう。例えば、さまざまなファンド間で二酸化炭素排出原単位を比較する場合、推定値を用いてデータを補完しなければひずみが生じることが判明しています。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のESG関連ETFエクスポージャー・スコアカードを使えば、より広範なデータ取得が可能な指標を使ってファンドの特徴を測定したり比較したりできます。

進む多様化-さまざまなESG商品が登場

ESG重視型や価値観重視型の金融商品は増え続けており、ESG関連ファンドの新たな発行体や戦略が登場し多様化が進んでいます。こうした動きによって市場の成長が支えられる一方、今後は分析がますます困難になるでしょう。ファンド間での戦略の違いを理解することが分析にとって不可欠となると思われます。競争が激しくなれば、ファンドごとの独自性が重視されるようになり、戦略の多様化が進むでしょう。

BIの資金流入トラッカーは、「倫理に基づくエクスクルージョン(投資対象からの除外)」から「ESG統合」、「男女平等」などのニッチ戦略まで、サステナブル投資や価値観重視型投資の各種戦略に幅広く対応しています。BIのESG関連ETFスコアカードでは、ESG基準が組み込まれた各ファンドの比較が可能です。ESG基準が組み込まれている度合いが大きく異なるファンドさえもここでは対象としています。

ESG・価値観重視型ファンドの資金流入トラッカー

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

ESGエクスポージャーの比較における課題

ESGファンドでは戦略が多岐にわたるため、エクスポージャーの比較は依然として課題とされています。BIのスコアカードでは、開示状況と実績の両方を網羅した複数のESG指標に基づいてファンドがランク付けされます。ここで選定されている指標は、ESGファンドに組み込まれ得るすべての視点を網羅しているわけではありませんが、ファンド分析において比較可能かつ広範にわたり取得可能な基準として役立つものです。「ESG」の定義は多岐にわたることを踏まえると、検討に値する指標はその他にもいくつかあるかもしれません。とはいえ、依然として問題となるのはデータ量です。データカバレッジが低ければ、二酸化炭素排出原単位のBIによる分析と同様に、ランキングにひずみが生じかねません。したがってBIではファンドのカバレッジ中央値が全地域にわたり70-80%の指標を選択しています。新興国市場のファンドでは、指標のカバレッジ中央値が50%を切ることも頻繁にあります。ESGデータは株式を対象としているため、国債や現物、先物などの資産クラスへのアロケーションが大きいファンドでは下方向にバイアスがかかります。

BIのESG関連ETFエクスポージャー分析

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

ファンドの包括的分析には炭素排出推定値が必要

気候変動への注目が続く中、各ファンドの二酸化炭素排出原単位を把握することが不可欠ですが、そのためには推定値を組み入れて比較可能にすることが必要だとBIでは考えています。想定値の組み入れが必要となる背景にあるのは、二酸化炭素排出量の報告値に相違があることです。特に小型株市場や新興国市場ではこれによりデータカバレッジが低下しています。他のセクターよりも排出量が格段に多い公益事業セクターなどでは、数社の開示情報がないだけでも二酸化炭素排出原単位にひずみが生じかねません。例えば、iシェアーズMSCIエマージング・マーケットESGエンハンストUCITS ETFでは、フィデリティ・サステナブル・リサーチ・エンハンスト・エマージング・マーケッツ・エクイティUCITS ETFよりも二酸化炭素排出原単位が低いものの、ブルームバーグの二酸化炭素排出量推定値でデータを補完すると、iシェアーズETFの方がフィデリティETFよりも高くなります。

ブルームバーグによる過去の二酸化炭素排出量推定値では5万社以上の世界各地の企業が網羅されています。

各ファンドの二酸化炭素排出原単位分析

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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